研削油が砥石に与える影響 | ジュンツウネット21

研削油は砥石の正常な研削作業を助けるものであるといわれていますが,砥石によっては研削油のために損耗が大きくなったり,砥石の結合剤との反応によって砥石の強度が落ちたりすることがあるとのことですが,これらの点を事例をまじえて砥石に与える影響について解説して下さい。

解説します。

研削油剤と砥石の相関関係で,ご質問のような苦情はあってはならない事柄です。

研削作業での研削油剤の役割は主として研削熱の除去ですが,最近のように研削作業の重要性が高まると,研削作業で発生する種々の苦情を何とか研削油剤で防止し得たらという欲求が生まれ,それがさらに研削加工のすべての苦情防止が油剤に依存し得るようにと発展し,油剤の性能向上に関する要求度合いが高まってきました。

元来,研削作業は 1.鋼,鋳鉄,アルミなどの被削材 2.円筒研削,平面研削などの研削方法の種類 3.研削砥石の種類 4.砥石の速度,切込み深さ,送り速度などの研削条件 5.研削油剤の種類,などを因子として成り立っています。研削作業が円滑にその目的を達成するためには,研削作業の各因子間の相互関係が程よく調和し,よい方向に作用し合っていなければなりません。殊に,研削砥石の種類は研削作業の目的に対して,作業の結果を左右する最も重要な因子ですから,研削作業の設定段階で十分に検討しておく必要があります。

研削加工は工具である砥石が中心の作業ですが,研削油剤も砥石との相関性が重視され,研削効率を向上するために選別されており,軽率に取り扱うと作業を阻害します。JIS K2241切削油剤の解説には,5.7 研削油剤の作用と効果,5.8 高速研削における研削油剤について,という条項で研削油剤を詳解しています。

さて,ご質問に答えるために,研削加工における研削油剤の役割を簡単に説明し,それとJISの解説 6.各種油剤の実作業への適用,の補足を加えて研削油剤と砥石との相互関係を明らかにしてみたいと思います。

1. 研削加工における研削油剤の役割

(1)被削材のさびの防止

研削加工直後の被削材表面は活性化しているのでさびやすく,それを研削油剤の持っている金属防錆能がさびの発生を防止しています。

(2)被削材の仕上精度の維持

研削加工は相当な発熱をともなうので熱膨張による過剰研削が行われ,そのため寸法精度の低下が起こります。研削油剤は冷却能によって熱膨張を防止し仕上精度を維持します。

(3)研削焼けの防止

研削焼けは高温が原因で発生するとされていますが,そのために表層部で脱炭をしたり,焼きがもどって硬度の低下をきたしたりします。これを防止するには研削砥石の選定,研削条件のような因子が基本的に重要ですが,研削油剤の熱移送性(冷却能)による効果も期待されます。

(4)研削割れの防止

研削割れは焼入鋼などの研削加工によく見られます。これも基本的には研削砥石や研削条件の選定が重要ですが,研削油剤も割れの防止に役立っています。しかし,研削油剤の選定を誤ると急冷するためになお一層割れが起こりやすくなるので十分な注意が必要です。

(5)研削材表面の残存応力の発生防止

残存応力が被削材の表面に生じますと,表面は変形します。残存応力は砥粒の機械的な切削力や研削熱によって発生しますので,潤滑性や冷却性のある研削油剤を選定します。一般的にはA2種2号が適油として選別されます。

(6)研削砥石の目つぶれと寿命の改善

砥石に目つぶれ現象が生じますと,被削材の表面にビビリが生じたり,焼けが現れます。目つぶれは砥粒の先端が摩滅して平坦になることですが,これを改善するには冷却性と潤滑性の高い研削油剤が有効です。とくに,砥粒や被削材に吸着しやすい極性を持ったもの,または極圧性を持ったものが潤滑性を向上させますと同時に,このような良質の研削油剤は砥石の寿命を改善します。

(7)仕上面粗さの改善

研削油剤は仕上面粗さを改善します。研削油剤は微小なムシレやバリなどをなくし,脱落や破砕した砥粒を速やかに洗い流し,仕上面を傷つけないようにします。すなわち,研削油剤の洗浄性と砥粒の自生作用の助けを借りて仕上げ面の粗さを改善しています。

以上の7項目が研削油剤の重要な第一義的な役割です。その他,臭気,あわ立ち,塗料の剥離,皮膚の刺戟,飛散性などの第二義的な性能も大切であり,一般的には第一義的な性能と同程度の重要さで品質の良否が評価されています。

2. JISの解説6項の補足

研削加工は高速回転をしている研削砥石を用いて,その砥石を構成するきわめて堅い微細な砥粒によって加工物をわずかずつ削り取っていく精密加工法であり,以下の点で切削加工とは,かなり異なっています。

(1)砥石切れ刃が一定の形状を持たず,かつ鈍角であるために研削抵抗が大きい。 (2)切り込みが非常に小さく,比研削抵抗が著しく大きい。 (3)切削速度がきわめて大きく,切削点の温度が高い。 (4)砥粒切れ刃に自生作用がある。 (5)発生熱の分布が異なる。大部分が被削材に移行する。
 など,研削加工はきわめて複雑であり,適用する研削油剤もこれらの事柄を十分に把握して考慮する必要があります。

一般に,研削油剤は潤滑性・浸透性・冷却性などの諸作用によって, (1)砥粒切れ刃の鈍化を遅らせ,摩擦を減少し研削抵抗や摩擦熱の発生を少なくする。 (2)砥粒,切くず結合剤同士の凝着を防止するとともに加工物・砥石接触部の発生熱を速やかに除去する。 (3)加工物の温度上昇を防止し加工精度を向上させる。
 などの働きを示すものとされています。

A1種は通常エマルション型と呼ばれ,一般に浸透性・冷却性に劣りますが潤滑性に優れています。A2種は通常ソリューブルと呼ばれ,一般に浸透性・洗浄性にすぐれ,液が透明であるために作業性がよいという利点があります。

今まで述べてきましたように,研削加工で研削油剤の選定は大切な作業の一つですが,最も大切なことは,与えられた研削作業に対して適切な研削砥石を選定することです・。これは大変難しい作業であり,選定を誤りますと研削砥石や被削材に大きな影響を与えます。たとえ研削油剤が適正でもその効果を期待することはできません。

天然樹脂や人造樹脂を結合剤としたシェラック砥石・レジノイド砥石が研削油剤によって損耗したとすれば,その原因は研削油剤のアルカリ性物質と研削砥石の結合剤である樹脂との化学反応にあると考えられます。

しかし,JIS K2241切削油剤の中で研削加工の適油として選別しています切削油剤,殊に水溶性切削油剤はその品質を表す性状項目中,pHの上限を10.5と規定しています。この数値は,強アルカリ性を避けていますので,樹脂に対する反応性は弱く,JISの規定に合格する研削油剤を選別していれば懸念する現象は皆無と思います。

また,不水溶性切削油剤と水溶性切削油剤のどちらを選ぶかは両者の冷却能の差,すなわち熱膨張の度合の問題であって,この判断基準を誤りますと加工時に熱による影響が生じます。このように研削加工は多くの因子の組み合わせで成り立っていますから,一つ誤りますと因子によって波及効果に差はありますが影響を及ぼします。

殊に,JISの解説6.各種油剤の実作業の適用,に示されている表の中で,研削加工別に適油を選択するための因子として最も大切な研削砥石の種類に関することについては全く触れていませんが,これは前述にように選定が大変に難しいためであって,実際に砥石の選定が適正にできれば研削加工は殆どその目的を達成し得たということができます。

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