ビスカスカップリング用流体 | ジュンツウネット21

ビスカスカップリングとビスカスカップリング用流体の要求性能について解説します。ビスカスカップリングは,自動車の差動制限機構や動力伝達機構などに使われる装置です。

ビスカスカップリング用流体

自動車のビスカスカップリングには専用の流体が使用されているそうですが,どんな性能のものですか。
解説します。

1.ビスカスカップリングとは

ビスカスカップリング(以下VCと略します)は,4WD車の動力伝達用などに使われる装置で,日本国内では,1986年採用以来,全カーメーカーの乗用車に採用されています。

VCは,図1に示すように,外側のハウジング(3)と内軸(ハブ)(1)とで構成される室内に,アウタープレート(4),インナープレート(2)を,わずかな隙間を保つように交互に配置し,その中に,粘性流体としてシリコーンオイルが充填され,シール(Xリング)(5)で密封した構造になっています。

ビスカスカップリングの構造
図1 ビスカスカップリングの構造

VCの作動には,通常走行時の回転数の範囲で粘性を発生するビスカスモードと連続高回転時にプレート間に摩擦トルクを発生するハンプモードとがあります。

(1)ビスカスモード

ハウジングとハブの間に回転差が生じると,アウタープレートとインナープレート間にも回転差が生じ,両者の隙間に充填されたシリコーンオイルによりプレート間に粘性トルクが生じます。これは,2枚の板の間に水あめをはさみ,板同士をずらそうとしても,抵抗があってずれ難いのと同じです。この時の粘性トルクは回転数の増加に伴って上昇します(図2)。

ビスカスカップリングの特性
図2 ビスカスカップリングの特性

(2)ハンプモード

高回転が続くと,プレート間のシリコーンオイルが発熱膨張します。これによって,内部圧力が上昇し,インナープレートがアウタープレートに押しつけられ,プレート間に摩擦トルクが発生します(図3)。この現象をハンプといい,通常の作動条件では発生しませんが,車両がスタックしたような異常時に脱出用として利用します。

ハンプ現象
図3 ハンプ現象

2.VCの用途

VCは自動車の駆動系部品として次のような使われ方をします。

(1)差動制限機構として

自動車にはコーナリングの時の動きをスムーズにするために,左右の車輪が異なった回転で回れるようにディファレンシャル装置がついています。しかし,次のような場合には,この装置がマイナスとして働くので,車輪間の回転差を抑制すること(差動制限)が必要になりますが,VCを装着することで問題は解決します。

1.片側の車輪が滑りやすい路面上に,反対側の車輪が乾いた路面上にある場合,滑りやすい路面上の車輪が空転し発進できない。
2.コーナリング中に内側の車輪が浮き上がり空転し,駆動力が瞬間的に失われ,車体が不安定になる。
3.高速で直進走行中,路面の凹凸の影響で車両がふらつく。

(2)動力伝達機構として

4WD車には直結タイプ(パートタイム)とセンターデフ付(フルタイム)とがあります。直結タイプの場合,ディファレンシャル装置がないため,車庫入れの時などに振動が発生することがありますが,VCの装着により解消します。そのため2WD⇔4WDの切り換えが不要となり,より簡単な構造でフルタイム4WDとなります。(FF車をベースとした場合,前輪がスリップした時にはVCにより差回転に応じたトルクが後輪に伝達されて4WD状態となります。)

3.VC用流体の要求性能

(1)できるだけ高粘度であること
 必要なトルクを発生するためには粘度の高いものが有利なため,充填できる範囲で高粘度流体が望まれます。

(2)各種粘度の製品が揃っていること
 車両の種類によって,VCの特性も異なり,それぞれに対応した粘度の流体が必要となります。

(3)温度変化による粘度変化が少ないこと
 VC中の流体の温度は130℃以上になることもありますが,このような高温になっても粘度が変化しにくいことが大切です(図4)。

温度による粘度変化
図4 温度による粘度変化

(4)長時間劣化しないこと
 VCの寿命は装着した車の寿命と同じで,しかもメンテナンスフリーが前提になっています。使用する流体は,厳しい条件下でも劣化が少ないことが要求されます。

(5)他の部品との相性が良いこと

(6)人体に対して無害であること

以上の条件を満たす流体として,現在はジメチルシリコーンオイルが使用されています(図5)。

ジメチルシリコーンオイルの化学式
図4 ジメチルシリコーンオイルの化学式

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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