潤滑油の種類と耐えられる高温度の例を示します。
潤滑油はどのくらいの高温に耐えられるか(概要)
潤滑油はどのくらいの高温に耐えられますか。もっとも高温に強い製品を教えてください。
解説します。
はじめに
何ごとにも得意,不得意があります。
潤滑すべき部分も例外ではありません。「構造上油を使えないのでグリース潤滑にしたい」とか,「クーラーを十分に備えられない」,「水の入る可能性のある場所と共有潤滑しなければならない」,「広い温度範囲でうまく使えなければ困る(航空機など)」,「潤滑性がよくないと困る」,「スラッジが生じては困る」,などいろいろな条件があり,その対応,選択に苦慮する場合が多いわけですが,適油選定にあたってはどれかは犠牲にせざるをえません。
ここでは「高温に耐える」という意味を,できるだけ広い視野から眺めてみたいと思います。
「高温に耐える」とは?
思いつくままに例えもまじえてあげてみます。
(1)火にあたる時,短時間ならばかなり高温でも近くで耐えられるが,時間が長くなるにつれ,耐えられる温度が低くなる。
(2)風呂に入る場合,瞬時的に手足をつっこむだけならばかなり熱い湯でも平気だが,体全体とか長時間ゆっくりつかっていようとするには熱すぎて駄目。
(3)炎天下で立っている場合短時間ならば,また風でもあればかなり耐えられるが,長すぎると日射病になったりして倒れてしまう。
(4)低い温度で物を焼くには長時間かかり,高温で焼けばごく短時間ですむ場合もある。これは裏をかえせば,耐えられる温度はその時間と大いに関係があることを示している。何時間もてばよいのか。反応は徐々にでも進むから無制限にはもたない。一般に,温度が8~10℃上昇すると反応速度は2倍に(寿命は1/2に)なるといわれている。
(5)潤滑の面から見て,適正な粘度を保てる上限温度が限界となろう。
(6)劣化(分解・酸化・重合など)が急に進みだす温度,すなわち油の寿命が急に短かくなりだす温度が限界であろう。
(7)雰囲気が,空気(または酸素)か,窒素などのほかのガスによって差が出るだろう。等々。
評価方法およびその結果は?
一般によく出会う条件は,件数的にはかなり多いので標準法として,評価条件を設定し,データをえておけば,非常に役立ちます。
(1)報文などにみられるデータは,条件が明示されていないのが非常に多い。
(2)使う条件が多岐にわたり,一般的に各条件を定量的に絞り込めないので,個々の例を特定してその条件で評価せざるをえない。
(3)しかし,ある条件を固定した同一条件下では比較可能であろう。
(4)これらのデータを集め,経験,目的から選別(定)推定せざるをえない。(try & erron 的)。
したがって最終的には,考えている使用条件のシュミレーションテストで推定するのがベターであることになるので,別の機会にできるだけ多くの試験条件例を列挙し,判断の参考に供したいと思います。
耐えられる温度の例 (表)
そこでできるだけ多くのデータを集め,参考に供します。
なお,グリースに関しては基油と増ちょう剤との組み合わせにより性能が大きく変わり,使用しようとしている温度その他の条件下でのベアリングテストにより良否を判断している例が多く,横に比較するのが難しいので省略しました。
表 潤滑油の種類と耐えられる高温度の例
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