エクソンモービル・ジャパン(旧 エクソンモービル(有))の食品機械用高性能合成潤滑油 モービル SHC シーバス シリーズを紹介する。当社の食品機械用潤滑油は,いずれも食の安全,省エネルギー,人件費といった昨今の食品業界が抱える課題に対し,潤滑管理という面からのソリューションを提供することができる製品である。
はじめに
最近の食の安全への社会的関心の高まりを背景とし,食品製造現場でも安全性に対して従来以上の配慮が求められている。食品機械に使用されている潤滑油についても例外ではなく,HACCPなどの取り組みを通じ,食品への偶発的接触時の安全性を確保すべく,NSF H1を取得した食品機械用潤滑油の採用に向けた動きが広まりつつある。
しかしその一方で,従来の食品機械用潤滑油は安全性の確保を最優先していたため,本来潤滑油が担うべき役割すなわち潤滑により機械を保護し工場の生産性を確保するという点において,汎用潤滑油と比較して必ずしも十分な性能を備えていない場合があった。そのため,工場の生産性低下を懸念するユーザーは,食品への潤滑油混入リスクがある製造ラインでも,汎用潤滑油を継続使用せざるをえなかった。
これらのリスクを解消すべく,当社では今春,食品機械用潤滑油の課題であった食の安全と工場の生産性の両立を可能にする『モービル SHC シーバス シリーズ』の販売を開始したのでご紹介する。
モービル SHC シーバス シリーズの特徴
『モービル SHC シーバス シリーズ』は,当社独自の合成潤滑油技術により,食の安全と潤滑油本来の性能をより高い次元で両立させた製品である。油圧油,ギヤ油,軸受油,循環系統油などの幅広い用途において,その優れた特徴によりユーザーに以下のような様々なメリットが提供できるものと期待される。
(1)食の安全
NSF H1に登録された潤滑油であり,食品加工設備での使用において,偶発的な食品への接触が想定される場合に適用できる潤滑油製品である。また,本製品はHalalおよびKosherといった宗教上の食に対する戒律も考慮している。加えて無色・低臭気であり,動物性物質やナッツ類,小麦またはグルテン由来のアレルゲンを成分として含まないため,国内外の様々な食文化や安全・健康上の制約が軽減される。
(2)エネルギーコストの低減
当社独自の合成潤滑油技術によりもたらされる優れた低トラクション効果により,設備の運転効率が向上し,省エネへの貢献が可能となる。当社におけるウォームギヤボックスのベンチテスト結果(図1)で,本製品は鉱物油系ギヤ油に比べギヤ効率が約3%改善することが確認されており,工場におけるエネルギーコスト低減やCO2排出量削減に貢献することが期待できる。
図1 ギヤボックス効率試験結果(当社ベンチテスト) |
(3)潤滑油寿命の延長によるメンテナンス費削減
合成潤滑油である本製品は,その優れた熱・酸化安定性により,鉱物油系潤滑油と比較して潤滑油寿命の延長が可能となる。
本製品は,当社の油圧作動油耐久試験において,鉱物油系油圧作動油に対し2倍以上の時間,潤滑油の劣化が抑制でき,機械システム内部を清浄に保つ(キープクリーン性能)ことが確認されている(図2)。潤滑油寿命の延長により,潤滑油の交換間隔延長が可能となり廃油量も低減され,潤滑油の交換に関わる人件費や廃油処理コストが削減できる。
モービルSHC シーバス46 |
鉱物油系油圧作動油 |
図2 油圧作動油耐久試験結果(当社耐久試験750時間後のオイルタンク底部)
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(4)機器寿命の延長による生産性向上
本製品は,卓越した耐摩耗性,さび止め性および腐食防止性に加え,泡立ち防止性,放気性をバランス良く有している。また,前述のように優れたキープクリーン性能を有するため,スラッジの形成による油圧サーボバルブの固着やフィルターの目詰まりといったトラブルを軽減する。さらに,低トラクション効果により摩擦面での発熱が抑制され,潤滑油温のみならず機器およびシール材の温度上昇も軽減されるため,これらの耐久性向上も見込まれる(図3)。
図3 ギヤボックス油温測定結果(当社ベンチテスト) |
これらの優れた性能により,フィルター寿命の延長などに代表される機器の各機械要素の耐久性向上および故障頻度が軽減されることによる修理費用低減も見込まれる。また,計画外の機械停止を削減して工場の効率的な運転が可能になることで,生産性向上が期待できる。
(5)幅広い適用性と油種統合による管理コスト低減
本製品は,低粘度グレード(ISO VG32,46,68)および高粘度グレード(ISO VG150,220,320,460)のラインナップにより,油圧油,ギヤ油,軸受油,循環系統油などの幅広い用途に適用可能である(表1)。また,高粘度指数であるため,冷凍庫のような低温からオーブンのような高温まで,幅広い温度での適用が可能であり,適切な潤滑性能を発揮する。さらに,一般的に鉱物油系潤滑油で潤滑する設備で使用されるシール材および構成部品に使われる材料との適合性も備えている。そのため,本製品は食品製造工程の上流から下流設備まで幅広い用途へ適用でき,また効果的な油種統合が可能となることで,潤滑油の在庫や管理に係るコストの低減に貢献できる。
表1 製品ラインナップ
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おわりに
当社では,『モービル SHC シーバス シリーズ』をはじめとした食品機械用潤滑油,および食品機械用グリースである『モービル SHCポリレー シリーズ』などの各種製品をラインナップしており,いずれも食の安全,省エネルギー,人件費といった昨今の食品業界が抱える課題に対し,潤滑管理という面からのソリューションを提供することができる製品である。また,食品業界のみならず,同様な問題を抱える包装材,動物用飼料,製薬といった製品の製造工程にも適用可能である。
今後も食の安全に対する機運はますます高まってくるものと予想される。貴工場における食の安全と生産性向上を目指した取り組みにおいて,本製品がその一助となれば幸いである。
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