オイルシールが圧入位置より浮き出すのはなぜか
外周ゴムオイルシールをJISのH8公差,表面粗さ1μm程度で加工したハウジングに,空圧を用いた圧入機で指定された位置まで圧入しましたが,荷重を除いたらオイルシールが圧入位置より浮き出しました。指定位置におさまらなかったのはなぜですか。
解説します。
外周ゴムオイルシールの場合,ハウジングに圧入する際,外周ゴム部に圧入方向の歪みが生じ,荷重を除いた段階でその歪み分だけもどりが生じます。これを一般にスプリングバックと呼んでいます。この歪み量は圧入スピードが速く,圧入後の荷重保持時間が短いほど大きくなり,その結果もどり量も大きくなります。この対策としては,油圧を用いた圧入機にてゆっくり圧入するとともに圧入後数秒荷重を保持し,歪みを緩和する方法に変更してください。なお,内圧の上昇や熱によるハウジングの変形(熱膨張)が生じた場合,ハウジング表面粗さが綺麗なほどオイルシールは抜けやすくなるため,12.5μmRz以内で粗いほうが保持力は向上します。