フェニルエーテル系耐放射線潤滑剤 | ジュンツウネット21

合成系の耐放射線潤滑剤は,4環と5環のポリフェニルエーテルと2環から4環までのフェニルエーテルのアルキル化合物です。フェニルエーテルと耐放射線性について解説します。

フェニルエーテル系耐放射線潤滑剤

放射線に強い潤滑油として,フェニルエーテル系合成潤滑油が注目されています。どのような性能を持っているのですか。
解説します。

1.耐放射線潤滑剤はなぜ必要か

原子力発電所を始め,放射性廃棄物処理施設,コバルト照射設備等には耐放射線潤滑剤が使われています。これらは,鉱油系またはエステル系の潤滑剤に添加剤を配合したものですが,使用中の放射線照射によって劣化し,機械故障の原因となると同時に,潤滑剤に含まれる硫黄や金属等が放射化されるという問題も生じます。近年,原子炉の出力も大容量化し,安全性確保の面から,より信頼性の高い潤滑剤が望まれるようになってきました。

2.フェニルエーテルと耐放射線性

現在までに商品化または生産可能となった合成品は,4環と5環のポリフェニルエーテルと2環から4環までのフェニルエーテルのアルキル化合物です(表1)。一般にポリフェニルエーテルは,有機液状化合物の中では,最も耐熱性,耐酸化性,耐放射線性が優れていますが,粘度指数が低く,流動点が高い弱点があります。これに比べ,アルキルフェニルエーテルは,耐放射線性はやや劣るものの,粘度指数や流動点は優れています。

表1 フェニルエーテル型合成油の構造
名称
化学構造
略記号
m-ビス(m-フェノキシフェノキシ)ベンゼン m-ビス(m-フェノキシフェノキシ)ベンゼン m-5P4E
m-フェノキシフェノキシm-ビフェニル m-フェノキシフェノキシm-ビフェニル m-4P2E
モノアルキルm-フェノキシフェノキシo-ビフェニル  モノアルキルm-フェノキシフェノキシo-ビフェニル R1-4P2E  
ジアルキルm-フェノキシフェノキシo-ビフェニル ジアルキルm-フェノキシフェノキシo-ビフェニル R2-4P2E
モノアルキルm-フェノキシフェノキシベンゼン モノアルキルm-フェノキシフェノキシベンゼン R1-3P2E
モノアルキルジフェニルエーテル モノアルキルジフェニルエーテル MADE
ジアルキルジフェニルエーテル ジアルキルジフェニルエーテル DADE

一般に,有機化合物が放射線に曝されると,分子内のC-C結合やC-H結合が切断し,劣化が進みます。

この現象は,高温での酸化劣化と似ており,耐熱・耐酸化性の優れた化合物は,一般に高い耐放射線性を持っています。ただし,フッ素化合物は,熱や酸化には強いのですが,放射線には弱いという例外はあります。

また,分子間の芳香環の比率が高いものほど耐放射線性が優れ,ポリフェニルエーテルのように,芳香環だけの化合物は,最高の耐放射線性を持っています。図1は,%CA(分子を構成する全炭素原子中の芳香族炭素の%)と全酸価の変化との関係を示したものです。また,表2は,ポリフェニルエーテルの物性と酸化安定度試験(RBOT)の結果です。

滑油(基油)8種を酸素吹込み下で900Mrad照射した場合の全酸価変化と%CAとの関係
図1 潤滑油(基油)8種を酸素吹込み下で900Mrad照射した場合の全酸価変化と%CAとの関係
表2 ポリフェニルエーテルの物性と耐酸化性
油種
アルキル側鎖炭素系
比重 15/4℃
粘度 mm2/S
粘度指数
引火点 ℃
流動点 ℃
蒸気圧 Pa
RBOT寿命* min
MADE
C12~14
0.946
15
74
220
-55.0
<3×10-4
120
DADE
C12~14
0.887
100
124
286
-40.0
<3×10-6
100
R1-3P2E
C16
0.988
60
84
280
-37.5
1×10-6
820
C18
0.978
62
98
300
-32.5
2×10-7
620
R1-4P2E
C12
1.038
275
-11
288
-5.0
6×10-7
1,420
C14
1.018
252
28
297
-10.0
1×10-7
1,180
C16
1.014
243
32
308
-15.0
3×10-8
1,050
R2-4P2E
C16
0.952
410
90
334
-20.0
-
850
4P2E
なし
1.170
120
-110
260
2.5
4×10-7
50,000以上
5P4E
なし
1.200
295
-64
300
2.5
1×10-9
50,000以上
*RBOT寿命…ロータリーポンプ式,酸化安定度試験結果

図2図3は,それぞれ,空気中と酸素吹き込み状態で放射線を照射した試験の結果です。いずれも線量の増加とともに粘度が増加していますが,鉱物油に比べ,ポリフェニルエーテルは粘度上昇が小さく,耐放射線性が優れていることがわかります。また,グリースについても,ポリフェニルエーテルは鉱油を上回る結果を示していますが,この場合,増ちょう剤の耐放射線性も考慮する必要があります。

各種潤滑油の空気中静置照射における粘度変化
図2 各種潤滑油の空気中静置照射における粘度変化
各種潤滑油の酸素吹込み照射における粘度変化
図3 各種潤滑油の酸素吹込み照射における粘度変化

3.用途

耐放射線潤滑剤が使用される主な用途は次の通りです。

  • 原子炉の一次系制御棒駆動部,ブロアーファンおよびモーター類
  • 高速増殖炉の一次系メカニカルスナッパー
  • 再処理プラントのクレーン,減速機,マニピュレーター
  • ガラス固化プラントのクレーン,減速機,マニピュレーター
  • コバルト,電子線照射ラインのチェーン,減速機,マニピュレーター
  • ディスポーザルタイプの医療用樹脂に添加し,放射線滅菌処理しても劣化しないようにする

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合成潤滑油

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