潤滑油はどのくらいの低温まで使用できるか | ジュンツウネット21

潤滑油はどのくらいの低温まで使用できるか は,加温(予熱)などの補助手段の効果も考えに入れ,適当な流動性を示す温度以上の領域でかつ,その温度で潤滑に必要十分な粘度を示す温度領域(限界温度)までということになります。また超低温,極低温用といっても,明確な定義はないと思いますので,一応-40℃を目安として考えます。

潤滑油はどのくらいの低温まで使用できるか(概要)

潤滑油には使用温度の限界があるそうです。現在市販されている潤滑油はどの位の低温まで使用可能かご教示下さい。また,超低温用としてどのような油種が市販されているかもご説明願います。
解説します。

潤滑油(液状)の特性の1つとして流動点,凝固点があります。潤滑油をどんどん冷やしていくと水が凍るように固体状になり流動しなくなります。この温度が凝固点で,その2.5℃高い温度を流動点と定義します。つまり流動しうる最低温度が流動点というわけで,パラフィン基および混合基石油系潤滑油のように比較的高い温度で固体化するワックスを含むもの,および化合物の構造上固体⇔液体の変化温度が決まっている合成油ではその温度で急激に固体化(凝固)するので,逆のいい方をすればその温度より少し高い温度に暖めればかなりの流動性を示すようになります。

また潤滑油の基本的な重要な特性として粘度があげられますが,この粘度は温度により変化します。その変化の仕方,粘度は油の種類(化学的構造)により異なり,一般に低温になるにつれ粘度が大きくなっていき,かつその変化の度合は低温になるほど大きくなっていき,凝固点の5~10℃ぐらい高い温度まではかなりの流動性を示します。一方温度が上がっていくと粘度は小さくなります。これらの温度と粘度との関係を表わす指標が粘度指数(V.I)とよばれるもので,概略,絶対温度(°K)と粘度の各々の対数値が,直線関係(反比例)を示します。但し粘度指数は40℃と100℃との粘度から計算されますので極端に低いまたは高い温度での状態をかならずしも表わしているわけではありません。(図1

常温における潤滑油の粘度と温度との関係(Walther-ASTM図表による)
図1 常温における潤滑油の粘度と温度との関係(Walther-ASTM図表による)

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そこで,潤滑油として作用するためには少なくとも使用状態において必要かつ十分な流動性と粘度を保持していなければならず,当然使用条件,用途によりその程度(値の大きさ)が変わってきます。

使われる周囲の環境によって,すなわち(1)長時間その温度付近で稼働し続ける機械装置(機械要素)で使われるのか,(2)周囲温度が低くても機械が稼働し続けるに従い潤滑される機械要素(給油システムを含め)が温度上昇をおこし,かなり高温にまで達するのか(始動性,持続性をも要求されるのか),また(3)何か他の物質(おもにガス)と接触,混合など共存しながら使われるのかなどによりその必要とする特性の内容が違ってきます。(1)の分類に入るものとしては屋外で使われる装置機械の普通の軸受,歯車用潤滑油(全損式および油浴式潤滑方式による)などが,(2)に入るものとしてはエンジン油(車両用および航空機用)などが,そして(3)に入るものとしては冷凍機油,圧縮機油などが挙げられます。

最初の分類(1)に入る潤滑油はその低温域において適当な流動性,粘度を保持していればよいが,(2),(3)に入る潤滑油は始動時にその低温域で適当な流動性,粘度を保持しているだけでなく稼働時の最高温度域においても適当な粘度を有していて,かつ劣化しにくい熱/酸化安定性のよいものが望ましく,場合によっては接触する特殊なガスとの共存安定性のよいこと[エンジン燃焼生成物であるカーボンや酸性ガスをできるだけ無害化する能力(清浄分散性や酸中和性)を兼ね備えていること,相手ガス(冷媒や被圧縮ガス)と化学的に反応せず,溶け合いにくいこと,またはある程度溶け合うことなど]も合わせ要求されます。厳密にいえば粘度は温度ばかりでなく,そこにかかる圧力(受ける荷重),せん断速度(軸受など潤滑部分のすべり合い,またはころがりにより撹拌される程度の大小に関係する)により,変化しその程度は油の種類により異なるので,これらを総合的に評価しなければならなくなるが,ここでは影響の大きい温度についてのみ考えることにします。

いずれにしても使える温度範囲が広いこと,すなわちV.Iが高いことが望ましいことになりますが,V.Iの定義からもわかるように40℃と100℃との粘度から計算されるので,前述のように極端な低または高温域でのその潤滑油の流動性,粘度は必要時に推定または実測する必要があります。

一般に温度が低下するにつれ粘度は増大するので,温度が低くなるほど潤滑にとっては安全側へ移ることになるが,一方温度が上昇すると粘度が小さくなるのでその傾向と程度には十分注意する必要があります。すなわち使用時の最高温度もつねに頭に入れておかねばならないことになります。逆にいえば使用時の最低,最高両温度を考慮して潤滑油を選定するとともに,それを補ない効率化をはかる意味での加温(予熱),冷却,保温のための工夫を合わせ考慮しなければならないことになります。

したがって,どのくらい低温まで使えるかということになると,加温(予熱)などの補助手段の効果も考えに入れ,適当な流動性を示す温度以上の領域でかつ,その温度で潤滑に必要十分な粘度を示す温度領域(限界温度)までということになり,個々の潤滑油の特性(メーカーに相談するのがよい)をよく調査確認する必要があります。また超低温,極低温用といっても,周囲(本体)温度何度が境目か明確な定義はないと思いますので,一応-40℃を目安として,考えればよく,少なくとも流動点-45℃以下の油種銘柄を予備的に探し出し,対象となる潤滑油メーカーに具体的に相談されるのがよいと思います。

また,非常に大雑把に傾向をつかむには図2などが参考になります。但し,これは粘度の大小は一応度外視し,潤滑油の種類(化学的構造)による一般的程度(液状を示す温度範囲)を示したもので点線で示された部分は,各々単一物質か,同類の化学物の混合体なのか,その同類化学物の種類および混合(構成)割合などにより変わりうる不確定領域と思われます。

これら低温用潤滑油の具体的メーカ,銘柄については潤滑剤銘柄便覧を参照して下さい。

潤滑油の使用可能温度
図2 潤滑油の使用可能温度

<参考文献>
1) 潤滑ハンドブック (日本潤滑学会編)
2) 南部, 油化学vol.30, No12 ('81)

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

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最終更新日:2019年8月8日