ゴムシール材と潤滑油の適合性について | ジュンツウネット21

ゴムシール材と潤滑油の適合性について解説します。シールによく使われるゴム材料の特性と主な用途,難燃性作動油に対する適用材料,各薬品に対する適用材料を示します。

ゴムシール材と潤滑油の適合性について

ゴム材料には天然のゴムをはじめとして,各種の合成ゴムがあり,パッキン,シール,フレキシブルホースなどに多く利用されています。潤滑油の種類によっては使用できないとか,使用を避けた方が良いというゴム材料がありますが,この理由と使用可否を判定する方法を教えて下さい。
解説します。

ゴムの諸特性は原料ゴムによるところが大きく,充てん材,可塑剤,老化防止剤,そのほかの配合剤の添加により,ゴム状弾性体としての粘弾性性質,老化性などを大きく改質しています。シール用としてゴム材料を選択する場合,まず問題になるのは,

1)使用温度範囲(図1
2)シール液体に対する耐性(図2)です。

ゴム材料の耐熱性
図1 ゴム材料の耐熱性
ゴム材料の耐油性
図2 ゴム材料の耐油性

(画像クリックで拡大。ブラウザの戻るで戻ってください)

図に示した範囲はあくまで一般的なもので,厳密な適用範囲は付随するほかの条件で当然変わります。

耐熱限界を例にとれば,摩擦熱を考慮しなければなりませんし,シール液体や要求寿命によっても温度範囲が変わります。耐油性のうち鉱油ベースの一般潤滑油に対しては,アニリン点を用いると便利です。すなわち,密封しようとする油とゴムの相溶性が良くなるにつれて,ゴムは膨潤から溶解の方向へ行きますが,この尺度がアニリン点です。これが低いものほど膨潤は大きくなります。

なお,高油温にさらされる機器の作動油として,難燃性作動油が用いられますが,鉱油ベースの潤滑油とは異なった影響を及ぼすので,注意を要します。

表1にシールによく使われるゴム材料についての特性と主な用途を,表2に難燃性作動油に対する適用材料を,表3に化学薬品に対する,適切なゴム材料を選定して示します。

表1 シール用ゴム材料
名称
シールに用いられる特徴
主なる用途
ニトリルゴム(NBR) 耐油性,耐摩耗性,耐熱性,低価格 オイルシール,パッキン,Oリング,ダイヤフラム等あらゆるシール
ポリアクリレートゴム(PAR) 耐油性,耐熱性,耐ギヤ油性 高温,高速オイルシール,ギヤ油対象オイルシール
シリコーンゴム(SR) 耐熱性,耐寒性,密封性,低圧縮歪性 オイルシール,Oリング,ダイヤフラム,高周速部オイルシールが主要
フッ素ゴム(FR) 耐熱性,耐薬品性 高温雰囲気のオイルシール,パッキン及び薬品対象パッキン
ウレタンゴム(UR) 高強度,耐摩耗性,耐候性,高硬度,耐寒性 耐圧パッキン,ワイパー,ダイヤフラム,ブーツ
クロロプレン(CR) 耐候性,耐屈曲性,耐薬品性,低価格 ダイヤフラム,ブーツ,ベローズ,パッキン,ダストカバー
エチレンプロピレンゴム(EPDM) 耐候性,耐熱・耐寒性,耐水性,耐リン酸エステル系作動油 リン酸エステル系作動油用オイルシール,パッキン,ダイヤフラム,ブーツ
ブチルゴム(IIR) 耐薬品性,耐候性,耐熱性,低圧縮歪性,低通気性 薬品対象パッキン
クロロスルホン化ポリエチレン(HR) 耐薬品性,耐候性,耐熱性 薬品対象オイルシール,パッキン
スチレンパッキン(SRF) 耐ブレーキ油性,加工性良,低コスト,鉱物油膨潤性 ブレーキパッキン
天然ゴム(NR) 高強度,耐屈曲性 ダイヤフラム,ブレーキパッキン
エピクロルヒドリン(CHRCHC) 耐油性,耐熱性,耐寒性, ダイヤフラム,ブーツ,オイルシール
表2 難燃性作動油に対する適用材料
 
難燃性作動油
鉱物油
水-グリコール系
リン酸エステル系
塩素化炭化水素
ジエステル油
シリコンエステル油
低アニリン点油
高アニリン点油
NBR
SBR*
UR
CR
EPDM
IIR
PAR
SR
FR
PTFE

 :優  :良  :可  :不可   *スチレンゴム

表3 各薬品に対する適用材料
薬品の分類
薬品の代表例
適用ゴム材料
無機酸類 塩酸,硫酸,硝酸,リン酸,クロム酸 IIR,CR,HR,FR,PTFE
有機酸類 酢酸,シュウ酸,ギ酸,オレイン酸,フタル酸 IIR,SR,SRR,PTFE
アルカリ類 カセイソーダ,カセイカリ,アンモニア水,水酸化カルシウム IIR,HR,SBR,PTFE
塩類 塩化ナトリウム,硫酸マグネシウム,硝酸鉛,塩素酸カリ NBR,HR,SBR,PTFE
アルコール類
グリコール類
エチルアルコール,ブチルアルコール,グリセリン NBR,IIR,PTFE
ケトン類 アセトン,メチルエチルケトン IIR,SR,PTFE
エステル類 酢酸ブチル,ジブチル,ブタレート SR,PTFE
エーテル類 エチルエーテル,ジブチルエーテル IIR,PTFE
アミン類 ジブチルアシン,トリエタノールアシン IIR,PTFE
脂肪族類 プロパン,ブタジエン,シクロヘキサン,ケロシン NBR,PAR,FR,PTFE
芳香族類 ベンゼン,トルエン,キシレン,アニリン FR,PTFE
有機ハロゲン化類(塩素) 四塩化炭素,トリクレン,二硫化エチレン PTFE

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最終更新日:2021年11月5日