産業洗浄において,被洗浄物から除去しなければならない汚れは,非常に多岐に渡り,複数の汚れが混在して付着している場合も少なくない。精密部品分野などの発展で,汚れ物質も多様化している。
機械加工に用いられる切削油などの加工油
(1)不水溶性(油性)加工油
付着量が多い場合や高粘度の加工油を洗浄する場合には,炭化水素系・塩素系・臭素系洗浄剤が適している。
(2)水溶性加工油
軽く洗浄する程度であれば,水や湯で洗うだけでも対応できるが,精密部品などの分野では,湯洗後に水系洗浄剤で仕上げ洗浄を行うケースが多い。
切粉や切削片
表面上の破片は除去が簡単だが,穴などの残留物の除去は手間がかかる。
樹脂などの加工後洗浄はドライ洗浄が多用されている。
錆
洗浄で除去できるものは,初期のものに限られる。
例外として,微粉が錆びたものについては除去も可能である。
強アルカリ性洗浄剤または,酸系の洗浄剤でエッチング。すすぎと洗浄後の防錆剤塗布も重要である。
離型剤
以前はフロンやエタンで洗浄されていたが,現在は無洗浄化が進む。
成形品の成形精度の向上も顕著で,現在は油分やゴミ,ホコリの除去に重点が置かれることも少なくない。
使用される洗浄剤のタイプは,弱アルカリ性洗浄剤,フッ素系溶剤,グリコールエーテル系洗浄剤の希釈使用などが使用されている。
研磨剤
(1)光学レンズ研磨剤
研磨加工後の洗浄方法はアルカリ性洗浄剤を使用しての超音波洗浄がポピュラーである。
(2)バフ掛け用研磨剤
前処理の脱脂洗浄は,トリクロロエチレン,塩化メチレン,炭化水素系洗浄剤,アルカリ脱脂剤が多く使用されている。
バフ仕上げ後の洗浄は,超音波洗浄でバフ粉などのコンパウンド成分除去できる界面活性剤を添加した塩素系溶剤や炭化水素系洗浄剤が多く使用されている。
フラックス
(1)不水溶性フラックス残渣
はんだ付け工程で使用されているロジンフラックスは,フロン・エタンの生産禁止前ははんだ付け後の洗浄が広く行われていたが,無洗浄フラックスの登場により,現在はほとんどの現場で無洗浄の対応を取っている。
洗浄方法は準水系(グリコールエーテル)洗浄剤を用いた方法が一般的。
(2)水溶性フラックス残渣
水溶性フラックスは,現在あまり普及しておらず,油性のような無洗浄タイプも存在しない。
ピッチ
光学レンズを研磨する際に研磨皿にレンズを固定するピッチは,溶剤系洗浄剤でピッチを洗浄した後,弱アルカリ洗浄剤で仕上げ洗浄を行う。
ワックス
ワックスは種類や用途などが様々であるが,例えば薄いガラス板を切断する際に一時的に接着する用途で使用した時に加工後切断面にガラスの加工粉とワックスが残るが,これは融点以上の温度で洗浄すれば簡単に洗浄できる。
ワックスに対して溶解性のある洗浄剤を使用することが多いが,ガラスの材質によっては注意が必要である。
封止剤,接着剤
液晶パネルの製造工程で使用される事が多い。芳香族系炭化水素洗浄剤,グリコールエーテル,アルコール,シンナー,エステル,ケトンなどで洗浄を行う。
洗浄方法は,浸漬洗浄や浸漬超音波洗浄が多い。
インクやマーカー,ペイントなどの洗浄もほぼ同様である。
硬化樹脂,未硬化残渣
樹脂眼鏡レンズ製造工程で円形ガラスに付着するケースとレンズそのものに付着するケースが考えられるが,現在はグリコールエーテルやアルカリ系洗浄剤で洗浄されている。
半導体分野,HDD分野での汚染物質
各種パーティクル類,各種ガス,オイルミスト,研磨粉,メッキ液,金属酸化膜,有機物,金属イオンなど様々な汚染物質が半導体の製造現場,ハードディスクやハードディスクドライブ製造現場で洗浄されている。
酸化膜については,薬液処理が行われ,その他は超純水やアルコールでの洗浄が一般的である。
方法としてはスクラブ洗浄,乾式洗浄,オゾン,UVプラズマ洗浄,超音波洗浄などが用いられている。