蛍光X線分析のトライボロジーへの応用 | 表面試験測定分析BOX | ジュンツウネット21

日立ハイテクサイエンス(旧 エスアイアイ・ナノテクノロジー)が取り扱う蛍光X線分析装置のトライボロジーへの応用の可能性について紹介する。

株式会社日立ハイテクサイエンス(旧 エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社) 2011/4

はじめに

近年,急速なテクノロジーの進歩と同時に環境問題や資源問題への対策が求められる中,地球規模で環境保全を確保しつつエネルギー・資源問題の解決を図るための諸施策が検討・実行されている。環境への負荷を低減することが提唱されている反面,我々の生活に対する利便性・快適性は,あらゆる場面で求められており,環境・資源問題と利便性・快適性の両立が要求されている。

このような背景においてトライボロジーは,利便性や快適性を確保しつつ,環境・資源問題への貢献に期待される分野である。また,本編で紹介する蛍光X線分析装置は,我々の生活環境や地球環境に対して負担となる有害な金属の分析や,めっき膜厚の測定法の1つとして広く使われている分析装置である。

そこで今回は,この蛍光X線分析装置のトライボロジーへの応用の可能性について紹介する。

蛍光X線膜厚測定とは

蛍光X線分析法とは,以下に説明する光電効果を応用したものである。あるエネルギーを持ったX線を物質に照射すると,その物質を構成している原子の内殻電子は,原子の外へ放出される。蛍光X線とは,励起によって空孔が生じた軌道に外殻電子が遷移する際に放出されたX線であり,そのエネルギー(波長)は,内殻と外殻のエネルギー差に相当する。

金属皮膜にX線を照射すると放出される蛍光X線強度は,金属皮膜の厚みや密度によって異なってくる。皮膜成分の蛍光X線強度は,皮膜が厚くなると強くなる一方,素材成分の蛍光X線は,皮膜の厚みが厚くなると,皮膜によって吸収されることから,皮膜の厚みに関連して強度が低下する(図1)。

皮膜の厚みによる蛍光X線強度変化

図1 皮膜の厚みによる蛍光X線強度変化

以上のように,蛍光X線による膜厚測定は,測定対象物の試料構造をあらかじめ把握し,蛍光X線の透過・吸収の原理を利用して膜厚や構成する元素の成分比を求めることが可能となる。

蛍光X線分析装置の特長

蛍光X線を用いた分析は,試料に対して非破壊・非接触で元素分析が行えることが大きな特長となる。また,測定するときの雰囲気が大気中であることから,試料の状態が液体・固体・粉体に対して有効である。

例として,皮膜の厚さを測定する方法は,電子顕微鏡などによる断面試験法や電解式試験法などもあるが,いずれも試料の破壊分析となり,分析後の試料は製品としての使用が不可能となる。しかし蛍光X線分析法は非破壊分析であるため,製品そのものを測定することが可能である。さらに,測定準備として化学的および物理的な前処理は必要性がないため,前処理による人的誤差の影響がほとんどなく,簡便かつ迅速に測定することが可能である。

エネルギー分散型の蛍光X線装置の1つである上面照射タイプは,試料に対してX線発生系と検出系が上面に配置され,X-Y-Z方向へ駆動する試料ステージで構成される。そのため,小さな部品や測定物に対して,微妙な位置あわせを行った分析などが可能となる。上面照射タイプは,皮膜の厚さ測定や異物分析に加え,最近では元素がどのように分布しているか分かる,マッピング分析などで使用されている。

上面照射タイプの蛍光X 線装置概要

図2 上面照射タイプの蛍光X線装置概要

適用時例の紹介

固体潤滑皮膜の種類は様々であるが,蛍光X線分析では,スズや銀,二硫化モリブデンや,二硫化タングステンといった金属皮膜の厚みおよび合金の組成を求めることに適している。元素によって求められる膜厚の範囲は異なるが,薄い膜では数ナノメートル(nm)から数十マイクロメートル(μm)までの厚みを求めることができる。実際に蛍光X線は,電子部品や自動車部品などの品質管理を目的に利用されており,工具など硬い金属材料に対しても有効な装置である。

蛍光X線分析はポイントごとの膜厚測定に利用されることが多いが,マッピング分析により皮膜の分布を視覚的に把握することも可能である。実際に成膜した結果が,試料面内でどのように膜厚の分布を持っているか分析した例を図3に示す。

Auめっきの膜厚分布

図3 Auめっきの膜厚分布

このように,マッピング分析は,試料ステージの駆動範囲に対して,X-Y方向へ試料を動かして測定することで,面内の分布(均一性)評価や,元素分布,不純物の存在を見つけることに応用することができる。

今後の展望

今後,新興国のさらなる成長により,レアメタルなどの材料価格の高騰は,無機・金属系の材料費に大きく影響してくることが予想される。皮膜は,機能・性能や信頼性を保つために過剰品質になることが多いが,皮膜を厚く着けることは材料費として直接コストにつながる。そのため,コストを抑制しつつ,性能や信頼性といった品質管理を行う方法の1つとして,蛍光X線分析装置は有効な分析方法として期待できる。

新東科学
○新東科学
連続加重式引掻強度試験機
http://www.heidon.co.jp/

協和界面科学
○協和界面科学
摩擦摩耗解析装置,接触角計,表面張力計
http://www.face-kyowa.co.jp

エリオニクス
○エリオニクス
押し込み硬さ試験機,表面力測定装置,走査電子顕微鏡
http://www.elionix.co.jp/


○ブルカージャパン ナノ表面計測事業部
3次元光干渉粗さ計,原子間力顕微鏡システム,走査型プローブ顕微鏡
https://www.bruker-nano.jp/

Rtec-Instruments
○Rtec-Instruments
白色干渉計,スクラッチ&マイクロインデンテーション試験機など
https://rtec-japan.com/

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    最終更新日:2024年3月1日