水溶性増粘剤とは | ジュンツウネット21

水溶性の作動油は粘度が低いためにすき間からの洩れや,潤滑不良の原因とされています。このため,液の粘度を増すための添加剤があると聞きましたが,それを使用することによって派生する欠点はありませんか。また,増粘剤としてはどういうものがあるか,教えて下さい。

解説します。

増粘剤とは

基になる液体に添加混合することにより,その粘度を増大させる作用を有する物質を一般に増粘剤といい,主に分子量の大きい,いわゆる高分子物質の仲間がそれにあたります。とくに,水溶性の増粘剤の仲間のいくつかを分類し,表示します(表1)。

表1 増粘剤の種類
天然系およびその誘導体
 センイ素(セルロース)系およびその誘導体 CMC,MCなど
 蛋白質系 アルブミン(卵白の成分),カゼイン(牛乳に含まれている)など
 その他 アルギン酸,寒天,澱粉,多糖類など
合成系
 ビニル系,ビニリデン系化合物 およびこれらの組み合わさった化合物
 ポリエステル系化合物
 ポリアミド系化合物
 ポリエーテル系化合物
 ポリグリコール系化合物
 ポリビニルアルコール系化合物
 ポリアルキレンオキサイド系化合物
 ポリアクリル酸系化合物

天然系は天然物そのものおよびそれを化学的に加工したもの(誘導体)を含みます。合成系は人工的に造り出すのですから多くの種類が考えられ,一般に合成樹脂と呼ばれる物質の一歩手前の形のものを化学反応をおこさせ水に溶けやすいように変形させて造ります(具体的な内容はメーカーにより多岐にわたり複雑でわかりにくいので省略させていただきます)。

水溶性増粘剤について説明するためには,遠まわりのようですが,基になる水および理想的な作動液にふれておいた方がわかりやすいと思います。

Hydraulic Fluid

Hydraulic Fluidは,直訳すると水圧作動液とでもなるのでしょうか。つまり,私たちのまわりにごくありふれた状態で存在し,いろいろな物理的,生理的作用をたくみにあやつっている“水”を,圧力を伝える媒体(仲介役)として利用したことに端を発しています。当初は安いという経済的発想よりも,ふんだんに身のまわりにあるものをうまく利用するという知恵からの発想が強かったわけです。いわば,無から有を生じたようなものですから,初めのうちは便利な面が強調され利用されましたが,そのうちに欠点(使いにくさ)が目立つようになり,別の動力伝達のための工夫がなされるようになり,遂には今日のように石油留分(作動油として適しているある部分)をうまく利用するに至っているわけです。

“水”は単一物質なので,その性質もその良し悪しは別にして,はっきりとしていて,ある簡単な規則にしたがって変化します。現在多く使われている石油留分は単一物質ではありませんが,非常に似かよったもの同志の混合物なので,その性質も比較的単純でよくわかっており,ほぼ単一相と看做して実用することができます。

ところが,水を基にして,その性質の一部を改良するためには何か別の物質を混ぜてやる必要があるわけで,その結果出来たものは単一物質ではなく“混合物”であり,必ずしも単一相としていつも挙動するとは限らなくなってしまいます。すなわち,性質が非常に複雑になり,まわりの条件が変わるとそれに応じてある場合には不規則と思われるような変化さえ示すようになります。

そこで,水本来の基本的性質をよく承知した上で改良することが必要で,世の中に副作用のない薬はないのと同様に,いいことづくめの改良は,少なくとも経済性を考える限り,不可能といってよいと思います。すなわち,副作用(欠点,短所)をよく理解した上で使いこなす技術が必要となります。

理想的液体と水溶液

“増粘”もその例にもれず,程度の差はあれ難しい問題です。ここで,作動液として備えていてほしい特性(理想的液体の特性)を列挙してみますと次のようになります。

(1)適正な粘度を有すること
(2)圧縮性が小さいこと
(3)潤滑性が適当なレベルであること
(4)材料(金属,非金属)に悪影響を与えないこと
(5)寿命が長い(劣化しにくい)こと
 (5)-1 蒸発しにくいこと(物性が変化するので)
 (5)-2 安定性がよいこと(温度,圧力,せん断力,PH,酸化,他成分混入などによる特性変化が少ないこと;溶解性がよく,微生物が発生しないこと)
(6)供給安定性が高い(量的に十分ある)こと
(7)価格が安いこと
(8)安全性が高いこと(燃えにくいこと,有毒性がないこと,環境を汚染しないこと)

水溶液の性質とこれらの特性とを比較してみると理解しやすいと思います。水溶性の場合,(2),(6),(7),および(8)の一部は良好ですが,これら以外はどの特性も劣っています。したがって,作動液供給者はよりよい品物の開発に鋭意努力してくれるとは思いますが,このような欠点の多いものであるという認識を正しく持って現実的,実用的な対応(装置システム全体,取り扱いも含めた総合的経済性の追求)をする必要があると思います。

増粘剤一つをとってみても,改良の可能性があるのは(1),(3)の一部,(4),(5)-2の一部,(8)くらいで,(6),(7)は相対的な因子で何を基準とするかで議論がわかれ,もし水の価を基準とすれば経済的な商品化はまず不可能となります。一方,(3),(4),(5)-2の一部は他種の添加剤の協力を得れば改良の可能性があるので,論点は(1),(5)-2,(8)にしぼられると考えてよいと思います。

増粘剤の効果および与える影響

少なくとも現在主流を占めている,粘度依存タイプの油圧機器に対してはその要求粘度レベルに合った作動液でないと用をなさないわけで,(3),(4),(5)ー2,(8)を満足しまたこれらに悪影響を与えず,かつ増粘効果の高い(添加量と価格との兼ね合い)増粘剤があればよいことになります。現在の耐摩耗性水-グリコール作動液は性能面ではほぼこれらの要求に合致しますが,増粘剤だけではこれだけの性能をもたせることができず,数種の添加剤の組み合わせ即ちバランス上どうしても現状程度の価格にならざるを得ないと思います。いわゆる,HWBF的発想では非常に達成の難しいターゲットであるといえます。

他の要求性能はさておき,話を簡単にするために粘度のみに焦点をしぼってみても,添加量が少なくて安定な,増粘効果の大きいかつ安いものがあれば問題はないわけですが,実際にはそううまくいきません。増粘効果とは,単に見かけ上粘度が大きくなればよいという単純なものではなく,外的条件すなわち,温度,圧力,せん断力,酸化,他成分の混入などの変化に対して異常な粘度変化をおこさないものでなくてはなりません。一般に,粘度を大きくする力の強い化合物は使用中の粘度低下が大きく,もし良好な増粘効果のものがあるとしても,おそらく製造面(反応条件,規模など)からみて割高にならざるを得ないと思われ,また安いものは効果も小さく多量に添加しなければならなくなり,結果的に割安にはならないと思います。したがって,せん断力による粘度低下,熱・酸化劣化によるスラッジの発生,外部からのコンタミネーションによる相分離,環境汚染などに十分配慮のうえこれらに強い増粘剤をえらばねばなりません。“水+増粘剤”を石油系作動油の場合の基油と考えればよいわけで,その基油だけでは実用上十分な性能を備えていないことはよくおわかりのことと思います。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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