ベースオイルの成分と特性 | ジュンツウネット21

ベースオイルの成分と特性

潤滑油のベースオイルの成分と基本特性といわれる粘性,流動性などについてご説明ください。
解説します。

潤滑油ベースオイル(基油)には,大半(90%以上)が石油の潤滑油留分を精製したいわゆる鉱油が使用されており,鉱油では性能が充たされない場合にのみ,用途に適した特性を持つ合成油が使用されています。このように鉱油系ベースオイルが広汎に使用される理由ですが,第1に潤滑油として適した粘度を有する留分が石油燃料の連産品として大量に,したがって安価に供給できることがあげられます。原油中の潤滑油原料となる留分(潤滑油留分)は,たとえば中東系原油で約4分の1ありますが,ベースオイル生産量は日本の原油処理量の1%程度であり,供給可能性は非常に大きいといえます。石油の重質留分が潤滑油に適しているとは,その化学構造が,粘性,流動性といったベースオイルの基本特性をみたすに適しているということになります。

石油は炭化水素が主体の,極めて多成分から成る混合物ですが,基本的には図1に示すようにパラフィン系炭化水素,ナフテン系炭化水素,芳香族炭化水素に大別され,沸点に応じた分子量・炭素数を有しています。

石油中炭化水素の組成

図1 石油中炭化水素の組成

ナフサすなわちガソリン留分のような軽質留分(沸点170℃以下,炭素数9以下)では,ガスクロマトグラフィーと質量分析により,個々の成分の分析まで可能になっていますが,重質留分では異性体の数が圧倒的に多いため,一般に化合物タイプによる組成分析すなわちタイプ分析が行われています。タイプ分析としては,図1のような化合物タイプ別毎の含有量を求める方法と,油全体を構成している炭素をパラフィン部(CP),ナフテン部(CN),芳香族部(CA)に分類し,各々を%表示するカーボンタイプ分析(環分析ともいう)と呼ばれる方法があります。前者の方法には液体クロマトグラフィーや質量分析が用いられ,後者としては,従来から密度,屈折率,粘度等の特性から構造パラメータを算出する方法がありますが,最近ではNMR(核磁気共鳴)スペクトルにより直接求められるようになりました。一般に,粘度指数,溶解力といったバルクの特性との関連を見るには後者が利用され,酸化安定性,界面活性のように個々の成分が影響する特性を調べるには前者の分析が行われます。

さて,石油の重質留分ほど,多環芳香族や縮合ナフテン化合物が増加しますが,同時にこれらの環に結合しているパラフィン鎖も長くあるいは多くなるのが普通で,その結果,CA,CN,CP (%)は留分によってあまり変わらないことになります。このため,粘度指数等の特性が留分によって大きく変わることはありません。

ベースオイルのもっとも基本的な特性は粘度ですが,これはベースオイルの分子量に支配され,精製工程中の蒸留によって決定されます。ベースオイルの平均分子量は150ニュートラル(SAE-10),500ニュートラル(SAE‐30),150ブライトストックで各々400,500,700程度です。ただし,同じ平均分子量-粘度でも,蒸留のカットにより分子量分布の幅が異なり,幅が広いベースオイルでは,引火点が低く,蒸発性が大きくなります。

ベースオイルの重要な特性である粘度指数は,粘度の温度変化の指標ですが,これはパラフィン部の直鎖構造の大きさ(比率)がもっとも寄与します。炭化水素の中でもっとも粘度指数の高い成分はn-パラフィンですが,C20以上のn-パラフィンは常温で固体であり,脱ろうされたベースオイル中にはほとんど含まれません。流動点が0℃以下で粘度指数の高い成分は分岐度の低いiso-パラフィン等で,つまり流動点を満たす範囲で直鎖構造の比率の高い分子構造が望ましいことになります。逆に,粘度指数の低い成分としては,分岐度の高いiso-パラフィン,CP(%)の低い多環芳香族,多環ナフテンがあげられます。溶剤抽出精製で多環芳香族を除去することにより粘度指数が向上することや,ナフテン基原油からのベースオイルは精製度が高くても粘度指数は低いことはよく知られています。また,ナフテン系ベースオイルの流動点が低いことは,それだけ直鎖部分の少ないことを反映したものでもあります。

潤滑油留分中には,原油によって差がありますが,硫黄,窒素,酸素等を有するヘテロ化合物が含まれており,種々の特性に影響します。特に窒素,酸素化合物といった極性化合物は微量でも抗乳化性,あわ立ち性等界面化学的特性に悪影響をおよぼすほか,色相低下,臭い,安定性低下の原因ともなりますので,精製により除去する必要があります。一方,硫黄化合物はいわゆる天然酸化防止剤としてベースオイルの酸化安定性に寄与すると考えられていますが,合成系の酸化防止剤を添加する場合は,硫黄分は少ない方が添加剤効果が良いともいわれています。

精製されたベースオイル中のヘテロ化合物の含量は,原油と精製工程・精製条件により大幅に異なり,水素化処理(Hydrotreated)油やホワイト油では,ppm程度であるのに対し,溶剤精製ニュートラルでは硫黄分0.1~1wt%,窒素分10~100wtppm程度が残存しています。一般に精製油中の硫黄化合物や窒素化合物は,図2のように1分子中に1個のヘテロ原子が含まれた形態ですので,硫黄分1wt%の場合,硫黄化合物としては10wt%以上含まれ,窒素分100ppmの場合,窒素化合物は0.3wt%以上含まれていることになり,特に硫黄化合物の存在は無視できないことがわかります。

ベースオイル中の硫黄および窒素化合物の組成

図2 ベースオイル中の硫黄および窒素化合物の組成

最後に芳香族化合物ですが,未精製の潤滑油留分中には20~60wt%の芳香族化合物が含まれており,その中の約半分は2環以上の多環芳香剤が占めています。しかし,粘度指数の向上,色相改良等を目的とした精製を施すことにより,3環以上の多環芳香族はほとんど除去されます。精製油中の芳香族の分析例*1を図3に示します。このように溶剤精製ニュートラルでは10~35wt%程度の芳香族が含まれていますが,水素化処理油等では1wt%以下のものもあります。芳香族化合物には天然酸化防止剤としての働きがあり,「最適芳香族性」といわれる含有量の時にベースオイルの酸化安定性はもっとも優れていることが知られています*2。ただし,この場合,芳香族の中に硫黄化合物も含まれることに注意する必要があります。溶剤精製ではこの最適芳香族性を考慮した条件が選ばれていますが,合成酸化防止剤を使用する場合は,芳香族含有量は少ない方がよいともいわれており,水素化処理はこの考えに沿った精製方式といえます。また,芳香族分には,ベースオイルの溶解力を上げる効果があり,ゴム加工油(プロセス油),電気絶縁油,圧縮機油等では,芳香族分を多く残存させたベースオイルを使用することがあります。

溶剤精製150ニュートラル中の芳香族組成*1

図3 溶剤精製150ニュートラル中の芳香族組成*1


 

<参考文献>
*1 Matsunaga, A.,et al,Anal. Chem. 50 753(1978)
*2 松永, 潤滑通信 253 37(1988)

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