潤滑油そこが知りたいQ&A

固体潤滑剤の併用による相乗効果 | ジュンツウネット21

2種類以上の固体潤滑剤を併用することで,相乗効果を期待することができますか。

解説します。

基本的には期待できると思います。

1. 単独以上の性能を期待する場合

はじめに固体潤滑剤という物質(化合物)に限定し,相乗効果を両者単独で使用するよりもある性能が向上する場合と限定し説明します。

一般的な潤滑効果としては,摩擦係数の低減,耐荷重性能の向上,耐摩耗性の向上に大別できると思います。

第1に摩擦係数に関してですが,2種類の固体潤滑剤を併用して両者単独の固体潤滑剤の摩擦係数以下に低減したという報告はほとんどみられません。広義に解釈して,一定の固体潤滑剤の結晶層間に他元素を挿入(インターカレート)し,本来の固体潤滑剤より摩擦係数・耐荷重性能を向上した*1という例があります。

第2に耐荷重性能ですが,図1に示すように二硫化モリブデンとグラファイトをある一定比で混合することで,耐荷重性能および摩擦寿命が単独の場合より向上したという例があります*2。なお,固体潤滑剤という観点からはずれますが,極圧添加剤ではMoDTCに硫黄系の極圧添加剤を配合すると,耐荷重性能を単独よりも向上できるなど相乗効果の例が多くみられます。さらに固体潤滑剤と油性向上剤を併用することで耐荷重性能が単独よりも向上する*3という実験例もあります。

二硫化モリブデンと黒鉛の混合比を変えて調整した固体潤滑被膜の摩擦寿命と耐荷重性
図1 二硫化モリブデンと黒鉛の混合比を変えて調整した固体潤滑被膜の摩擦寿命と耐荷重性*1

第3に耐摩耗性の向上ですが,図2に示すようにグリス中でPTFEとMCAを一定割合混合することで摩耗が単独よりも減少した例があります。また軸受の分野においては,二硫化モリブデンとPTFEを混合することで耐摩耗性が向上するなど数多くの報告がみられ,実際に販売もされています。ただし,この場合は単独以上の性能となっているとは言えない例もあり,この点は次節で説明したいと思います。

MCA配合率と摩耗量の関係
図2 MCA配合率と摩耗量の関係

ともかく以上をまとめると固体潤滑剤の併用による相乗効果に関して,期待しやすい性能から並べると(報告例が多い順で考えても)

  耐摩耗性向上>耐荷重性向上>摩擦係数低減

という順番になると思います。

2. 単独の欠点を補う場合

次に,相乗効果とは異なりますが2種類以上の固体潤滑剤を併用することで,お互いの欠点を補う場合があります。前述の耐摩耗性向上もお互いの欠点を補った場合も多いようです。これは複合効果と言えるかと思います。

例えば,潤滑剤として使用する場合,摩擦係数だけが低ければ良いというわけではなく,摩擦係数が低く,耐荷重性に優れ,耐摩耗性にも優れなければ,と言うのが一般的な要求です。

ところが各固体潤滑剤にはそれぞれ得意とする潤滑性能があり,全ての潤滑性能(耐摩耗性・耐荷重性・低摩擦係数)に優れる固体潤滑剤というものはありません。

そのため求められる潤滑性能が複数であればあるほど,複数の固体潤滑剤を併用することになります。この点を,次に潤滑剤設計者の立場から説明したいと思います。

3. 複合効果発現の基本的考え方

まず,代表的な固体潤滑剤の特性として

(1)PTFEは摩擦係数が極めて低く,雰囲気の影響を受けにくいが,耐荷重性に劣り(PTFEそのものが)摩耗しやすく,熱に弱い。

(2)二硫化モリブデンは耐荷重性に優れ,使用雰囲気の影響を受けにくいが,PTFEより摩擦係数が若干高く400℃から酸化し,発生した三酸化モリブデンの摩擦係数は低い方ではない。

(3)グラファイトは耐荷重性能に優れ,熱に対しても前述の二者より優れるが,雰囲気の影響を受けやすく摩擦係数は前述の二者よりやや高い。

これら物質の特性を念頭に置いて,使用環境で求められる潤滑性能の優先順位を加味し,それぞれの固体潤滑剤の配合比率を決定することが潤滑剤設計の基本となります。

さらに使用温度範囲によっても潤滑剤設計は異なります。多くの固体潤滑剤は熱的な限界を持っています。例えば,二硫化モリブデンは,400℃以上で酸化が始まり,グラファイトも500℃前後から酸化が始まります。PTFEも300℃前後で分解します。これら固体潤滑剤がその温度に達した場合本来の固体潤滑性能を維持することは難しくなります。

そのため,酸化・燃焼・分解が進行する温度領域まで上昇する可能性のある摺動部分では,さらに数種の固体潤滑剤を併用し性能を維持させる場合があります。

また,固体潤滑剤の性能を発揮させるために,基油の選定のみならず,分散剤・酸化防止剤・極圧添加剤等多くの成分との相互作用も検討する必要があり,固体潤滑剤の導入性・付着性をコントロールすることも必要です。

以上のように,固体潤滑剤含有の潤滑剤そのものが2種類以上の固体潤滑剤と他成分の併用による相乗効果(もしくは欠点の相補)を狙って設計されています。

4. 併用に関する注意事項

最後に,市販されている固体潤滑剤含有の潤滑剤は当初からこれらの複合効果を狙って製品化がすでにされているという点にご注意いただきたいと思います。

固体潤滑剤に併用による相乗効果・複合効果を狙う場合は,あくまでも固体潤滑剤単体の場合に限定されます。市販の潤滑製品2種類以上を混合し相乗効果が得られるのは極めて希なケースであり,悪くなるケース,どちらか一方の(往々にして悪いほうの)性能に支配されるケースの方が多い点にご注意下さい。

<参考文献>
*1. 広中,他:トライボロジスト,38,7,620 (1993)
*2. 松永,津谷:固体潤滑ハンドブック,P239,幸書房,(1978)
*3. 同上,P220

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

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