ミストコレクター選定ガイド

電気集塵の技術と応用 | ミストコレクター選定ガイド | ジュンツウネット21

アマノ株式会社 環境系技術開発部 巻嶋 優治

 旋盤,フライス盤などの工作機械による金属加工では潤滑・冷却の目的で切削油を使用する。切削油は熱,機械的要因で微細化し,オイルミストとなり空中に飛散する。

 昨今はISO14001に代表されるように環境負荷低減が必須の時代になり,オイルミストによる作業環境の悪化や加工品質への影響が問題とされている。これに対応するミストコレクターの概要と,電気集塵の技術と応用について紹介させていただく。

1.ミストコレクターの種類と対応

 ミストコレクターには各社独自の工夫が盛り込まれているが,当社ミストコレクターは,図1のように大別される。使い勝手が良くイニシャルコストが低いフィルター式や衝突方式が多く使用されるが,高精度加工や難切削材の加工では不水溶性切削油が使用される場合はオイルミストの発生量が多くなる傾向がある。そのため微粒子に対して高い捕集効率が必要とされる電気集塵方式が適用されるケースが多い。

図1 ミストコレクター 一覧
捕集方式
フィルター方式
衝突方式
電気集塵方式
アマノ製品
MZシリーズ
MJシリーズ
EM-シリーズ
 
MZシリーズ:アマノ-mc_kaisetsu4-01
MJシリーズ:アマノ-mc_kaisetsu4-02
EM-シリーズ:アマノ-mc_kaisetsu4-03
概要 フィルターでろ過して捕集 粒子が衝突・接触して捕集 高電圧で粒子を帯電させ静電気で捕集
特長 ○低価格
○構造が簡単
○アフターフィルター装着可能
○フィルター廃棄物発生
○低価格
○構造が簡単
○アフターフィルター装着可能
○高価格
○微粒子を捕集可能
○吸引力が低下しない
○高濃度ミストに対応
捕集対象 水溶性ミスト 油性ミスト・水溶性ミスト 油性ミスト・水溶性ミスト
メンテナンス性 フィルター交換 捕集プレート洗浄 電極洗浄

電気集塵方式 EMシリーズ-mc_kaisetsu4-04

2.電気集塵方式の原理と捕集

2-1 電気集塵の原理

 図2のように放電極(先端の尖った針や細いワイヤー)と集塵極(=接地した平板)を一定の間隔で対向するように配置し,放電極に高電圧を印加すると薄く青白い光が見える。これをコロナ放電という。このコロナ放電部分では激しい電子放射が行われており,この電子が空気中の分子に衝突すると,酸素イオン(-)や,窒素イオン(+)などが生じる。図2のように放電極の極性が(+)のときは,(-)イオンは直ちに中和されて消滅するが(+)イオンは電気的引力によって強力に集塵極へ向かって誘引される。このとき,空気中に粒子があるとこの粒子に(+)イオンが衝突付着しミストは(+)に帯電するので,同様に集塵極へ誘引され捕集される。イオンの大きさはナノメートルのオーダーで,直径0.1μm程度の微細なオイルミストや大気塵やウイルスにも帯電が可能であり,微細な粒子まで捕集する。

電気集塵の原理-mc_kaisetsu4-05

図2 電気集塵の原理

2-2 電気集塵方式の捕集

 EMシリーズの捕集部は図3の様にミストを帯電する荷電極部と帯電したミストを電気力で捕集する集塵極部の2段式の構成となっている。

 EMシリーズをはじめとする電気集塵は微細なオイルミストにも対応でき,さらに環境保全の面でも,低圧力損失の電極を捕集部にするためにファン性能を低くすることができ省エネや廃棄物が少ないという特長がある。

電気集塵の捕集の原理-mc_kaisetsu4-06

図3 電気集塵の捕集の原理

3.電気集塵の技術

 高電圧を使用している電気集塵は高性能で廃棄物が発生しない長所がある半面,高電圧を扱うために汚れなどの影響にて運転の安定性を損なうことがある。またメンテナンスに技術を要するために運用効率が悪くなることがある。

 図4に示すEM-eIIシリーズでは,汚れにくい荷電極を開発し,荷電方式の見直しにより異常放電を起こりにくくして自動停止する頻度を低減した。

EM-eIIシリーズ構成-mc_kaisetsu4-07

図4 EM-eIIシリーズ構成

3-1 防汚荷電極

 従来機の並行平板型と比較すると,図5のようにEM-eIIの荷電極はすべてのミストが荷電領域を通過する荷電効率を高めた荷電極であり,汚れにくいことが特徴で,汚れを原因とする異常放電や火災リスクを大幅に低減することを可能とした。

防汚荷電極-mc_kaisetsu4-08

図5 防汚荷電極

 さらに最新型のEM-8e IIIでは図6のように特許技術のブラシタイプ荷電極を採用し,放電ポイントを増やすことで汚れに強くより耐久性の高い長期安定放電を実現している。

ブラシ式放電-mc_kaisetsu4-09

図6 ブラシ式放電

3-2 異常放電を低減

 従来のプラス荷電から,マイナス荷電方式を採用することでストリーマ領域がほとんどなくなり安定した放電を可能とした。防汚荷電極の荷電方式により帯電効率を高め,当初のプラス放電方式の1/2の電流で帯電可能となり低オゾン化が達成できた。

マイナス荷電方式-mc_kaisetsu4-10

図7 マイナス荷電方式

3-3 定電圧制御

 荷電極に汚れが増加してもこまめに電圧を自動調整しながら安定した運転を継続し,安全な電圧コントロールを実現する。図8の操作パネル部では点検が必要と判断すると運転を停止し点検箇所を表示する。

操作パネル-mc_kaisetsu4-11

図8 操作パネル

3-4 リモート監視

 データ通信機能の搭載でミストコレクターを遠隔監視することで,図9のようにメンテナンスデータを共有しいつでも機器の状態を把握して予防保全。メンテナンスの効率化をはかることが可能である。当社の電気集塵機は安全性と安定性を高めた監視技術も採用している。

リモート監視-mc_kaisetsu4-12

図9 リモート監視

4.電気集塵技術の応用例

4-1 電気集塵技術の空気清浄機への応用

 空間の空気清浄効率を高めるためには,大風量と高捕集性能が必要である。

 微細なウイルスや細菌などを捕集するためには,目の細かい大きな面積のフィルターが必要となり,そのフィルターは早期に目詰まりが発生して圧力損失も大きくなる。そのため大風量かつ低圧力損失で高性能の空気清浄装置の構築は難しい。

 この相反する技術要求を高いレベルで達成する手段として,現在では電気集塵装置開発で培った電気集塵技術の応用により図10に示す大風量・高性能のエアロゾルコレクターあまつかぜAC-15,AC-8の発売に至っている。

エアロゾルコレクターあまつかぜ-mc_kaisetsu4-13

図10 エアロゾルコレクターあまつかぜ

5.おわりに

 電気集塵タイプのミストコレクターは微細なオイルミストも捕集可能で環境保全の面からも省エネや廃棄物が少ないという特長があることから,今後も活躍の場が増えると予想される。

 一方で,昨今の世界的なウイルス感染の影響により空気清浄機のニーズが高まっている。電気集塵タイプの空気清浄機は目詰まりや油汚れなどにも強く,同様に微細な粒子を捕集することにより感染症の原因の一つとされる空間のウイルスや細菌を捕集可能なため,市場ニーズにマッチした商品となっている。

 以上,電気集塵の技術と応用について紹介した。電気集塵を応用したミストコレクターや空気清浄機により作業環境は著しく改善され,品質向上や企業イメージの向上,さらには従業員の健康維持につながる。読者の作業環境改善と健康障害防止の一助になれば幸いである。


○アマノ
水溶性・油性ミストを高い捕集率で作業環境をクリーンに
http://www.amano.co.jp/


○オーム電機
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https://www.ohm.jp/


○ミドリ安全・エアクオリティ
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http://www.midori-maq.com/


○川重商事
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http://www.kawasakitrading.co.jp/


○ホーコス
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http://www.horkos.co.jp/


最終更新日:2021年12月7日