切削油剤のJIS規格改正 | 切削油適油選定BOX | ジュンツウネット21

全国工作油剤工業組合 技術部会

1. 規格改正の背景

切削油剤の規格は昭和36年(1961年)にJIS K 2241(切削油剤)と,JIS K 2525(切削油剤試験方法)の2規格が制定され,その後,昭和45年(1970年),昭和55年(1980年),昭和61年(1986年),平成9年(1997年)と4度の改正を経て,現行JIS
K 2241に至っている。

今回の規格改正の背景は,以下に引用した改正原案中,切削油剤解説「規格改正の趣旨」に詳述されているように,現行JISが規定している塩素系極圧添加剤を含む切削油剤を,廃棄処理する際等におけるダイオキシン発生の可能性が問題化しているため,JIS制定の精神に鑑み,また,切削油剤の望ましい将来像を示す意味においても,塩素系極圧添加剤を除外した規格が必要であると認識されたためである。

(切削油剤解説 規格改正の趣旨)
 21世紀を目前にした今日,我々の世界は限りある資源を合理的に利用した生産活動と安全かつ快適な生活環境の保全との両立という困難な問題に直面している。

切削油剤は高能率,高品位な金属加工を目標に,長年にわたって開発,応用研究がなされ,今日の産業界の発展に多大な貢献をなしてきたが,この切削油剤も今日的課題の前には,環境対応重視への変革を迫られており,その構成成分として利用可能な化学物質の種類,量は大幅に制限される傾向にある。現在市販されている切削油剤はJIS
K 2241-1997にもあるように,主要な潤滑成分として塩素系極圧添加剤を使用したものが主流であるが,それら塩素系化合物を含有する油剤を焼却廃棄する際等におけるダイオキシン類発生の危険性が懸念されている。

JISは鉱工業品の品質の改善,生産,使用,流通の合理化を目的として制定されるものであるが,安全や健康の保持,環境の保護という側面をも併せ持つため,切削油剤の将来像を示唆する意味においても,JIS
K 2241-1997に規定の塩素系極圧添加剤を除外することとした。

2. 規格改正に当たっての基本的考え方

(1)現行JISが規定している塩素系極圧添加剤を完全に除外する。
(2)現行JIS規格に該当しない切削油剤をJIS分類に取り込めるように,JIS分類を見直す。

規格改正を検討するに当たっての基本的考え方は上記(1),(2)の通りであり,(1)は今回改正の主目的である。また,(2)は現在市場に流通している切削油剤には,技術の進歩による油剤形態の変化等に由来して,JIS分類に該当しないものが多くなってきており,このような切削油剤が汎用的に使用されている状況は好ましくないという認識によるものである。

具体的には,不水溶性切削油剤は,現行の塩素系極圧添加剤を主体とする種類分類を硫黄系極圧添加剤の量および特性による分類に改めた。水溶性切削油剤においては,いわゆるエマルションとソリューブルだけの分類を改めて,ソリューション特性を有する油剤も分類できるように種類枠を拡大した。

3. 改正の個所,内容及び改正理由

現行規格の各項目は次のように変更される。

(1)「塩素」に関わる事項の削除

規格改正の背景に記した理由により,以下に示す現行JIS規格本文中の記載事項をすべて削除した。

a.用語の定義の項(4)極圧添加剤における具体的説明文「主として塩素・硫黄系化合物が用いられる」,及び(6)塩素分の全文。
b.種類の項における塩素分の記述。
c.品質及び性能の項,表1及び表2中の塩素分の欄。
d.5.不水溶性切削油剤の試験方法の項の5.5塩素分試験方法の全文,及び6.水溶性切削油剤の試験方法の項の6.7塩素分試験方法の全文。

(2)不水溶性切削油剤の種類及び呼称の変更

規格改正に当たっての基本的考え方2.及び塩素の代替として硫黄が重用されるようになることを考慮して,不水溶性切削油剤の種類を再編成した。具体的には硫黄系添加剤の有無及び銅板腐食によってN1種・N2種・N3種・N4種に区分し,さらに全硫黄分,脂肪油分及び動粘度によってN1種とN2種を1号~4号,N3種とN4種を1号~8号に細分した。詳細は表12及び3に示す通りである。

表1 不水溶性切削油剤の種類(改正原案)
N1種鉱油及び/又は脂肪油からなり,極圧添加剤を含まないもの。
N2種N1種の組成を主成分とし,極圧添加剤を含むもの。 (銅板腐食が150℃で2未満のもの。)
N3種N1種の組成を主成分とし,極圧添加剤を含むもの。(硫黄系極圧添加剤を必須とし,銅板腐食が100 ℃で2以下,150℃で2以上のもの。)  
N4種N1種の組成を主成分とし,極圧添加剤を含むもの。 (硫黄系極圧添加剤を必須とし,銅板腐食が100℃で3以上のもの。)
表2 不水溶切削油剤の種類及び性状(改正原案)
種類
動粘度 mm2/s(40℃)
脂肪油分 質量%
全硫黄分 質量%
銅板腐食
引火点 ℃
流動点 ℃
耐荷重能 MPa
100℃ 1h
150℃ 1h
N1種 1号
10未満
10未満
(1)
1以下
70以上
-5以下
0.1以上
2号
10以上
3号
10以上
10未満
130以上
4号
10以上
N2種 1号
10未満
10未満
5以下
2未満
70以上
0.1以上
2号
10以上
3号
10以上
10未満
130以上
4号
10以上
N3種 1号
10未満
10未満
(2)
1未満
2以下
2以上
70以上
0.15以上
2号
10以上
3号
10以上
10未満
130以上
4号
10以上
5号
10未満
10未満
(2)
1以上5以下
70以上
0.25以上
6号
10以上
7号
10以上
10未満
130以上
8号
10以上
N4種 1号
10未満
10未満
(2)
1未満
3以上
70以上
0.15以上
2号
10以上
3号
10以上
10未満
130以上
4号
10以上
5号
10未満
10未満
(2)
1以上5以下
70以上
0.25以上
6号
10以上
7号
10以上
10未満
130以上
8号
10以上

 備考 N1種~N4種のいずれも塩素系極圧添加剤を使用しない。
 注(1)硫黄系極圧添加剤に由来する硫黄分を含まない。
  (2)硫黄系極圧添加剤を必須とする。

表3 JIS K 2241-1997不水溶性切削油剤の種類及び性状(現行)
種類
動粘度 mm2/s{cSt}(40℃)
脂肪油分 質量%
塩素分
質量%
全硫黄分 質量%
銅板腐食
引火点 ℃
流動点 ℃
耐荷重能 MPa{kgf/cm2
100℃ 1h
150℃ 1h







1種1号
10未満
3以上8未満
1以下
70以上
-5以下
0.10{1.0}以上
2号8以上15未満
3号15以上
4号
10以上
3以上8未満
130以上
0.15{1.5}以上
5号8以上15未満
6号15以上
2種1号
10未満
1以上5未満
5以下
2以下
(1)
2以上
70以上
0.20{2.0}以上
2号5以上15未満
3号
10以上50未満
3以上10未満1以上5未満
130以上
4号5以上15未満
5号10以上1以上5未満
6号5以上15未満
11号
10未満
1以上5未満
(1)
3以上
70以上
0.25{2.5}上
12号5以上15未満
13号
10以上50未満
3以上10未満1以上5未満
130以上
14号5以上15未満
15号10以上1以上5未満
16号5以上15以下
17号
50以上
150以上

 注(1) 硫黄系極圧添加剤を添加したものに適用する。

(3)水溶性切削油剤の種類及び呼称の変更

昭和55年(1980年)の改正時,N-ニトロソアミンの問題によりW3種を廃止しW1種とW2種のみの構成となったが,近年の水溶性切削油剤の目覚しい進歩は,上記W3種の特性を有する新しいタイプの油剤を生み出している。規格改正に当たっての基本的考え方2.の観点から,これら油剤をJISに組み入れる必要があり,旧来の呼称との混同を避けるため,W1種をA1種,W2種をA2種へと呼称を変更し,新たにA3種を追加した。また,塩素分を含む2号が廃止となったため,3号を2号へと変更した。具体的には表45及び6に示す通りである。

表4 水溶性切削油剤の種類(改正原案)
A1種鉱油や脂肪油など,水に溶けない成分と界面活性剤からなり,水に加えて希釈すると外観が乳白色になるもの。
A2種界面活性剤など水に溶ける成分単独,または水に溶ける成分と鉱油や脂肪油など,水に溶けない成分からなり,水に加えて希釈すると外観が半透明ないし透明になるもの。
A3種水に溶ける成分からなり,水に加えて希釈すると外観が透明になるもの。
表5 水溶性切削油剤の種類及び性状(改正原案)
種類
外観
表面張力 10-3N/m
pH
乳化安定度mL(室温,24h)
不揮発分 質量%
全硫黄分 質量%
泡立ち試験 mL(24±2℃)
金属腐食(室温,48h)
硬水
油層
クリーム層
油層
クリーム層
A1種1号乳白色
8.5以上10.5未満
こん跡
2.5以下
2.5以下
2.5以下
80以上
5以下
1以下
変色がないこと(鋼板)
2号
8.0以上10.5未満
変色がないこと(アルミニウム板及び銅板)  
A2種1号半透明ないし透明
40未満
8.5以上10.5未満
30以上
変色がないこと(鋼板)
2号
8.0以上10.5未満
変色がないこと(アルミニウム板及び銅板)
A3種1号透明
40以上
8.5以上10.5未満
変色がないこと(鋼板)
2号
8.0以上10.5未満
変色がないこと(アルミニウム板及び銅板)

備考1.A1種~A3種のいずれも塩素系極圧添加剤及び亜硝酸塩を使用しない。
  2.不揮発分及び全硫黄分は原液における性状を規定し,それ以外の項目は室温20~30℃においてA1種は基準希釈倍率10 倍の水溶液,A2種及びA3種は30倍の水溶液の性状を規定したものである。希釈方法は,7.2による。

表6 JIS K 2241-1997水溶性切削油剤の種類及び性状(現行)
種類
表面張力 10-3N/m{dyn/cm}
乳化安定度mL(室温,24h)
不揮発分 質量%
pH
塩素分 質量%
全硫黄分 質量%
泡立ち試験 mL(24±2℃)
金属腐食(室温,48h)
硬水
油層
クリーム層
油層
クリーム層






W1種1号
こん跡
2.5以下
2.5以下
2.5以下
90以上
8.5以上10.5未満
5以下
1以下
変色がないこと(鋼板)
2号
1以上15以下
3号
8.0以上10.5未満
変色がないこと(アルミニウム板及び銅板)
W2種1号
40未満
30以上
8.5以上10.5未満
変色がないこと(鋼板)
2号
1以上15以下
3号
8.0以上10.5未満
変色がないこと(アルミニウム板及び銅板)

 備考 不揮発分・塩素分及び全硫黄分は原液で,それ以外は室温20~30℃においてW1種は標準希釈倍率10倍の水溶液,W2種は30倍の水溶液の性状を規定したものである。希釈方法は,6.2による。


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