シールは,シール部を通過する密封流体の流量を要求される値に押さえるものです。好ましくない流れを阻止あるいは制御する手法を示します。シールの選定に当たっては,この手法に考察を加え用途と条件に応じて適切な設計を行うようにすれば,無駄や失敗が著しく少なくなるものと思われます。
漏れ防止の考え方について
漏れ防止の考え方について教えてください。
解説します。
シール面およびその近傍において,圧力差に起因して生ずる流れのうち,好ましくないものを阻止または制御するための手法を駆使して,シール部を通過する密封流体の流量を要求される値に押さえるのがシールの役割です。好ましくない流れを阻止あるいは制御する手法には次の各種の手法が考えられます。
- 流れを起こすエネルギを滅殺する
- 流れを阻止するエネルギを大にする
- 流れの向きをコントロールする
- 流れを遮断する
- その他
すべてのシールは,これらの1つまたは2つ以上の手法を利用するものであり,シールの選定に当たっては,この点まで遡って考察を加え用途と条件に応じて適切な設計を行うようにすれば,無駄や失敗が著しく少なくなるものと思われます。つまり,好ましくない流れを阻止あるいは制御する手法は決して1つだけではなく,自由選択の余地が大きいことを考えるべきです。
また上記の各種の手法は,用途と条件に応じて,
- 無理なく大きな効果を期待できるもの
- 非常に無理をしても僅かな効果しか上げられないもの
の2つに自ら分かれてきます。したがって,トライボロジの根源に遡って考察すれば,用途と条件に応じて無理の少ない手法や効果の大きな手法を選び出すことが極めて容易となります。
しかるに技わかれして細分化し,多種多様の密封機構が勢揃いした末端では,上記のように本質的な意味で理法にかなった適正手法を選ぶことは,トライボロジ技術者なら誰でも容易で,誤りを犯すこともないでしょう。
ですが末端のシール群の中から適正なシールを選ぶには,シールの専門知識を必要とし,しかも専門家でも誤りを犯すことが多いことから,この点からいって末端選択方式ではなく,根源選択方式をとるべきでしょう。根源選択方式を取った場合でも,最終的には,具体的なシールタイプの選択に行き着きますが,根源の考察を経ないでいきなり末端で選択した場合とは雲泥の差があると思われます。