パワーステアリングポンプと使われている作動油 | ジュンツウネット21

自動車の操縦を快適なものにしているパワーステアリングポンプの構造,機能,およびどのような流体が使用されているのかについて解説します。

パワーステアリングポンプと使われている作動油

解説します。

1. パワーステアリングポンプの構造と機能

PSポンプ(Power Steering Pump)は通常,吸入・吐出しといったポンプ部分と流量を制御するフローコントロールバルブ,および圧力制御をするリリーフバルブまでをユニットとして,その他,取り付けられるエンジンのスペースに応じてオイルリザバをポンプに直接付加したりポンプから離したりする使い分けをしております。

ポンプの方式はベーン,ギヤー,スリッパ,トコロイド等の種類が見られますが,ベーン方式が圧倒的に多く,諸条件に最も適合しています。

図1は乗用車の小型・軽量ポンプ,図2はトラック用ポンプの構造を示します。

乗用車用PSポンプ
図1 乗用車用PSポンプ
トラック用PSポンプ
図2 トラック用PSポンプ

2. PSの回路と作動油の流れ

図3はPSシステムの回路を示しており,(1)ポンプからの吐出油は,ステアリングが中立(直進状態)では(2)コントロールバルブを通ってタンク(リザバー)の戻りポートへ還流しています。

このPSシステムの回路総油量は乗用車用ラックアンドピニオン方式で1L/min以下,トラック系で4~5L/min程度で大変少量であることがわかります。

ステアリングを左右どちらかに操舵し,(2)のバルブが切り替えられてパワーシリンダの左右どちらかに流入し,タイヤを転向させる。この時の接地抵抗に応じた圧力が発生し,パワーアシストが成される訳です。

また,バルブの切れ量に応じてパワーシリンダの移動量が決められるよう,フィードバックがかかり,サーボ機能を構成しています。

PS回路図
図3 PS回路図

3. リリーフバルブの作動

タイヤがロックエンドまで転向して,ある一定以上の油圧上昇を防ぐため,ポンプ内のリリーフバルブのポペット(図4)がバネ力に抗して開き,高圧油の一部をバイパスポート側へ逃がしております。

この時,パイロット,センシングオリフィスの流体の通過はフロコンスプール両端面への差圧力を生み,スプールはスプリングをたわませる方向へ移動して,残量を全部バイパスさせます。

フロコン&リリーフバルブ
図4 フロコン&リリーフバルブ

4. フローコントロールバルブの作動

フロコンバルブはPSギヤー側へ一定流量を供給する役目の他,それ以上の流量は余剰流量として,バイパスポートを通り吸込側へと帰還します。

その際,流体を加速して流体圧を下げ,リザバーからの流体を引き込み易くし,合流した流体の流速は下がり,その分,圧力エネルギへ転換してポンプ吸込ポートに対し0.5~1.0kgf/cm2程度の予圧をかける役目もあります。

これをスーパーチャージ圧力と称していますが,エンジン駆動によって6000rpm~7500rpmもの高速回転が可能なのは,この予圧によって吸入作用ができるため,キャビテーションを起こさずに使えるという大きな特徴があります。

5. PSポンプの流量特性

ポンプにとって大切な特性は,据切り時の吐出流量で,エンジンの回転数もアイドリング近辺であるためポンプ吐出量は少なく,フロコン制御以前の領域であり,吐出全量が有効出力にならなければなりません。この時の圧力は乗用車で70~80kgf/cm2,トラックでは105~140kgf/cm2付近まで上昇するためポンプ内部のスキマやPSバルブのスキマから内部漏えいによって失われ,油温が高ければ漏れはさらに倍加する。図5のP-Q特性は,40cSt程度の動粘度のときの圧力度合をリリーフ圧力まで変化させたときの有効吐出量を表わしています。

また図5の斜線部分で表われている流量パターンはポンプ回転数(エンジン回転数)の変化度合に応じた流量を表わしています。

3000rpmまで流量を低下させ,PSギヤーのバルブの圧力反応を鈍らせて,高速時の操舵力のマニアルのように重くする効果を出しています。

ポンプの流量特性
図5 ポンプの流量特性

6. PS用作動油

PSシステムに使用される作動油は,ATF(オートマティック・トランスミッション・フルード)が多いようです。

この理由は,自動変速機と似た厳しい使用条件のため,ATF用に開発されたGMのDEXRONやFORDのM2C33Fの添加剤の構成がPSにとっても有効だからであり,動粘度や粘度指数が合うといった理由だけではありません。

しかしATFは自動変速機のクラッチの断続を行わなければならず,ある程度の摩耗係数の保持が必要です。PSにとっては操舵フィーリング上摩耗係数は低い方が良く,ここに両者の要求に違いを見せております。

PS専用油の登場は低擦化をきっかけにしてその他,燃費改善のための低粘度化,一方では高温時の内部リーク低減のための粘度指数の向上,さらには,ベーンポンプ固有の問題ですが,遠心力で飛び出しにくくなる低温時のポンプ始動性向上を図る流動点引き下げ等の内容が盛り込まれています。

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最終更新日:2019年8月13日