混入油除去器 チューブスキマー
水溶性切削液への混入油は,機械の摺動面の潤滑油,加工物に付着した防錆・潤滑油が発生源である。最近の機械によっては,摺動油が液タンクに流れ出ない構造を持ったものや,潤滑油の代わりにグリスを使用している機械もあるが,加工物に付着した油の混入は防ぎようがなく,入った油を除去する以外に方法はない。
混入油の除去としては,オイルスキマーが一般に使用されている。ベルト状や円盤状の油取り器具を液タンク内で回転させ,それに付着した混入油をタンク外に取り出す原理のものである。ベルト式スキマー,円盤式スキマーと呼ばれている。比較的安価であること,取り付けが簡単であることより,油除去には非常に便利である。
ただ,ベルト式・円盤式ともに取り付けのために,タンク液面とその上方に設置可能な空間が必要であり,取り付け・設置上の制約がある。例えば,タンク上面がオープンである大型マシニングセンターでは設置は容易であるが,NC旋盤,複合機,小型マシニングセンターなどのように,切削液タンクの上にすっぽりと機械が乗り,機械を覆った構造のものでは取り付けは難しい。補助タンクを追加設置し,補助タンクにスキマーを設置する方法があるが,コスト面,フロアースペースの問題であまり利用されていない。
このような機械のユーザーでは,切削液の腐敗や悪臭になすすべもなく,交換頻度を頻繁にされているところも多々見られる。環境とコストの無駄である。
このようなタンク密封型の工作機械にも対応できるスキマーとして開発されたのが,米国Zebra社製のチューブスキマーTS900である。基本原理はベルト式・円盤式と同じであるが,その特長としてベルトや円盤の代わりに直径約5mmのビニール製チューブを使用したことである。チューブがタンク内を旋回し,チューブに付着した混入油をタンク外に取り出す仕組みのものである。(図1)
図1 チューブに付着した混入油をタンク外に取り出す仕組み |
チューブを入れることができる小さなすき間(50×100mm程度)さえあれば取り付けが可能で,ほとんどどのような工作機械にも使用できる。本体も75×200×150mm(高さ)とコンパクトで,設置が非常に簡単である。最近の例としては,床設置面積を極小にした最新型超コンパクトNC旋盤にも取り付けることができた。
クーラント用防臭・防腐剤 ブルーフレッシュ
混入油の除去により雑菌の繁殖・増殖はかなり抑えられるが,梅雨や夏場の繁殖しやすい季節では,不十分な場合がある。雑菌そのものに対して何らかの手を打つ必要がある。
雑菌対策としては,殺菌剤が一般的である。雑菌そのものを死滅させるので,効果は劇的である。タンクに殺菌剤を入れることにより雑菌が死滅するとともに,悪臭が消され,pH値も上昇する。切削液の腐敗・悪臭は瞬時におさまる。
ただ,殺菌剤は瞬時の殺菌効果がある一方,それが殺菌剤であるだけに,作業者の健康に対する影響,廃棄時に環境に対する影響など,取り扱いには充分な注意を要する。
殺菌剤と同じような効果を持ちながら,より安全に取り扱えるものとしてZebra社が開発したのが,ブルーフレッシュである。
ブルーフレッシュはホウ素系化合物を主成分にした,直径約50mmの錠剤である。動植物に有害な物質は含んでおらず,取り扱い上の注意は水溶性切削液より簡易で,切削液の取り扱い以上に特に注意を要するものはない。効果としては,殺菌剤と同じように悪臭が消され,pH値が上昇する。切削液の腐敗進行がおさまる。
ただ,殺菌剤と違い,雑菌を死滅させるのでなく,その活動を不活性化させることに特長がある。殺菌剤に比べ,より安全である。ブルーフレッシュは雑菌の増繁殖を抑え,硫化水素の発生を止めることにより,切削液の腐敗・劣化のプロセスを断ち切る。
使用方法はごく簡単である。臭い始めたタンクに1週間から2週間に一度,ブルーフレッシュを100Lあたり1錠,投入するだけである。最近の使用例を表1に示すが,様々な加工環境で効果を上げている。今回は特に,建機メーカーユーザーの集中タンクでの劇的効果を報告する。
集中タンクはタンク最大容量が6,000L,通常3,000Lのエマルジョンが入れられている。機械や集中タンク近辺のみならず,周辺通路でも悪臭がひどく,改善のテーマになっていた。
ブルーフレッシュ5錠を網状の袋に入れ,集中タンクへの切削液還流口にぶら下げたところ,約3日で悪臭が激減した。ブルーフレッシュ投入前後の悪臭の変化を表2に示す。その後,10日に1度ほどブルーフレッシュを網袋に入れるだけで効果は持続している。
表1 ブルーフレッシュ使用事例
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表2 建機メーカーからの使用結果
※臭い確認センサ:ポータブル型ニオイセンサXP-329 |
なお,悪臭の対策として良性のバクテリアを投入した切削液では,バクテリアとブルーフレッシュの効果が相殺されるので,併用は望ましくない。ご注意願いたい。