レオロジーとは | ジュンツウネット21

レオロジーについて,基礎となるフックの法則とニュートンの法則を示し,解説します。レオロジーは「物質の変形(Deformation)と流動(Flow)に関する科学」といわれており,物理学,化学,材料力学・応用力学のそれぞれの立場から解答するのが適切であるとされています。

レオロジーとは

潤滑油や潤滑技術のことを勉強しているとレオロジーという言葉が出て来ました。レオロジーについてわかりやすくご説明下さい。
解説します。

レオロジーは「物質の変形(Deformation)と流動(Flow)に関する科学」といわれています。さらにくわしくいえば次の三つの立場から解答するのが適切であるとされています。

(1)物理学の立場から
物質の力学的性質に関する物性論である。

(2)化学の立場から
物質の力学的性質に関する理論化学,物理化学である。

(3)材料力学,応用力学の立場から
各種の異常な力学的性質(非フック弾性,塑性,非ニュートン粘性など)に関する力学である。

この他に重要なことは,レオロジーは他の多くの学問との間に広く境界領域を持っていることです。

レオロジーが発達してきたのは,工業の発展にともなってきたものといえます。

産業革命の時期に化学が生まれ,また化学工業が盛んになってきました。

20世紀になると,種々のコロイド物質やゴム,プラスチック,繊維などの製造が大規模に行われるようになり,これにともなってコロイド化学,次いでは高分子化学が発展してきました。

このような学問の中で,コロイド状物質や高分子物質の持っている特異な力学的性質に対して強く興味を示されたわけです。

この興味がレオロジーという科学体系に発展していきました。

窯業,ペイント工業,パン工業,繊維,ゴム,プラスチックなど各種工業の技術者,またこれらの分野に関係する科学者が物質の粘性流動や弾性変形その他あらゆる異常な力学的性質を研究対象にすることになりました。

次にレオロジーの基礎となる二つの法則を示します。

1. フックの法則

ゴムや鋼鉄のバネに力を加えると変形します。これはバターや粘土の場合の変形とことなり,物体の内部に変形を元にもどそうとする内部応力が発生します。外力を取り除けば,物体は直ちに完全に元の状態にもどり,内部応力は消滅します。このような性質を弾性(Elasticity)といいます。一般に変形が十分に小さければ,外力の除去と同時に物体は完全に元の形にもどりますが,変形がある限界を越えていると,元の方向にもどっていくが,完全には初めの状態にもどらない。この限界を弾性限界といいます。

外力を加えた時に,直ちに一定の変形が起こって時間によってまったく変化せず,外力の除去と同時に変形が直ちに完全に消失するような場合,この弾性は完全弾性(Perfect Elasticity)と呼ばれます。完全弾性体においても外力と変形の関係は複雑で,図1b.c.のように湾曲したり,さらにS字状になったりします。しかし,いずれも変形が十分に小さい範囲では比例関係が成立つと考えられます。

これはフックが1660年に実験的に見い出した事実で“バネの弾性力は伸びに比例する”と表現されるフックの法則です。

完全弾性体
図1 完全弾性体

2. ニュートンの法則

図2のような二重円筒容器に,重油,水ガラスなどを入れて,内筒に外力を加えて回転させます。

粘性流動
図2 粘性流動

内筒は外力に対応した一定の速度で回転します。内筒の変位は図3のように時間とともに直線的に増加します。変形は荷重がある限りどこまでも増加します。この様子は弾性体の場合の図1と全く異なります。

内筒が荷重に相応する一定の速度で回転し,次第に早くなっていかないのは,液の中に一種の抵抗力が発生し,外力とつり合っているからです。

粘性流体
図3 粘性流体

この抵抗力の原因を粘性(Viscosity)といいます。

流体(液体および気体)は多かれ少なかれ必ず粘性を持っています。

さて粘性流体は外力の存在する限り流動を続けますが,図3の時刻t2で荷重を取り除くと,その位置で静止して,回復はしません。これも弾性体とはまったくちがう挙動です。

流体は一定の力に対応して一定の速度で流動しますが力と流動速度との関係は図3c.のように種々のものがあり,ここにレオロジーの出番がくるわけです。

図3c.の中で,線図a.のように変形速度と外力が比例する場合にこの流体はニュートン粘性(Newtonian Viscosity)を示すといい,ニュートン粘性を示す流体をニュートン流体(Newtonian Fluid)といいます。これらは通常の低分子液体(水,アセトン,グリセリン)や気体です。

複雑な構造をもった液体(コロイド分散液,高分子溶液など)では,力と流動速度の関係が直線となったり,さらに一定の力に対する変形と時間の関係が直線にならなかったり,(すなわち流動速度が時間によって変わる),外力を取り去った時に回復が起こったり,あるいは変形速度と力の関係を示す線図が原点を通らなかったりします。

これらはすべて広い意味での非ニュートン液体(non-Newtonian Liquids)です。

通常の液体で外力と流動速度が比例するという関係は1687年にNewtonによって発表されたものでニュートンの法則とよばれます。

<参考文献>
中川鶴太郎:レオロジー 第2版,岩波新書,(1983)

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最終更新日:2021年11月5日