切削油剤の種類 | 切削油剤選定のポイント | 切削油適油選定BOX | ジュンツウネット21

ユシロ化学工業株式会社 太田 朋子

1.切削油剤の種類

切削油剤は,希釈せずに使用する不水溶性切削油剤と,水に希釈して使用する水溶性切削油剤に大別される。不水溶性切削油剤は潤滑性や抗溶着性を,水溶性切削油剤は冷却性を主眼において使用される。一次性能である切削性は不水溶性切削油剤の方が優れる。作業環境の清潔さ,引火の危険性の排除など,二次性能が優先される場合に水溶性切削油剤が使用される。

1.1 不水溶性切削油剤

主成分は鉱油および脂肪油であり,潤滑性,抗溶着性に優れるため,加工面の粗さや加工精度を要求される加工に適する。しかし不水溶性切削油剤の多くは,消防法によるところの危険物に該当するため,法規に基づいた措置,ならびに,火災の危険に対する予防措置が必要である。

表1にJIS規格(JIS K2241 切削油剤)による不水溶性切削油剤の分類と,各々の代表的な適用例を示す。極圧添加剤の有無と銅板腐食によってN1種からN4種に分類され,さらに動粘度,脂肪油分,全硫黄分によって細分されている。N1種は,腐食しやすい非鉄金属(銅および銅合金)の加工や鋳鉄の切削加工に使用されることが多い。N2種は,N3種,N4種に比べて化学的に安定であり,汎用油剤として一般切削加工に幅広く使用されている。N3種およびN4種は,極圧添加剤としての硫黄分を必須成分としている。このタイプの油剤は構成刃先の抑制効果が大きく良好な仕上げ面が得られるので,難削材の加工や仕上げ面精度の厳しい加工に使用されている。その他に,JIS規格のN1種~N4種には分類されない,5%を上まわる硫黄分を含有する切削油剤が,耐熱鋼などの難削材の加工に用いられる場合がある。ただし,これらを用いた高速加工の場合には化学摩耗により工具寿命が低下する場合があるので注意を要する。

表1 不水溶性切削油剤のJISによる分類と適用例
JISによる分類
適用例
種類
極圧添加剤
銅板腐食
100℃,1h
150℃,1h
N1種1号~4号
含まない
1以下
非鉄金属(銅および銅合金)の加工
鋳鉄の切削加工
N2種1号~4号
含む
2未満
汎用油剤,一般切削加工に幅広く使用
N3種1号~8号
含む
2以下
2以上
難削材の低速加工
仕上げ面精度の厳しい加工
N4種1号~8号
含む
3以下

1.2 水溶性切削油剤

水で希釈して使用するため,冷却性に優れる。また,引火の危険性がないので,無人化に適する。ただし,水で希釈することに起因する,以下のような注意点がある。

(1)油剤管理
 適切な濃度の維持,腐敗や臭気の予防が必要である。

(2)設備,被削材のさび
 設備の材質,駆動装置部とのシール性,加工後の被削材のさび止め処理などに留意する。

(3)廃液処理
 凝集処理等を行った後の排水を,河川,海洋等に排出する場合は,水質汚濁防止法に定められた排水基準を満足しなければならない。

表2にJIS規格による水溶性切削油剤の分類と,各々の代表的な適用例を示す。希釈時の外観,構成成分の水に対する溶解性,不揮発分,表面張力によって,A1種からA3種に分類され,さらに金属腐食,pHによって各々1号,2号に細分される。A1種は水で希釈すると乳白色の液となり,一般にエマルションと呼ばれる。10~30倍程度に希釈して,切削加工全般に使用されている。水溶性切削油剤の中で最も潤滑性が高い。A2種は水で希釈すると半透明ないし透明な液となり,一般にソリュブルと呼ばれる。10~50倍程度に希釈して,切削,研削加工に使用されている。エマルションに比べると洗浄性,冷却性が高い。A3種は水で希釈すると透明液となり,一般にソリューションと呼ばれる。30~80倍程度に希釈して使用される。優れた消泡性を有するため,主に研削加工に使用されている。水溶性切削油剤の中で最も冷却性が高い。

表2 水溶性切削油剤のJISによる分類と特徴,適用例
JISによる分類
特徴
適用例
種類
外観
A1種乳白色(エマルション)水溶性切削油剤の中で最も潤滑性が高い。鋳鉄,非鉄金属(アルミニウム,銅,およびその合金),鋼の切削加工
硫黄系極圧添加剤を含有するものは,鋼の低速加工などの重切削加工
A2種半透明ないし透明(ソリュブル)エマルションに比べると洗浄性,冷却性が高い。鋳鉄,非鉄金属(アルミニウム,銅,およびその合金),鋼の切削加工や研削加工
A3種透明(ソリューション)消泡性に優れる。
冷却性が高い。
鋳鉄の切削加工
鋳鉄,鋼の研削加工

 ※外観は希釈時のものであり,カッコ内の表記は一般的な呼称を示す。

JIS規格では区別されないが,シンセティックあるいはオイルフリーと呼ばれる,潤滑成分として合成潤滑剤を使用した切削油剤が,近年,多用されている。シンセティックタイプの定義について,切削油剤メーカー間で統一した見解はないが,広義に捉えれば「天然成分(主に鉱油)を含まず,化学合成された潤滑成分(合成潤滑剤)を適用した油剤」となる。適用される代表的な合成潤滑剤はポリアルキレングリコールであり,合成品のため,水への溶解性を自由に設計することができる。ポリアルキレングリコールの適用により,シンセティックタイプは一般に,浸透性,冷却性が良好であり,また,化学合成された成分であることから,腐敗しにくいという特徴を有する。シンセティックタイプにおいても,JIS規格のA1種,A2種およびA3種に該当するものがある。

1.3 切削油剤の種類と性能

切削油剤には潤滑性をはじめ,冷却性,さび止め性,作業性,などの性能が求められる。表3に不水溶性切削油剤と水溶性切削油剤の性能比較を示し,以下に,切削油剤の種類と,各種性能の一般的な関係について述べる。

(1)潤滑性
 潤滑性は不水溶性切削油剤が優れる。水溶性切削油剤ではエマルションが優れる。

(2)冷却性
 水に希釈して使用する水溶性切削油剤が優れる。特にソリューションが優れ,また,シンセティックタイプは一般的に冷却性に優れる。

(3)浸透性 
 不水溶性切削油剤では低粘度の油剤が優れ,水溶性切削油剤ではソリュブルが優れる。また,シンセティックタイプは一般的に浸透性に優れる。

(4)さび止め性
 不水溶性切削油剤が優れる。水溶性切削油剤は,推奨濃度であれば使用上の問題はないが,ソリュブルが最も優れる。

(5)作業性
 機械周辺や床面,作業服などの清潔さにおいて水溶性切削油剤が優れる。また水溶性切削油剤はオイルミストの発生や,発煙,引火の危険性もない。

(6)耐劣化性 
 切削油は,切りくず,機械潤滑油,作動油など,異物の混入により劣化する。水溶性切削油剤は,さらにバクテリアによる腐敗劣化を生ずる。水溶性切削油剤の腐敗による耐劣化性は,ソリューションが最も優れる。

表3 不水溶性切削油剤と水溶性切削油剤の性能比較
 
油剤
不水溶性切削油剤
水溶性切削油剤
項目 
一次性能(切削性)工具寿命
寸法精度
仕上面あらさ
二次性能(作業性)機械・加工物のさび
塗料の剥離
切りくずの除去・分離
発煙・引火
皮膚刺激性
作業環境の清潔さ
耐腐敗・耐劣化
使用液管理
廃液処理
経済性油剤費
油剤管理費
廃液処理費
機械保全費

 優れている,やや劣る(相対比較)


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