自動車の等速ジョイント用グリース | ジュンツウネット21

自動車の等速ジョイント用グリースは,摩擦係数が小さく,耐摩耗性が良いこと,ダストブーツ材と相性の良いことのほか,耐久性,低温性,錆止め性が優れていることが必要です。

自動車の等速ジョイント用グリース

自動車の等速ジョイントにはどのようなグリースが使われていますか。また,今後どのような性能が望まれるのでしょうか。
解説します。

1.等速ジョイントの種類

等速ジョイント(CVJと略)には固定式(BJ)としゅう動式(DOJ)とがあり,両方を組み合わせて駆動軸に使用します。それぞれの主な種類と要求性能を表1に,代表的なものの構造を図1に示します。

代表的なCVJの構造
図1 代表的なCVJの構造

CVJにはゴムまたは樹脂性のダストブーツがあり(図1a),外部からの水や粉塵の混入を防いでいます。また,この中にはグリースが封入されており,部品の摩擦や摩耗を減らし,振動を減らす役割を果たしています。

表1 CVJの分類
区分
固定式
しゅう動式
要求される機能 ○等速である事
○作動角が大きく(46~50°)採れる事
○十分な寿命,強度を有する事
○等速である事
○作動角(22~30°)が採れる事
○軸方向に十分スライドできる事
○十分な寿命,強度を有する事
種類 ○BJ(ボールフィクスドジョイント)
○RF(ゼッパジョイント)
○UF (アンダーカットフリージョイント)
○DOJ(ダブルオフセットジョイント)
○VL(クロスグルーブジョイント)
○TJ(トリボードジョイント)

2.CVJ用グリース

現在,一般的に使用されているCVJ用グリースの種類と性状は,表2に示す通りで,鉱油系潤滑油を基油とし,リチウム石鹸やウレア化合物を増ちょう剤としたもので,二硫化モリブデン,有機モリブデン化合物や金属酸化物等の固定潤滑剤を添加したものが多いようです。

表2 一般的なCVJ用グリース
項目
BJ,DOJ用
TJ用
グリースA
グリースB
グリースC
グリースD
増ちょう剤
Li石けん
Li石けん
ウレア
Li石けん
固体潤滑剤
MoS2
なし
有機Mo
なし
ちょう度,60W
270
281
284
279
滴点,℃
190
198
252
196
基油粘度,cSt(100℃)
15.7
14.9
15.6
14.5
シェル四球,kgf LNSL
100
126
126
126
WL
500
400
400
400
LWI
67
66
60
64
基油の流動点,℃
-15
-17.5
-25
-17.5

CVJ用グリースとしては,次の性能が望まれます。

(1)摩擦係数が小さく,耐摩耗性が良いこと
 グリースの摩擦係数が低いと熱の発生が減り,CVJの温度上昇が抑えられ,グリースやダストブーツの寿命が延びます。近年,自動車の小型,軽量,高出力化により,CVJはより大きな力を伝達しなければならなくなり,面圧が高くなってきています。このような条件では,温度上昇が大きく,摩耗も促進されますので,一層,摩擦係数の小さいグリースが必要となります。

(2)ダストブーツ材と相性の良いこと
 ダストブーツ材として用いられている材料の種類と特長を表3に示しました。

表3 おもなダストブーツ材の種類と特長
項目
クロロプレンゴム(CR)
ポリエステルエラストマー
シリコンゴム
耐熱性
耐寒性
耐グリース性
耐オゾン性
耐紫外線性
屈曲疲労性

最も多く使用されているのは,クロロプレンゴム(CR)ですが,耐オゾン性が劣るため,材料中にワックス等を配合し,成形品の表面に浮き出したワックスで表面を覆ったり,老化防止剤を配合して,耐オゾン性が向上するように配慮しています。ただし,CVJのダストブーツのように,使用中,屈曲を伴うような場合,表面のワックス層は,ゴムの変形に追従できず,耐オゾン性への効果はあまり期待できません。したがって,耐オゾン性に関しては,老化防止剤が頼りということになります。

ところが,グリースの種類によっては,ゴムが膨潤し,この老化防止剤がグリースの中に移行したり,反対に,グリースの中の基油や添加剤がゴムの中に入り込み,ゴムを劣化させることもあります。このため,グリースとダストブーツ材とは相互に影響することの少ない,いわゆる相性の良いことが大切です。

ダストブーツ材にはエステル系の可塑剤が含まれているので,エステル系の基油を用いたグリースは,グリース基油の侵入のためゴムが軟化する傾向があります。グリース中の可塑剤が移行し,硬化する場合もあります。また,グリース基油のアニリン点が低いほど,ゴムを硬化させゴムの耐疲労性を低下させることが知られています。

(3)その他
 以上の他,耐久性,低温性,錆止め性が優れていることも必要です。

3.今後の対応

これからは車の騒音や振動をグリースの面からも低減することがさらに求められることになり,より摩擦係数の小さいグリースが要求されます。そのためには,油性向上剤や極圧剤の組み合わせ方を考える必要があるでしょう。

また,面圧が高くなり,温度が上昇しますので,耐熱性の優れたウレア系の増ちょう剤や高温に強い基油の採用も考えなければなりません。

また,相性については,ダストブーツ材がゴムから樹脂に移行しつつありますので,対象になる材料に適合したグリースを開発する必要があります

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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