MQL導入のポイント 2006/3
はじめに
当社は1989年に,セミドライ加工の概念を日本でいちはやく導入し,これまでにセミドライ給油装置の出荷累計30,000台の実績を持つ。ミストを用いた加工方法は従来よりあったが,“More is not better”をコンセプトに,環境負荷の少ない高潤滑油と微少量をミスト塗布できる装置の組み合わせにより,MQL(最少量の油剤による加工)を普及し,現場への適用をはかってきた。1990年代前半の販売開始当初は,アルミ切断などの比較的単純な作業工程で,刃具寿命の向上と,作業環境改善の効果により普及が進んだ。また,金型加工では,加工精度や製品品位の向上効果があり,市場で認知された。また,2000年代に入り,クランクシャフトの油穴加工に代表される,小径深穴高速加工で高能率化を可能とし,日本の自動車業界の好調さも追い風となり,劇的な進展を見せている。
写真1 切断 |
写真2 金型 |
写真3 小径深穴加工 |
2. 給油装置
給油装置は,各種用意されており,ユーザーサイドでは選択に迷うこともあると思う。大きく分けて,刃物の外部からノズルでミストを塗布する外部給油タイプとスピンドル内部やタレット内部を通じてミストを刃先に送り込む内部給油タイプがある。外部給油はノズル内で油剤とエアーを混合するためシンプルな構造になっている。内部給油の場合は,スピンドルやタレットといった複雑な配管経路にミストを通過させるために的確なミスト粒径のコントロールが必要になる。
給油装置のグレードは,必要油量,レスポンス,制御方法,インターロックの有無により選択できる。取り付けする設備と加工内容に応じて選択いただきたい。
写真4 外部給油タイプ |
写真5 内部給油タイプ |
3. 油剤
セミドライ化の取り組みでは,油剤を正しく選択する必要がある。効果を得られない油剤を使用したり,別の油剤を混ぜて使用してしまうことで,潤滑不足による刃具寿命の低下や,装置内部で化合物を生成してしまい機能しなくなるトラブルが後を絶たない。特に内部給油用では,その装置の性格上,2μm以下の微細なオイルミストを発生させるため,大気に触れる表面積が増加するので,酸化・劣化が進行しない油剤が必須である。ブルーベLB7は,セミドライ内部給油用油剤の,1次性能として求められる,微細オイルミストの生成と,切削点における潤滑特性を最大限に生かせるように改良を加え,酸化劣化特性も抑制しながら,更に生分解性の点でも充分な配慮を行なった,地球環境にやさしい,セミドライ加工用油剤である。
写真6 油剤ラインアップ |
写真7 LB-7 |
4. EB-TOOL(オイルホール付きホルダ)
旋削工程をセミドライ化するための必須アイテムとして,旋盤用オイルホール付きバイト「EB-TOOL」の製品化を推進してきた。発表から約10年が経過し,多くのユーザーの要望を受けて,改善や改良を行い,現在では,180種を在庫するに至り,ユーザーのニーズに応えられる体制を整え,標準化をほぼ終了している。また,切削工程のセミドライ化の裾野を広げるための活動として,ユーザー既存工具へのオイルホール追加工も行っている。
写真8 EB-TOOL標準工具 |
写真9 EB-TOOL特殊工具 |
5. エンジニアリング
セミドライ加工を導入するにあたってエンジニアリングは重要なポイントである。我社は,行動力・実行力を付加して現場で学ぶことを続け,セミドライ加工のエンジニアリング会社として,製品のみならずサービスの提供と情報の提供にも積極的に取り組んできた。セミドライ加工に必要なエンジニアリングとは以下の通りである。
(1)セミドライ化に際しての効果予測と事例データの提供
(2)セミドライ加工トライアルセンタの設置(名古屋市)。NC旋盤,マシニングセンタにより,セミドライ加工の試削が可能
(3)既設設備の場合,機械配管経路の診断とミスト装置の選択
(4)既設設備への取り付け
(5)装置で生じた不具合に対する改善と,その改修作業で得た経験を活かしトラブル予見
(6)トラブル対処を迅速,且つユーザー自身が容易に確実にできる構造にすることで,ライン停止から復旧までの時間を短縮できる様に改善。それらの対処を可能にする説明書類の更なる整備を行っている
写真10 セミドライ加工トライアルセンタ |
写真11 |