ニュートン流体について解説します。流体のせん断応力がせん断変形速度に比例するとき,その流体はニュートン流体と呼ばれます。石油系潤滑油は一般にニュートン流体として扱われますが,グリースは小さなせん断応力では塑性体となり,大きなせん断力では液体となります。
ニュートン流体とは
一般に潤滑油はニュートン流体として扱われる,と本にありました。ニュートン流体とは何でしょうか。分かりやすく解説してください。
解説します。
常識として物質は固体,液体,気体の三種類に分類されることはご存じでしょう。固体は形や体積を容易に変えることができないもので,一方液体は形は簡単に変えられるが,体積は変えにくく,気体は形と体積のいずれも容易に変えられるものとして理解されています。
形を変えやすいということでは液体と気体は共通の性質を持っていると考えられますから,この両方をまとめて流体(Fluid)と呼んでいます。このような流体を一定の速度において形を変えようとすると,これに逆らう作用が流体によって生じることが知られています。流体とはいっても,膨大な種類がありますが,それぞれの持っている抵抗力を粘性(Viscosity)と呼んでいます。
私たちの身近にある空気や水の粘性はきわめて小さいために,粘性のない流体として扱われる場合が多いようですが,工業的に使用する各種の流体においては粘性を無視することはできません。
流体の粘性は単純に図1のようにhの間隔をもった二枚の平行な面の間に流体のある場合を考え,下は固定面,上は速度Uで固定面に対して平行に移動するとして,上面を動かすのに逆らう力を観察することによって知ることができます。
図1 |
図1において下の固定面では流体がそのままの位置を保持しようとしますから速度は0で,上の移動面に付着している流体は速度Uで動こうとします。上面と下面の間では下面からの距離yに比例する速度で運動をすることになります。
上面を動かすのに逆らう力と下面を固定するのに必要な力は等しく,いずれも速度Uに比例し,距離hに反比例します。流体の接触している単位面積についての力τ0は次のようになります。
比例定数μを流体の粘度係数と呼びます。
図1のような状態を実際に作り出すのは,半径の異なる同心円筒の隙間に流体を入れ,一方の円筒を固定し,他を回転することによって可能となります。これは図2のようにクエットという人によって行われたので,図1の流れをクエットの流れといっています。
図2 クエットの実験 |
流体にこのような力が現れるのは,面に対して平行な力が働き,流体の各部分がお互いにすべり合うのを妨げるためです。表面に平行な力の単位面積あたりの作用をせん断応力とすれば上面と下面の隙間にある流体のすべての部分にτ0とおなじ一つのせん断力τが作用していることになります。そこでτは次のように表されます。
つまり,せん断応力がせん断変形速度に比例することを示すわけで,ニュートンによって設定された関係であり,図3のようになってニュートン流体と呼ばれます。この比例関係は気体や低分子の液体(空気,水,グリセリンなど)では正しく成り立ちますが,複雑な成分の液体(コロイド溶液,高分子液体など)では成り立たない場合があります。つまり,非ニュートン流体と呼ばれるわけです。
図3 ニュートン流体 |
石油系潤滑油は一般にニュートン流体として扱われますが,グリースは小さなせん断応力では塑性体となり,大きなせん断力では液体となります。非ニュートン流体には図4から図7のように種々のものが存在します。
図4 擬似粘性流体 |
図5 塑性流体 |
図6 擬似塑性流体 |
図7 ダイラタント流体 |