ガスケットの種類と特長について解説します。流体の漏れを止める密封部品のうち,各種機器の接合部や配管フランジなどのような静止部分の密封に用いられるものをガスケットと呼んでいます。
ガスケットの種類と特長
ガスケットの種類と特長について教えてください。
解説します。
流体の漏れを止める密封部品のうち,各種機器の接合部や配管フランジなどのような静止部分の密封に用いられるものをガスケットと呼んでいます。ここで,ガスケットの性能としては,一般的に下記が要求されます。
1. 弾力性(柔軟性)
所定の締付圧で相手部材の接触表面に十分に馴染む(接触表面の凸凹がガスケットで埋まった状態)と共に破壊しない十分な強度を有すること。
2. 耐熱性(耐寒性)
使用する温度に材料が十分に耐え,影響を受けないこと。
3. 耐圧性
使用する圧力に十分に耐え,優れたシール性能を発揮すること。
4. 耐薬品性
使用する流体に侵されないこと。
5. 長期安定性
使用する環境下で長期間安定したシール性能を発揮すること。
6. メンテナンス性
取り扱い時に注意を必要とせず取り付け,取り外し作業が容易にできること。
ガスケットの種類は,素材別による分類で表1のごとく3つに大別されます。また,ガスケットの種類における特長を下記に概説します。
表1 ガスケットの種類
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まず,非金属ガスケットは,非金属材料のみから構成されるガスケットで,一つの材料のみでガスケットとして機能するものもあれば,複数の材料を混合したものもあります。非金属ガスケットは,その他のガスケット(金属,セミメタリックガスケット)に比べ軟質で,馴染み性に優れていることからシール締付圧力を低く設定することができ,一般配管,バルブボンネットをはじめとする機器接合部に幅広く使用されていますが,先に述べた金属ガスケットやセミメタリックガスケットと比べると,低温・低圧の条件で用いられます。
次に,セミメタリックガスケットは,金属材料と非金属材料を組み合わせて作られるガスケットで,現在多く用いられているのは,うず巻形ガスケットとメタルジャケット(金属包み)形ガスケットです。うず巻形ガスケットは,金属製の薄板(フープ)と非金属材料のテープ(フィラ)を交互にうず巻状に巻き,巻き始めと巻き終わりをスポット溶接で固定したガスケットです。シール性能が良く,熱サイクル負荷時の応力変化に対する追従性にも優れた性能を示すため,用途は一般配管から高温・高圧,極低温の各種機器まで幅広く使用されています。メタルジャケットガスケットは,非金属材料の中芯(クッション)材を金属薄板で被覆したガスケットです。シール性能はうず巻形ガスケットに劣るものの耐熱性に優れ,用途によって様々な断面形状,平面形状(枝付タイプ)の製品を製作可能であることから,主にマルチパス形多管式熱交換器,塔,槽などに使用されています。
最後に,金属ガスケットは金属材料のみで作られているガスケットです。金属の強度と耐熱性を生かして高温・高圧条件で用いられることが多く,管フランジ,バルブボンネット,ボイラのマンホールをはじめ,塔・槽・熱交換器・オートクレーブなどの機器接合部などに使用されます。材料は,耐食性の面からはステンレス鋼,チタン,モネル鋼など,機器側フランジへの馴染み性の面からは銅,アルミニウム,純鉄,軟鋼などが多く使われます。また,用途によって様々な形状のものがありますが,いずれの形状においてもフランジがガスケットによって傷付けられるのを防止するために,両者の間には硬度差でHB30程度の差があるものが好ましいです。
メタル中空Oリングは耐熱性,耐食性の優れた金属パイプを所定の形状に成形し,両端を突き合わせて溶接した後に表面を研磨したガスケットです。ガスケットの表面には必要に応じて防錆やフランジ座面への馴染み性を向上させる目的で各種材料(PTFE,銀,ニッケル,銅,など)により表面処理を行う場合があります。
メタル中空Oリングは一般の金属ガスケットに比べて低締付荷重で低温から高温,高圧,高真空まで優れた性能を発揮するガスケットです。基本的にフランジには溝加工が必要となりますが,スペースが小さくて済むため,コンパクトに設計できます。ただし,フランジ座面には高い精度が必要であるために精密仕上げが必要です。
以上のごとく,ガスケットの種類や用途は多種多様であり,シール装置において長期間安定したシール効果を得るためには適切なガスケットの選定以外にシール装置の正しい設計(形式,構造)と適切な取り扱いが必要不可欠です。