低ミストタイプの切削油剤は,どのような添加剤を配合してオイルミストを抑えているのですか?
Question1.切削加工時に発生するオイルミストが人体へ与える影響について話題になっていますが,低ミストタイプの切削油剤は,どのような添加剤を配合してオイルミストを抑えているのですか?
Answer1.解説します。
オイルミスト抑制用の添加剤についてお話しする前に,オイルミストの定義をはっきりさせたいと思います。
切削加工を行っている工場等内で白っぽく「もや」がかかったような状態になっている場合をしばしば見かけますが,よく「ミストが原因している」との声が聞かれます。しかしながら,この場合の「もや」は,オイルミストのほかに,油煙も混ざったものが空気中に浮遊しているケースがほとんどです。
そこで,このオイルミストと油煙を以下のように定義したいと思います。
(1)オイルミスト
加工部分に供給された切削油が微粒子化したもので,高速で切削加工する際,加工物あるいは工具によってせん断を受け,物理的に生成されたもの。
(2)油煙
加工物が削られる際の組成変形による発熱に起因しており,主に切削点および切り粉に付着している切削油が焼けることで発生するもの。いわば熱的に生成されたもの。
この油煙を低減するには添加剤での対応は難しく,切削油(主にベースオイル)が軽質留分を含まず,切削性に優れた製品(加工中の発生熱が少ない)を適用することで解決を図ります。切削油が熱せられると最初に軽質留分が煙となって蒸発しますので,極力軽質留分を含まない切削油を適用することが重要です。
さて,本題のオイルミスト(物理的に生成された)を抑制するには,現在ポリマータイプの添加剤を使用する場合が多いようです。その中でも比較的多く用いられるのはPMA(ポリメタクリレート)とPIB(ポリイソブチレン)といわれています(図1参照)。
図1 オイルミスト抑制剤の種類(出典:石油製品添加剤 新版,桜井 俊男) |
これらの添加剤は付着性が強く,切削油に添加されている場合,切削加工中に物理的に生成された微粒子同士が比較的短時間にくっつき合います。その微粒子がくっつき合いながら次第に大きく成長し,最終的には自重で浮遊せずに機械内に落ちます。これにより,機械外および工場内における発生ミストが減るというわけです。
もちろん,切削諸条件によってミスト発生量にも多くの違いが出ますが,一般的に分子量が高いほど,および添加量が多いほどミスト抑制効果は強まる傾向にあります。
このオイルミスト抑制剤は主に油性切削油を対象として使用されることが多いですが,最近では水溶性切削油にも添加されるケースもあるようです。