ショックパルス法による軸受診断 | ジュンツウネット21

物体が衝突する時,衝撃点では最初に,両物体を構成する分子間での衝突があります。その時に圧力が発生し,圧力波となり物体内部を伝播するのが圧縮波,すなわちショックパルスです。このショックパルスの状態を機械的に読み取るものが,ショックパルス法を用いた診断機器です。

ショックパルス法による軸受診断

軸受診断法の中に,ショックパルス法による軸受診断というものがあると聞きましたが,一般の診断機器を用いた診断とどう違うのですか。ご教示下さい。
解説します。

設備診断技術の進歩発展は目を見張るものがあります。その中でも軸受診断に関して,振動現象を利用した簡易診断,精密診断(振動解析)が多く利用されていますが,診断の際に軸受以外の振動要素による影響を考えなければならないため,簡単には真因をつきとめにくい面があります。

こういった状況下で,今から約二十数年前に世界的なベアリングメーカーで潤滑・給油面の理論で著名なスウェーデンのSKF社の技術陣が,自社工場管理する目的で開発した技術診断手法「ショックパルス(SPM)法」というものがあります。

現在各国に特許申請され,各産業で広く活用されているこの技術は,軸受状態の各初期値を事前に捕捉する必要がなく,軸受の状態がその寿命全期間にわたって測定でき,機械の背景“振動”には何ら影響されないという特色を持っています。

1. ショックパルス法とは

物体が衝突する時,最初はその衝突の衝撃点では,両物体を構成する分子間での衝突があります。その時に圧力が発生し,圧力波となり物体内部を伝播します。これが圧縮波で,すなわちショックパルスなのです。このショックパルスの状態を機械的に読み取るものが,ショックパルス法を用いた診断機器です。

2. 振動法との違い

一般に回転機械の診断には振動解析による周波数分析が使われています。この場合,振動検出に使われる加速度センサ(圧電素子)の感度特性は,図11のように診断に必要な周波数帯域内が平坦でなければなりません。もし,図12のように平坦でないと,各機械要素から発生するいろいろな周波数の振動の大きさ(変位,速度,加速度)を正しく比較することが不可能になります。加速度センサ自身は,センサそのものの機械的構造からくる感度の最大点,つまり共振点(共振周波数)が必ず1個以上存在して,それがセンサ感度の平坦性をくずすことになります。センサを機械に取り付ける方法(手持ち,マグネット,接着剤,ネジ止め)によっても,共振点が発生したり移動したりすることもあります。

振動センサ感度と周波数1
振動センサ感度と周波数2
図1 振動センサ感度と周波数

したがって,周波数分析をする際使用されるセンサとして基本的には,

(1)測定可能周波数帯域が広いこと
(2)感度特性が平坦であること

が要求されます。そのためには,共振点を除くと平らな感度特性部分のみを用いるか,必要周波数範囲内でどうしても感度の凹凸がある場合にはセンサまたは計測器側に補正回路等を導入して,その凹凸のバラツキを補正することが必要になります。

SPM法の場合は,圧電素子を用いた加速度ピックアップで,機械衝撃波を背景振動や雑音等他の要因による影響を受けずに測定できます。機械衝撃による圧縮波を受けても,電気機械的に32kHzで共振して,その出力が過度減衰の共振パルスとして取り出され,機械振動はフィルタで取り除かれます。そのため,接触面の不規則な凹凸によって発生する圧縮波は,ただ衝突時の速度(軸受では回転数と転動体間の直径)に比例するだけで,その伝播は“超音波”のかたちで接触点から軸受ハウジング内部を通過し,放射拡散していくという仕組みになっています。

3. まとめ

SPM法は,常に軸受の動作状態を計測し,トラブルを予知して,実際の設備の状態に即した保全活動を行うことができます。また,初期故障が検出できるので,状態監視保全を行うことによって計画的な修理が可能となり,機械の突然のトラブルによる損失や生産効率の低下を最小限に食い止めることが可能になるのです。

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最終更新日:2021年11月5日