SOAP法 の活かし方 | ジュンツウネット21

摩耗診断法としてSOAP法があると聞きますが,その診断方法と特長および活用状況を教えて下さい。

解説します。

1. SOAP法とは

“木のゆれ”から“見えない風”の存在を知るように,“摩耗粉”から“機械内部の摩耗”を知ることができます。SOAP法はこの摩耗粉を金属元素でとらえるもので,原理は図1に示すように,まず機械から採取された試料油を燃やし,光を出させます。この光を波長で分けて,この波長から金属元素を識別し,波長の強さから元素濃度を求めるものです。

SOAP法とはこのようにして得られた金属元素の組み合わせから摩耗粉の材質を,そしてこの摩耗粉からこれを発生させた機械の部位を推定します。さらに金属元素の濃度から摩耗粉の量,つまり摩耗部位の摩耗量をつかみ,機械の摩耗に関する故障を予知する手法のことであります。なお,SOAPはSpectrometric Oil Analysis Programの略です。

分析装置の原理
図1 分析装置の原理

2. どのように診断するのか

油中の摩耗粉濃度いわゆる金属元素濃度は,時間とともに増加する増加型と,ある一定の濃度に達する飽和型があります。

(1)増加型の場合

油浴式給油の歯車や軸受等では,摩耗粉は油中に累積するため油中の金属元素濃度は漸増します。この摩耗率は正常摩耗状態下ではほぼ一定ですが,油量や運転条件等によりことなります。したがって,実際は数個以上の測定データから機械ごとに設定されるものです。これを標準増加率として測定値で増加率が大きくなった場合を異常と診断します。

他方,油中の金属元素濃度と機械の摩耗量の関係がわかっていれば,異常摩耗になる元素濃度を上限値(しきい値)として,これに漸増する濃度が近づいた時に注意と診断します。

(2)飽和型の場合

強制循環給油のエンジンや設備機械では,油中の摩耗粉がフィルタや長い配管内で除去されるため油中の金属元素濃度は増加と減少が同程度になる平衡濃度に達します。この濃度はフィルタの性能や運転条件等により異なり,機械ごとに正常摩耗下の測定データに基づいて決まり,異常があると元素濃度はこの平衡濃度をすぐに超えてしまいます。

なお,上限値や平衡濃度は補油や更油により変化するため補正が必要となります。また,測定データから設定される増加型での標準増加率や飽和型での平衡濃度はデータ数の増加に伴って修正してゆくものです。

3. どのように有効なのか

SOAP法は油量が比較的少なく(約100L以下),微細な(約10μm以下)摩耗粉が系内を均一に分散するような機械の異常診断に有効です。

また,数種の機械要素からなる設備では金属元素の組み合わせから摩耗している要素が特定でき,さらに異常摩耗の原因までもつかめます。

(1)異常摩耗の早期発見(エンジン)

エンジンのピストンリングとシリンダ(ライナ)の摩耗粒子は5μm以下が多く,しかも油量は50L以下が多いため系内を均一分散しやすいです。また,油中の金属元素濃度は油の燃焼による増加とフィルタ捕捉や補油等による減少で平衡濃度に達しやすいため,異常摩耗が初期の段階で的確につかめます。

(2)疲労の早期発見(ころがり軸受,歯車)

スポーリングやフレーキングの前段階であるピッチングから発生する摩耗粉は,比較的小さいためSOAP法で検出できます。この結果ころがり軸受や歯車の疲労による損傷が小規模のうちに発見でき,大きな故障を未然に防止できます。

(3)腐食の早期発見(すべり軸受)

潤滑油の酸化・劣化等により軸受材元素が油中に溶け出す腐食の発見はSOAP法の得意とする分野です。

(4)異常摩耗の機械要素の識別(設備)

ころがり軸受の材質が高炭素クロム軸受鋼(SUJ),歯車がニッケルクロム鋼(SNC),すべり軸受がホワイトメタル(WJ)からなる圧縮機において,ニッケルやすず濃度から異常摩耗している機械要素が識別できます。また,鉄とすず濃度からすべり軸受の異常摩耗が,さらに保持器が黄銅製であれば銅と亜鉛からころがり軸受の保持器の異常摩耗とわかります。

(5)異常摩耗の原因の究明

1)砂の混入(油圧装置)
 砂はアブレシブ(切削)摩耗を促進させるもので,SOAP法ではけい素として検出できます。

2)添加剤の消耗(ミッション)
 極圧添加剤が消耗すると摩耗は増大します。

 

この他にSOAP法にはいくつかの改善すべきことが残っていますが,これらが徐々に改善されれば,ますます設備診断でのSOAP法の需要が増えるものと考えられます。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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