粘度と温度の関係,また粘度などについて | ジュンツウネット21

粘度と,粘度の温度による変化について解説します。一般に液体の粘度は,温度によって大きく変化します。特に潤滑油(炭化水素油)の粘度は,温度が変化すると著しく変化します。

粘度と温度の関係,また粘度などについて

粘度は温度によって変化するといわれます。粘度とはどのようなものですか,温度とのかかわりなどご教示下さい。
解説します。

1. 粘度とは

粘度は,潤滑油の機能を支配している最も重要な性質で,流体の流れやすさである“ねばさ”,あるいは“さらさらさ”を数値で表わしたものです。粘度は図1に示すように,上部の板の面積A=1cm2を流体の油膜厚さh=1cmにおいて速度V=1cm/sで動かしたとき,その抵抗力が1dyne(1×10-5N)となるような流体の粘度が0.1パスカル・秒(Pa・s,0.1Pa・s=1ポアズ,g・cm-1・s-1)であると定義されます。これは絶対粘度と呼ばれ,通常はこの絶対粘度をその流体の密度で割り算した値が,動粘度として一般に使用されます。単位は通常センチストークスcStを用いますが,SI単位ではmm2/sです。

粘度の説明図

図1 粘度の説明図

潤滑油では高粘度油と低粘度油を混合することでどのような粘度の油も調合できますが,国際標準化機構(ISO)は粘度の対数を等分してグルーピングするという分類・表示を決めました。これによる工業用潤滑油粘度分類(JIS K 2001)は,粘度グレードとしてISO VG2からISO VG1500までの18グレードを規定しています。ISO VGの次の数値は,40℃の動粘度の中心値を意味します。ただし,ISO VG2,3,5,7という低粘度グレードはそれぞれ2.2,3.2,4.6,6.8という40℃の動粘度の中心値を整数に丸めています。各粘度グレードに許容される動粘度範囲は,その中心値の±10%とされています。

このように工業用潤滑油では粘度分類が合理的に決められていますが,自動車用潤滑油では経験的なSAE粘度分類(SAE規格J300)が使用されています。SAE10W-30とかSAE90などの粘度呼称がありますが,これらは以前に粘度をセイボルト粘度計という現場の粘度計で測定していた時代の粘度表示が,現在も引き続き使用されていることによります。

次に潤滑における油の粘度の役割について述べます。図2(a)に示すように,下側の面が速度Uで運動するとき流体はその粘性のために先狭りのすきまに引きずり込まれるので,流体の分子どうしが押し合って圧力を発生します。これは『くさび膜効果』による圧力発生と呼ばれるものです。

油膜による圧力の発生

図2 油膜による圧力の発生

また,(b)のように両面が平行なすきまであっても,すきまが速度Vで減少する場合には,流体は粘性があるためにすきまから押し出されるのに抵抗し,同じく圧力が発生します。これは『しぼり膜効果』あるいは『スクイズ効果』による圧力発生と呼ばれます。このような発生圧力で荷重を支える潤滑方式が流体潤滑です。そして両方の効果による発生圧力はいずれの場合も,高粘度の流体ほど大きくなります。

2. 粘度の温度による変化

一般に液体の粘度は,温度によって大きく変化します。特に潤滑油(炭化水素油)の粘度は,温度が変化すると著しく変化します。このため粘度を表記するときには,その粘度を示す温度を同時に表記する必要があります。潤滑油の動粘度‐温度を解説するために,まず動粘度・温度チャートを図3に紹介します。

ASTM動粘度・温度チャート

図3 ASTM動粘度・温度チャート

図3は縦軸が動粘度で,横軸が温度です。縦軸は動粘度の対数の対数で目盛られてあり,横軸は温度の対数で目盛られてあります。この図にある試料油の任意の温度2点(例えば,40℃,100℃)における粘度をプロットして直線を引き,その他の温度におけるその油の動粘度を推定することができます。図3には100℃の粘度が等しい2油で,VIが100と200の直線を示します。図より試料油の粘度の温度による変化が,大きい(特にVI100の方が変化が大きい)ことが明らかです。そして低温度領域で動粘度が急増することもわかります。

しかし,実測される低温での粘度は,炭化水素油の場合この直線の上側にずれます。すなわち,炭化水素油の低温での粘度は,図から推定される値よりさらに大きいわけです。

炭化水素油の粘度と温度の関係を,完全に理論的(分子運動論)に取り扱うことが試みられていますが難しいのです。次に示すWaltherの実験式が広く用いられています。

  log log (ν+k)=n-mlog T

   ν:動粘度,cSt
   T:絶対温度,k
   k,m,n:油によって定まる定数

この計算式を用いて,任意の温度における動粘度を推定することもできます。また,式より動粘度の対数の対数が,温度の対数に対して右下がりの直線となることも了解されると思います。

粘度指数(Viscosity Index,VI)は,潤滑油の温度による動粘度の変化の度合いを表わす数値です。図3において直線の傾きを意味しています。そして粘度指数の値が大きいほど,温度による動粘度の変化が小さいことを意味しています。VIは経験的なものに基づいて発祥しました。粘度-温度特性の優れたペンシルヴァニア原油の基油をVI=100,粘度-温度特性の劣るガルフコースト原油の基油をVI=0と決め,測定された油がこれら2種類の間のどの位置にくるかを一定の数字で表わすものとして指数が創案されました。

その後,当初の算出方法はVIが100以下の試料油に適用すること(A法)と整理され,VIが100以上の試料油に対してはA法と整合するB法が考案され粘度指数算出方法として規定されています。計算例をここでは述べませんが,動粘度試験方法並びに粘度指数算出方法(JIS K 2283)に計算例付きで詳細に解説がありますので参照して下さい。

3. おわりに

粘度に関連して,圧力‐粘度の関係,せん断強さ‐粘度の関係,分子構造と粘度,粘度のレオロジーなど多くの課題があります。ご研究下さい。

 

<参考文献>
*1 桜井 俊男,岡部 平八郎著 『潤滑・潤滑剤』 日刊工業新聞社,(1961)
*2 『JISハンドブック 石油』日本規格協会,(1991)

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最終更新日:2023年2月10日