シリコーンオイル 工業用に幅広い用途 | ジュンツウネット21

  • Q1.シリコーン系合成潤滑油の構造と品種を教えて下さい。
  • Q2.近年新しい用途に使われる事も多いと聞きます。どんな使い方ですか。
  • Q1 シリコーン系合成潤滑油の構造と品種を教えて下さい。

    A1

    1. 構造と品種

    シリコーンオイルの一般的な構造は図1のような直鎖状のポリマーであり,結合させる有機置換基の種類によりその性質は大きく異なります(図2)。

    変性シリコーンオイルの構造
    図1 変性シリコーンオイルの構造
    シリコーンオイルの種類
    図2 シリコーンオイルの種類

    工業用潤滑油として使用する場合その多くは一般的なストレートシリコーンオイルの持つ適度な潤滑性のほかに,耐熱耐寒性,粘度温度特性に優れる点などに注目しているようです。潤滑性の点からは,フェニル基,長鎖アルキル基さらにはパーフロロアルキル基といった置換基を導入することによりその潤滑性は向上します(表1)。

    表1 各種シロキサンの潤滑性
    オイル種類
    置換基変性率(mol %)
    粘度(mm2/s)
    動摩擦係数 
    ジメチルシロキサン
    100
    0.264
    10,000
    0.215
    メチルフェニルシロキサン
    25
    450
    0.165
    n-デシルメチルシロキサン
    30
    200
    0.184
    70
    600
    0.146
    トリフロロプロピルメチルシロキサン
    50
    450
    0.131
    50
    10,000
    0.109
    タービン油
    150
    0.148

    また,ほかの性質,例えば乳化性,吸着性といった特性を重視する場合,ポリエーテル基,アミノ基またはエポキシ基等の官能基を導入した特殊変性オイルを使用するケースもあります。

    さらに最近では,シリコーンオイルを基材に添加してその潤滑性能を発現するのではなく,基材に結合させて性能を持続させる動きもあります。

    またシリコーンオイルをベースに高級脂肪酸金属塩,シリカなどの増ちょう剤を加えたグリース状物も大きな2次品種の一つです。

    Q2 近年新しい用途に使われる事も多いと聞きます。どんな使い方ですか。

    A2

    2. 用途

    (1)輸送機,熱媒

    シリコーンオイルは,通常の鉱油系潤滑油がC-C結合であるのに対し,Si-O結合がその骨格を成しており,原子間距離が長く従って接触する2物体間に潤滑剤として使用した場合,膜圧が薄く境界潤滑性能に乏しいといわれています。

    その乏しい潤滑性を潤滑向上剤,極圧添加剤を使用することにより向上させ,過酷な潤滑用途,トルク伝達用途あるいは熱媒として例えば輸送機のトルク伝達ビスカスカップリング,ファンカップリング,プラスチック・ゴム成形機の熱媒体に使用されています。

    その他,輸送機用ケミカル製品に利用されるシリコーンオイルの応用製品には,衝撃吸収バンパーシステム,計器用潤滑剤,ブレーキオイル,不凍液,つや出し剤,ウィンドウォッシャー液,クリーナー,スタータークラッチ用グリースなどがあります。*1

    (2)繊維

    繊維分野ではシリコーン処理により表面の潤滑性を向上させ,解除時,縫製時の糸切れを防止し生産性向上に貢献したり,平滑性,風合い,耐洗濯耐久性を向上させ高級感を出すために使用されています。コスト面からあくまでも非シリコーン系の潤滑合成油に補助剤として添加するか,エマルション化して使用するケースがほとんどです。シリコーンオイルの種類としてはアミノ変性タイプ,ポリエーテル変性タイプ,エポキシ変性タイプ,カルボキシ変性タイプあるいは複数の官能基を組み合わせた複変性タイプが挙げられます。

    アミノ変性シリコーンオイルは,繊維への吸着性を向上させ,ポリエーテル変性オイルはその吸湿性から静電気発生抑制による糸切れ防止効果があり,またエマルション化しやすい。エポキシ変性オイルはサラッとした風合い,無黄変であること,カルボキシ変性シリコーンオイルはエマルション化しやすく,麻ライクの風合いが得られるといった特長があります。*2

    (3)化粧料

    一般に潤滑油といった場合,金属用合成潤滑油がまず頭に浮かびますが,シリコーンオイルは先にも述べたように,耐熱耐寒性に優れる,粘度温度変化が少ないといった特長から工業的な用途に使用されるものの,あくまでも過酷な局部摩擦,金属摩耗には乏しい潤滑性でしかなく,その欠点を添加剤でカバーしています。しかし,繊維同士,繊維とプラスチック,繊維と皮膚あるいは皮膚と皮膚といった比較的柔らかい2物体間のしゅう動においては,低トルク,低荷重域であることから分子構造劣化もなく,シリコーンオイル自体の粘性,物質としての安全性から広く用途を拡大しています。

    化粧料として使用される場合,シリコーンオイルはその幅広い粘度の自由度から,その用途,配合にマッチした粘度品を自由に選定できます。例えば,多少きしみ感があるが,揮発成分として使用される環状ジメチルシリコーン,適度な滑りと光沢を付与する数十~数万mm2/sの直鎖状ジメチルシリコーン,べとつきがなく滑り性持続に効果がある数百万mm2/sの直鎖状ジメチルシリコーン,さらには,アルコール可溶性,光沢性付与に優れたメチルフェニルシリコーン,エマルション用保湿性ポリエーテル変性シリコーンが挙げられます。*3,*4

    (4)プラスチック

    プラスチックの潤滑性付与剤としてもシリコーンオイルが使用されています。従来,汎用プラスチックにシリコーンオイルを添加すると,表2に示すように潤滑しゅう動性,耐衝撃性,離型性,表面艶・光沢性などの点が改良されることが知られており,樹脂重合時に添加したり,あるいはシリコーン高配合(40~50wt%)マスターバッチをドライブレンドで混合し特性付与されています。

    表2 樹脂への添加効果
    1 成形性の向上 樹脂流動性向上 *成形機の温度の低下による樹脂の熱劣化防止
    *成形リサイクルの短縮,生産性の向上
    *樹脂の過剰充填防止
    *内部歪の除去,不良率低下,精密部品成形
    *成形品の表面状態良好
    *従来使用の滑剤が不要または減少
    *複雑な金型への流動性向上
    離型性向上 *離型剤不要
    *フィルム等のブロッキング防止
    2 シリコーンの特性付与 *表面潤滑性の向上
    *表面の耐摩耗性の向上
    *表面の艶,光沢などの外観良好
    *フィルムなど成形品のブロッキング防止
    *表面摩擦による温度上昇が少なく,熱劣化を防止
    *耐衝撃性の向上(PS,ABSなど)

    ポリアセタール樹脂,ポリアミド樹脂,ポリフェニレンスルフィド樹脂のような,プラスチック製小型軸受部品に添加して使用した場合,周囲を汚損する潤滑油,グリースをしゅう動部分に使用しなくても,内添されたシリコーンオイルにより潤滑性が持続するため,メンテナンス費用が軽減されます(図3)。

    シリコーンオイルによるしゅう動性改良効果
    図3 シリコーンオイルによるしゅう動性改良効果

    また,ほかのプラスチックでは,射出成形時の離型性,押出成形時の成形スピード向上,めやに低減,洗浄の能率アップ等の点からシリコーン添加によるコストアップよりも成形物コストに大きく起因してくる生産スピードを向上させ添加コストを十分解消できることになります。

    3. 最近の特許,使用状況

    “潤滑”を含む『発明名称』で,本文中に“シリコーン”または“シロキサン”の記載がある特許を検索してみると,1995~1999年の5年間で91件の特許が公開されています(表3)。

    表3 潤滑関連特許件数
     
    公開
    公告・登録
    1995年
    17件
    9
    1996年
    22
    15
    1997年
    16
    16
    1998年
    16
    26
    1999年
    20
    16
    合計
    91
    82

    “潤滑”はあくまでも特性の一要素であるため,潤滑性能が発現されている新規発明であっても『発明名称』としては載らないケースが多く,91件中に,化粧品,繊維関連用途はほとんどありません。

    特許およびユーザー動向から,最近の主立った用途について下記に列記してみます。

    (1)冷凍機用潤滑剤

    電気冷蔵庫,エアコン等の圧縮式冷凍機の冷媒としては,CFC12,HCFC22の使用が規制され,オゾン破壊のないハイドロフロロカーボン,例えばHFC134a,HFC32が候補に挙げられています。冷凍機用潤滑剤としてはこれら冷媒との相溶性が不可欠ですが,これら代替フロンは極性が高く,従来の潤滑油であるナフテン系鉱油,ポリα‐オレフィン,アルキルベンゼン等の潤滑油は相溶性が悪く,低温で二層分離を起こしオイル戻りの悪化,伝熱阻害,潤滑不良,起動時の発泡等を引き起こします。そこでこれらを回避するために,ポリエーテル変性シリコーン*5,フッ素変性シリコーン*6およびポリエーテル・フッ素共変性シリコーン*7が挙げられています。

    (2)油圧油,自動変速機油

    油圧装置,オートマチックトランスミッション(AT)は高性能化,小型化に伴い,油圧油やATFに対して高負荷,高性能化が求められています。連続した高負荷運転や高速走行を行うと発泡に伴い油温が上昇し,泡抱き込みによる油圧制御不安定化,油面上昇による吹き出しによる火災事故が懸念されます。そこで,消泡性を有する潤滑油として,ポリジメチルシリコーンとフッ素変性シリコーン組成物を使用する方法*8,脂肪酸変性シリコーンを使用する方法*9が提唱されています。

    また,無段変速トラクションドライブ用オイルとして,トラクション係数が大きく,低温安定性に優れたフェニルシリコーン,シクロヘキシルシリコーンが提唱されています*10。

    (3)プラスチック用

    複写機を中心としたOA機器やビデオテープレコーダ(VTR)等の磁気記録装置の軽量化,コンパクト化に伴い,軸受等のしゅう動部材に対してより厳格なしゅう動特性が要求されています。そこで,比較的しゅう動性,耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックが広く使用されているわけですが,これらは低負荷状態では無給油でも十分機能を果たしますが,高負荷状態では使用に耐えられないケースが出てきます。そこで,しゅう動性に優れたアルキル変性シリコーンを使用する方法*11,さらには,樹脂中に2種類以上の反応性シリコーンを混合し高重合架橋シリコーンを形成させる方法,例えばイソシアネートシリコーンとアミノ,カルボキシあるいはアルコール性官能基含有シリコーンとの混合*12,カルボキシ変性シリコーンとアミノまたはアルコール性官能基含有シリコーンとの混合*13が提唱されています。

    また,樹脂そのものに,シリコーンをグラフト結合させ,潤滑性を半永久的に保持させることも知られています(図45)*14。

    シリコーングラフトアクリル樹脂の潤滑性能と離型性能
    図4 シリコーングラフトアクリル樹脂の潤滑性能と離型性能
    グラフト共重合体とブロック共重合体のシリコーン特性
    図5 グラフト共重合体とブロック共重合体のシリコーン特性

    (4)その他

    その他としてセラミックスの潤滑に使用したり,グリース状シリコーンの用途としては水性ボールペンの逆流防止剤が目新しい用途といえます。

    シリコーンオイルは分子量,分子構造,有機置換基変性率を容易に制御でき,しかも高分子量化してもオイル状を保持するユニークな素材であり,最近では無官能性タイプから官能基導入タイプへのシフト,分子構造の選択性向上により,より少量での潤滑効果維持が可能となってきました。その点でプラスチック改質分野,シリコーンの電気接点障害の点から避けられていた電気電子分野においても,今後付加価値を与える添加剤として広く応用が期待されます。

     

    <参考文献>
    *1 “最新・シリコーンの市場展望”,シーエムシー,p.127 (1995)
    *2 “シリコーン活用技術”,技術情報協会,p.197 (2000)
    *3 根津幸子,FRAGRANCE JOURNAL,28 (6),28 (2000)
    *4 中西鉄雄,J.SOC. COSMET. CHEM. JAPAN., 34 (2) 120 (2000)
    *5 特開平1-118598,特開平2-60995,特開平2-127498,特開平2-302497,特開平4-3687,WO91/09921
    *6 特開平6-336591
    *7 特開平8-325586,特開平10-316985
    *8 特開平12-087065
    *9 特開平7-138589
    *10 特公平2-11639,特公平4-3439,特開2000-169866
    *11 特開平8-269255
    *12 特開平8-325463
    *13 特開平10-46173
    *14 “シリコーン活用技術”,技術情報協会,p.133 (2000)

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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