セミ-ドライカットの事例 2006/3
田中インポートグループ株式会社
開発の背景
セミドライ(MQL)加工は90年代後半からISO14001・環境対策の大きな流れの中で,切削液代替の加工方法として普及し始めた。弊社もいち早く専用ミスト装置及び専用油の開発を行い,今日に至っている。
商品について
装置開発の主眼として,メンテナンスフリーをテーマにした。部品としてポンプや電気駆動部品を使用せず,専用油の定期的給油を除いて基本的にはノーメンテで長期使用が可能なように設計した。
セミドライカットシステム-II(DC-1,DC-2)
●本体・ノズル・マグネットが一体となっており,取り付け5分で使用できる
●油量調整は点滴落下量を見ながら調整できるので,安心
●ソレノイドバルブにより,自動化可能
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セミドライカットシステム-4(DC-S4)
●供給エア圧にほぼ等しい圧力の噴射力
●クーラント・ポンプのON/OFF信号で自動運転
●ノズルの口径の変化に応じ,油量自動調整
●1ヵ月に1~2回程度の給油のみで,殆どメンテナンスフリー
●φ1.0のノズルからでもミスト噴射
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1. 高速NCによる金型加工
機械 |
超高速NCフライス (Max 60,000RPM) |
刃物 |
超硬コーティング ボールエンドミル 0.5R |
回転数 |
50,000RPM |
加工材 |
焼入れ鋼 HRC50 |
加工 |
テニスのラケットの金型制作 |
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ねらい:超高速機の特性をフルに生かして,粗加工,仕上げ加工の区別なしに,最初から最後まで,1本の0.5Rの小径ボールエンドミルを50,000RPMで加工し,加工の終了と共に最後仕上げも終了しているという超高速金型制作法を確立する。
問題点:水溶性切削液や鉱油切削オイルでは,刃物の損傷や折れが激しく,生産ラインに入れることはできなかった。
解決:セミ-ドライカットシステム-IIの使用によって,刃物の損傷や折れなどのトラブルはなくなり,最初から最後まで1本のボールエンドミルで加工を完了することができた。これによって,加工時間を1/3以下に短縮することができた。
2. マシニングセンターによるリブ加工
機械 |
立て型マシニングセンター BT-40 |
加工材 |
金型材 熱処理 HRc40 |
カッター |
超硬コーティング リブ加工エンドミル φ1.2 |
リブ |
幅=1.2mm 深さ=8.0mm 長さ=52mm |
切削条件 |
S=10,000RPM
F=600mm/min
1パス当たり切り込み=0.03mm
アルティマ点滴量=20秒に1滴
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結果:従来トラブルが多く,ボトルネックであったリブ加工が,ノートラブルになり,リブの側壁の面粗度が大きく改善した。
3. 高周波高速スピンドルによるリブ加工
機械 |
通常のマシニングセンター (Max 6,000RPM) |
アタッチメント |
高周波高速スピンドル (Max 36,000RPM) |
材料 |
HPM-1(HRC40) |
加工 |
リブ加工 |
刃物 |
超硬コーティング エンドミル 1.0φ |
加工条件 |
回転数=36,000RPM 送り=F2,000 切り込み=Z
0.01 |
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問題点:従来の方法では,刃物の損傷が激しく実用的ではなかった。
解決:セミ-ドライカットシステム-IIを使用すると,刃物の損傷が著減し,これまで最大の難しい仕事とされていたリブ加工が容易なものとなった。
4. リーマー
寿命延長,面粗度向上 2S→0.63S
加工材 |
DC-53 ダイス鋼 |
加工 |
φ4.7 穴深さ=6.5mm |
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【加工-1】 |
センタードリル φ3 Z-1mm S1500 F75 |
刃物寿命:1,500個以上 結果:良好 |
【加工-2】 |
ハイス コーティングドリル φ4.6 S700 F75 ノンステップ |
従来寿命:200個 セミ-ドライカット使用後400個以上 |
【加工-3】 |
超硬リーマー φ4.7 S1300 F130→180 |
従来は,最高の鉱油をかけ,1,000個程度で調整。セミ-ドライカット使用後は,1,500個以上に延長し,特に面粗度の向上が著しい。 2S→0.63S |
この工場ではハイス工具・超硬工具両方に効果があるが,特にハイス工具に貢献するところが大であると感じている。
5. サーメット
加工材 |
高抗張力ステンレス鋼 マルテンサイト 16Cr |
加工物 |
190×65×55(高) 4枚をマグネットチャックに取り付ける。 |
刃物 |
サーメットチップ10個取り付けたφ200のフルバック |
加工条件 |
切り込み(t)…2.0
回転数…240RPM(従来の1.5倍)
切削速度(V)…150m
テーブル送り(U)…270mm(従来の1.25倍)
1枚当たり送り(Sz)…0.11mm
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結果 |
従来は,3回削るとチップに熔着を起こして駄目になった。
セミ-ドライカットを使用して,8回削ってもチップに損耗は認められない。
その後,810RPM,V=195m,U=450,Sz=0.145でテストしたが,機械馬力不足でテストできなかった。馬力数の大きい機械を使えば,充分このテストに耐えるとの確信を得た。 |
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