ブライトストックとは | ジュンツウネット21

ブライトストックとは,原油の減圧蒸留残さ油を溶剤脱れき,溶剤抽出,溶剤脱ろう,水素精製してつくられる高粘度潤滑油基油のことをいいます。

ブライトストックとは

解説します。

ブライトストックとはどのようにして作るのか解説します。

溶剤精製法による潤滑油の製造,精製工程を図1に示します。

潤滑油の製造,精製工程図
図1 潤滑油の製造,精製工程図

この方法は,パラフィン基原油または混合基原油から高粘度指数の基油を製造するもので,高級潤滑油の製造法として一般的な方法であり,最も多く採用されています。この方法の最終工程で白土精製を用いる方法と水素精製を用いる方法がありますが,製品の品質面および公害防除の観点から水素精製が多く採用されています。

(1)溶剤脱アスファルト

減圧蒸留残さ油からブライトストックのような高粘度の潤滑油原料をつくるのに用いられます。この方法は,プロパンなどの軽質飽和炭化水素が,油分を溶かしアスファルトを溶かさないという性質を利用してアスファルトを分離するものです。

(2)溶剤抽出

この方法は,フルフラール,フェノールあるいはフェノール-クレゾールのような溶剤が,多環芳香族化合物やレジン分のみを選択的に溶解しやすい性質を利用して不安定成分を分離する方法です。溶剤抽出によって油の色相,粘度指数,酸化安定性が向上し,残炭が減少します。

(3)溶剤脱ろう

この方法は溶剤としてメチルエチルケトン-ベンゼンまたはトルエン,アセトン-ベンゼンまたはトルエンなどの混合溶剤を用います。これはケトン類がろう分を溶解せず,また低温で油をあまり溶解しない性質と,芳香族溶剤が低温で油を溶解するというそれぞれの特性を利用して両溶剤を適当に混合して油を溶解して冷却し,フィルタによってろ過して,ろう分と油を分離します。こうして油の流動点を低くします。

(4)水素化精製

この方法はCo-Mo-Al2O3,Ni-Mo-Al2O3などの触媒を用い,原料油中の不安定な微量成分を水素添加して安定な成分に変えるもので,潤滑油の色相,残炭,抗乳化性,安定性が改善され,硫黄分,酸価が減少します。

ブライトストックは低粘度の潤滑油基油と混合して,目的とする粘度の潤滑油を製造するときに用いられます。

高粘度潤滑油製品であるギヤ油や船舶用ディーゼルエンジン油,シリンダ油等にはブライトストックが配合されています。

ブライトストック(Bright Stock)の語源は,昔,ブライトストックをつくる時に色の濃いシリンダストックにナフサを混ぜて冬期放置してろう分を析出させたのち,上澄みのナフサ溶液を蒸留してナフサを除くと,色相の明るい製品が得られることからブライトストックと呼ばれるようになったらしいと聞いています。

次にこうしてつくったブライトストックの性状と組成を表1に示します。

表1 溶剤精製潤滑油の性状と組成
 
SAE10
SAE20
SAE30
ブライトストック
屈折率(n 20D
1.4782
1.4803
1.4834
1.4914
比重(d 204
0.8663
0.8716
0.8767
0.8901
粘度(cSt,40℃)
30.47
60.29
103.49
508.16
粘度(cSt,100℃)
5.11
7.87
11.09
31.60
粘度指数
93
95
92
92
分子量
388
457
513
690
硫黄分(wt%)
0.1
0.1
0.1
0.1
n -d-M環分析
 %CA
4.6
3.1
4.0
6.2
 %CN
30.5
30.5
28.6
25.1
 %CR
35.1
33.6
32.6
31.3
 %CP
64.9
66.4
67.4
68.7
  RA
0.22
0.17
0.25
0.52
  RN
1.75
2.11
2.27
2.87
  RT
1.97
2.28
2.52
3.39
クロマトグラフィー
 飽和成分(wt%)
86.9
85.4
83.2
73.8
 芳香族成分(wt%)
12.8
14.1
16.1
25.2
 レジン分 (wt%)
0.3
0.5
0.7
1.0

表1より明らかなように,ブライトストックの粘度,分子量は非常に大きいことがわかります。

ブライトストックの用途は潤滑油基油ブレンド材であることはすでに述べましたが,ブライトストックそのものも製品になります。

一例として,米国ペンシルバニア原油よりつくられたブライトストックは光輝焼入れ油(Quenching Oil)として非常に優れた性能を示します。

焼入れ油とは金属材料,特に鋼の焼入れを行うとき鋼を適当な温度に加熱したのち急冷しますが,このときの冷却媒体として用いる油をいいます。したがって適当な冷却性を有することが基本ですが,使用寿命の面から熱・酸価安定性のよいこと,安全性の面から引火点の高いことなどが要求されます。また,場合によっては焼入れ材料表面に対する光輝性が重視されますがパラフィン系ブライトストックは非常にすぐれた光輝焼入れ油です。

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最終更新日:2021年11月5日