水溶性切削油剤 交換基準と交換方法 | ジュンツウネット21

水溶性切削油剤の交換方法と注意事項について教えて下さい。

解説します。

1. 液の交換基準

近年,水溶性油剤を使用する製造工場では,生産性を重要視すると同時に経済性ともいえる油剤の液交換期間を常に考えながら使用されているのが現状です。

その理由として,自社に廃液処理設備がないため,業者委託を使用した場合にはその廃液処理費用が液交換に必要な油剤原液の費用を大きく上回ることがあげられます。

 一方,工場側の徹底した液管理効果と油剤メーカーの性能向上への努力によって今日,例えば集中給油タンクでは2~5年,またそれ以上の期間にわたって使用されている工場も多くなってきました。しかし,pHや防錆能などの油剤性能を管理しているにもかかわらず長期間使用した場合には主に,下記a)~c)が問題となり,余儀なく液交換をしなければならなくなります。

[液交換基準]
 a)バクテリアによる腐敗臭の発生,カビによる粘着物の発生
 b)混入油分増加による洗浄性能の低下
 c)タンク内における研切削屑の増加

2. 交換時の原因確認と交換方法

液交換で対象となるタンクとして,機械こどに設置された個別タンク,あるいは複数の機械への給油を目的とした集中給油タンクがありますが,交換準備および交換方法については基本的には同じであります。

(1)液交換に至る原因の確認

まず上記a)~c)のどの原因で液交換をするのかを確認することが大切です。より一層の液寿命延長化を図るためには,その原因に対して油剤メーカを交えて今後の対応策を十分に検討する必要があります。

(2)液交換日の設定および液量確認

あらかじめ交換日を設定し,液量を加工可能,循環可能な量にまで徐々に減量していき交換前日には必要最小限の量にまで減らしておきます。廃液処理費用を考えると廃液量を最小に抑えることが望まれます。次にその時の液量を確認しておき,ドラム缶,タンクなどの回収する容器を用意します。

(3)液交換前日に殺菌剤の添加

特に腐敗臭の発生・粘着物の増加が直接の原因で液を交換する場合には,殺菌剤の添加が望まれます。

バクテリアによる腐敗の発生やカビによる配管内に粘着物の付着などがあると,新液に交換してもすぐにバクテリア・カビが発生しがちです。残存する菌子・胞子を完全に除去するためにも交換日の前日に殺菌剤を添加します。前日終業後に油剤メーカーが推奨する殺菌剤を添加し,数時間程度循環させてタンク内・配管内を十分に殺菌することが重要です。

(4)液の抜き取り作業

集中給油タンクと個々の個別タンクでは使用液の抜き取り作業は若干異なります。集中給油タンクの場合,まず給油先の各サブタンクの抜き取り作業を行います。バキュームポンプで液だけを抜き取りドラム缶などの容器に回収するかメインタンクへ移します。その後,サブタンク内の研切削屑を除去すると同時にペーパーフィルターなどの分離装置内の研切削屑もできる限り除去します。次に集中給油方式のメインタンクについては液量が多いので必然的に業者委託のバキュームカーでの抜き取りとなります。バキュームカーでの抜き取りの場合,たいてい研切削屑も同時に抜き取りますが,残存した研切削屑はサブタンク同様に完全に除去するようにします。

個別タンクの場合もサブタンク同様に行います。一方,同じ個別タンクであってもNC機やMC機のほとんどは,タンクが機械本体に内蔵されており,液の抜き取りも研切削屑の除去作業も困難な場合が非常に多くあります。そのため,長年のうちに研切削屑が多量に堆積している場合やカビによるガム状の粘着物が多量に発生している場合があるので,時間を掛けてでも完全に除去することが重要です。

(5)タンク内・配管内の洗浄

液および研切削屑を完全に除去した後,洗浄剤を用いてタンク内・配管内を洗浄することが望まれます。特にタンク周辺や配管内に付着している混入油分を完全に除去することは,液交換後の油剤洗浄性能を長く維持するためにも重要なことです。このようにタンク内を洗浄することは大切ですが,廃液の量が増えるためどうしても行えない場合には,(3)の個所で殺菌剤と同時に添加して循環させるのも良い方法です。このとき用いる洗浄剤も先の殺菌剤についても油剤メーカと相談のうえ,使用油剤に適合したものを用いることが大切なことです。

(6)希釈水の吸水

タンク内を十分に清掃した後,給水をします。用いる水は水道水を使用することが望まれます。工業用水,井戸水は硬度が高い場合が多いため,それを知らずに用いると油剤の成分である界面活性剤や高級脂肪酸などと反応して水に不溶な金属石鹸を生成する場合があるので注意しなければなりません。また,工業用水,井戸水は水道水のように殺菌されていないのでバクテリアなどの微生物が存在する場合が多く,液の腐敗の原因になりやすいものです。

以上のことから水道水を用いるのが無難であるといえます。しかし,工業用水や井戸水を使用せざるをえない場合には,事前に使用しようとする水の硬度の測定を油剤メーカーに依頼し,金属石鹸が生成する危険性があるかないかを確認し,必要であれば軟水化剤でいったん硬度を下げて使用するか,高硬度用油剤の採用が望まれます。また同時に殺菌剤の添加が必要とされる場合もあります。

(7)原液の添加

タンク容量の半量程度に給水が進んだときに原液を補給します。油剤メーカーが加工条件から設定した希釈濃度になるように算出した量の原液を補給します。規定量まで給水が完了すると均一な希釈液になるように十分に循環させることが大切です。

3. 交換時の注意事項

(1)保護具の着用

研切削屑による切り傷を防止するために,長袖の衣類と手袋を着用します。また,飛散した液から目を保護するためにも保護眼鏡を着用すると同時に,頭部保護のためヘルメットの着用が望まれます。

(2)液の回収

抜き取った液をいったんドラム缶に回収する場合には,むやみに他の廃油と混合しては危険です。急激な発熱やガスが発生する場合があるので十分に注意しなければなりません。

(3)有毒ガス発生の確認

集中給油タンクではタンク内に入り込んで研切削屑を除去する場合には,腐敗等で有毒ガスが発生していることもあるので十分に注意する必要があります。また,タンク内では決して一人で作業せず,必ず複数の人間が目に届くようにして作業します。同時に一人で長時間タンク内に入り込むことも避けるようにします。

(4)緊急時の対応

緊急時の対応に備えるために,交換作業を行う前に油剤メーカーが提供しているMSDSを一読しておくことが望まれます。

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最終更新日:2021年11月4日