洗浄と乾燥は切り離して考えることができない工程であり,産業洗浄の乾燥方法には,熱風乾燥,真空乾燥,蒸気乾燥,バレル乾燥,スピン乾燥,吸引乾燥など方式の違う複数の乾燥方法がある。乾燥する対象,量,使用する洗浄剤などによってどの乾燥方法を使用するか判断する必要がある。
熱風乾燥
最も広く行われている方法。熱風機やブローヒーターなどから槽内に熱風を送ることで被洗浄物を乾燥させる。
- 安価での導入が可能
- 他の乾燥方法との併用が容易
- 乾燥時間が短い
- 大量の部品にも対応できる
- 乾燥槽の耐熱対策が必要
- 高熱乾燥のため,部品が冷めるまで後工程に移ることができない
真空乾燥
大量の部品や,部品の無貫通穴の内部に入り込んだ水分を減圧の変化で乾燥させる方法。
- 大量部品の乾燥に適す
- 無貫通穴の内部水分除去に適す
- 他の方法よりも条件によっては乾燥が速い
- 大型の真空ポンプが必要なため,導入コストが高い
- 水系洗浄剤や溶剤系では乾燥条件が異なり,水系は特に困難
蒸気乾燥
有機溶剤やアルコール系溶剤,炭化水素系溶剤などを用い,液を煮沸させた蒸気中に被洗浄物を投入し,温度差による表面の凝縮作用にて汚れを流し落とす技術。
- 均一乾燥
- 乾燥後,後工程が迅速に行える(使用する溶剤による)
- 乾燥性がよい
- 冷却水など,付帯設備のコストがかかる
- 蒸気乾燥可能な液が少ない
- 代替フロン溶剤のコストがかかる
- IPA使用をする場合,防爆構造にする必要が生じる
バレル乾燥
被洗浄物をバレル用カゴの体積中に70~80%ほど投入,低速回転させることで乾燥を促す方法。
- 大量に乾燥させる場合に有効
- 乾燥時間の短縮に効果的
- 回転機構の考慮が必要
- 回転カゴへのセットの際の手間がかかる
スピン乾燥
遠心力を利用して乾燥させる方法。スピン乾燥と熱風(温風)乾燥の併用が多用されている。
- 大量に乾燥させる場合に有効
- 乾燥時間の短縮に効果的
- バランスの考慮が必要
- 破損,折れ,曲がりが懸念される部品には不向き
- カゴの形状に考慮する必要あり
吸引乾燥
強力なファンで槽内の空気を吸い込み,循環させ,一部を排気して乾燥させる方法。
- 大量に乾燥させる場合に有効
- 熱風乾燥よりも乾燥時間が早い(条件による)
- 吸引ファンの選定に注意が必要
- 乾燥槽内の構造の検討が必要
- 音が大きい
その他
半導体分野などでは,マランゴニー乾燥や赤外線乾燥が用いられている場合がある。
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