トライボロジーとは | ジュンツウネット21

トライボロジーの定義,由来,応用,開発について解説します。トライボロジー(tribology)の定義は「相対運動下で干渉しあう面および関連する諸問題とその実地応用を対象とする学問・技術」となっています。

トライボロジーとは

潤滑に関係する分野で,トライボロジーという用語が良く使われます。潤滑技術についてのことばのようですが,ことばの由来,意味する内容,国内外での応用や研究などについて解説して下さい。
解説します。

トライボロジーの定義と由来

トライボロジー(tribology)という用語は現在世界で広く用いられていますが,内容は潤滑(luburication)あるいは潤滑工学と概略同じです。定義は「相対運動下で干渉しあう面および関連する諸問題とその実地応用を対象とする学問・技術」となっています。わかりやすく言えば「摩擦面(関連諸問題を含む)に関する学問・技術(実地応用を含む)」となります。

tribo も logy も新語ではありませんが,両者を結合したtribologyは戦後の新造語であり,摩擦学を意味し,定義は我々が従来考えていた潤滑と同じです。それならなぜわざわざ新語を作る必要があったのか? 潤滑では不可あるいは不足なのか? 潤滑をやめてトライボロジーに統一したのではなく,両方が使われるのはなぜか? 同じ内容を表す用語が二つあるのは一般には好ましくありません。文学ならよいが,学問・技術の用語は正確に定義されたものを用い,用語と内容を一対一に対応させるようにします。その点から見てこの新語の登場は奇異であり,西欧が強力にこれを主張したとき,日米は当初賛成を渋りました。

普及したのは,戦後20年を経た1965年頃からです。イギリスを中心に西欧は戦後すぐキャンペーンを始め,情熱的に忍耐強くこの新語の認知・採用を推進しました。その理由は後に我々も理解できましたが,西欧と日米との歴史のちがいにありました。

技術の歴史が若い日米では,潤滑というと最初からトライボロジーと同じ内容を意味しましたが,歴史の古い西欧では油やグリースをさす通念が浸透しており,油やグリースが主役で摩擦面や,摩擦挙動は脇役とされました。これは致命的な誤りなので,正道に戻すことはすべてに優先します。主役である摩擦面があって,その信頼性・耐久性を維持向上させるため,最適の方法を考究するのが使命です。油やグリースが重要でないわけでは決してありませんが,主体ではなく手段の一部にすぎません。油やグリース以外のものや固体潤滑(solid lubrication)を必要とするならそれによるし,油やグリースが適しているならそれによります。摩擦面の特性と摩擦挙動を解析し,それに応じて処置と選定がなされねばなりません。研究も技術開発もすべてこのルールによります。

潤滑が摩擦面や摩擦挙動を意味せず,手段にすぎない油やグリースが主体となる通念が長年しみついた西欧にとって,軌道修正は容易ではありませんでした。学問上はともかく,産業向け,実用向けにトライボロジーという新語を掲げ,潤滑という用語の使用を最小限にとどめようとした苦心がよくわかります。

1966年に公表されたイギリスのJost報告〔赤岡:プラントエンジニア(日本能率協会),1970年No.5号,P.51〕は,トライボロジー活動を推進することにより,イギリス一国だけで年間約5,000億円の利益(損失の救済)が達成できるという実態調査結果を示しました。工業規模でイギリスに数倍する日本で,現在の貨幣価値に換算すれば,年間数兆円に該当します。このことから「トライボロジーは(1)省資源 (2)省エネルギーおよび (3)機械性能の保証と向上のかなめである」という旗を掲げた意義には大きなものがあります。

当時は,高度成長の真っ盛りの増産に次ぐ増産の時代で,品質管理・生産効率・納期を重視し,償却期間を短くして新鋭化・大規模化に血道をあげていました。トライボロジーの旗印の省資源,省エネルギーおよび機械性能の保証と向上に反対する者はいませんでしたが,一応コスト面で考慮される程度にすぎず,突発故障によるラインストップを防止するため,死活問題となるものだけに限定されていました。

Jost 報告の7年後,1973年秋に第一次石油危機が起こり,世界的に低成長時代に移行しました。エネルギー費と原材料費は逐年値上がりし,付加価値が追い詰められました。自動化・合理化およびコスト低減が至上命題となり,事情は一変しました。省資源,省エネルギーおよび機械性能の保証と向上は,企業や国家・民族の発展を左右するものとなり,本気でトライボロジーに取り組まなければならなくなったのです。

トライボロジーの応用と開発

トライボロジーの定義の中に,実地応用が明記されています。省資源,省エネルギーおよび機械性能の保証と向上に結びつくためには,学術研究だけでなく,実地応用が不可欠であり,きめのこまかい現場的な開発が必要です。専門的学術研究があって初めてその上に開花結実が望めるのですが,同時に実地応用に対する熱意がたいせつです。

摩擦面とは「“相対運動”をする“接触面”」です。“相対運動”は,すべり,転がり,転がりすべり,近寄り遠のきがあり,一方向と往復,連続と断続・間欠などがあります。フレッティングのような微小振幅すべり,スティックスリップのような付着すべり,静摩擦のような巨視的すべりのない相対運動などもあります。“接触面”は潤滑膜を介して接触しますが,潤滑膜には気体(たとえば気体軸受),液体(潤滑油,作動油,難燃性作動液,水,液体酸素,液体水素,液体ナトリウムなどおよび各種薬液その他),固体(乾性摩擦,固体潤滑剤,表面処理膜,被膜その他),混相(たとえば油と水のエマルション,油と増稠剤から成るグリース)などの各種潤滑膜があります。

摩擦面は直接的には潤滑膜と接触し,間接的には相手面と接触します。摩擦面の摩耗・損傷のうち,エロージョンは相手面でなく潤滑膜によって引き起こされ,その他は相手面との干渉によって生じます。

新生面(破断,切削・研削,塑性加工などの直後の面)および超高真空中で加熱浄化した面などは清浄面と呼ばれ,この清浄面に限れば潤滑膜を介さない直接接触も起こり得ます。しかし大気中では一万分の一ないし一千分の一秒程度で気体分子の物理的・化学的吸着が生じ(親和性,活性.圧力,温度,濃度等によって差がある),また汚染物質(コンタミナント)の付着が行われ,これらが潤滑膜として働きます。したがって清浄面の直接接触は真空中でないと起こりにくいが,たとえば摩擦圧接などはやや近い現象といえます。赤熱等の軟化状態で二面を押し付け,摩擦によりコンタミナントの除去と新生面の発生を行い,清浄面に近付けることによって融点以下での溶接を達成します。

トライボロジーにおける凝着摩耗は,これに類似し,摩擦面で起こる融点以下の微小溶接現象です。対策としては,気体,液体,固体あるいは混相の潤滑膜の選定と活用がポイントとなります(潤滑膜の最適有効化技術)。二面の硬さの差が一定の限界を超えると,硬い方の表面あらさの凸部(山)が剛性突起となって軟らかい方に食い込み,切削・研削型の摩擦を生じます。ゴミなどの固形粒子のカドも同じ働きをします。この剛性突起の食い込みによる摩擦をアブレシブ摩耗と言います。対策としては,剛性突起の刃先がなまって切味が悪くなる処置をとります。すなわち,あらさ突起の先端曲率半径を大とするためのならしを行います。

ゴミなどによる摩耗量は粒子の個数に比例しますから,カバー,シール,フィルタ,洗浄等の技術を駆使して処理します。ゴミを零にしようとするのは過剰設計,過剰管理となりますが,個数を十分の一にすることにより耐久寿命を十倍にすることは容易にできます。

軸受,歯車,すべり面(案内面その他を含む),転がり面等は,あらゆる機械,設備,部品,器具,計器,測定機器に含まれ,ボイルナット,継手,シール,ブレーキ,クラッチはもとより,構造物,橋梁等でも重要な役割をになっています。高架道路や橋梁の桁は温度による伸縮や荷重・振動等によるたわみに対応する支承(ベアリング)を生命とします。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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