グリースの性状や性能を試験する方法 | ジュンツウネット21

グリースの性状や性能を試験する方法にはいろいろあるそうですが,一般によく実施される試験項目を中心に,簡単にご教示下さい。

解説します。

グリースは,鉱油などに増ちょう剤を分散させた半固体または固体状の潤滑剤であり,その特性は非常に複雑です。そのためグリースの性状や性能を評価するにはいろいろな試験方法が用いられます。

グリースの一般的試験方法についてはJIS K 2220に規定されていますが,目的によっては種々の実用性能試験や特殊試験が行われます。

ここではJISに規定され,一般的に行われる試験項目を中心に説明しましょう。

1. ちょう度

ちょう度は,グリースの外観的硬さを表示するもので潤滑油の粘度に相当するものといえます。ちょう度の測定方法には,混和ちょう度,不混和ちょう度,多回混和ちょう度,貯蔵ちょう度,固形ちょう度などがあります。いずれの場合も図1に示すような規定のちょう度計を用いグリース表面に接してつり下げた一定重量の円錘を5秒間グリースに貫入させ,ちょう度計のダイヤルゲージの数値でちょう度を表わし,数字の大きいほど軟らかいことを意味します。

ちょう度計

図1 ちょう度計

ちょう度の分類は,一般にN.L.G.I.(National Lubricating Grease Institute)で規定した数値を基準とし,JISでも表1に示す分類が採用されています。

表1 グリースのちょう度番号
JIS番号
NLGI番号
混和ちょう度(25℃,60W)
000号
No.000
445~475
00号
No.00
400~430
0号
No.0
355~385
1号
No.1
310~340
2号
No.2
265~295
3号
No.3
220~250
4号
No.4
175~205
5号
No.5
130~160
6号
No.6
85~115

2. 滴点試験

グリースは加熱すると軟化し,ある温度に達すると流動状になります。その時の温度を滴点といいます。滴点の測定は,規定の試料容器にグリースをつめ,一定条件で加熱し,試料容器の孔からグリースが軟化して滴下したときの温度を求めるものです。したがって,滴点以上の温度でグリースを使用することは好ましくないことになります。

3. 離油度

離油度試験器組立図(一例)

図2 離油度試験器組立図(一例)

離油度は,静的な条件におけるグリースの油分離傾向を評価するものです。離油度の測定は,図2に示すように円錘型金網を用いたろ過器に試料20gを取り,重量既知のビーカー中につるし,規定温度の恒温槽内に規定時間保ち,そして放冷後ビーカー中の分離油の重量を測定し,試料に対する重量%として求めるものです。

グリースの油分離性が大きいと貯蔵安定性が悪く,軸受などの長期使用に対しても不都合であるが,適度の油分離性は,潤滑効果を向上させるといわれています。

4. 蒸発量

グリースの蒸発量は,グリース中の水分と軽質油分の蒸発減量を重量%で表わしたもので,一般に,低粘度油を原料とするグリースあるいは比較的高い温度で使用するグリースについて,蒸発損失が潤滑性に影響を与えるかどうかを評価するものです。また当然のことながら,蒸発量の少ないグリースほど使用上望ましいといえます。

グリースの蒸発量測定にはA法とB法があり,A法は,試料20gを試料容器にとり,150℃の恒温空気浴中で8時間加熱し,蒸発減量を重量%として算出するものです。一方B法は,200g以下の試料を銅製試料容器にとり,蒸発器中に入れ,そしてこれを規定温度の恒温浴中に浸し,加熱空気を22時間通じ,蒸発減量を重量%として算出するものです。

5. 酸化安定度

酸化安定試験器(一例)

図3 酸化安定試験器(一例)

グリースの酸化安定度は,規定のボンベに試料を入れ,酸素を圧入し,一定時間内に酸素が吸収されて圧力が低下することにより,グリースの酸化による化学的な劣化の度合いを評価する方法で,図3に示すような試験器が用いられます。この試験は主としてグリースを長時間使用した場合の酸化安定性を評価するためのもので,各種ベアリングに薄膜状で付着しているグリースの酸化安定性などの評価に応用されます。またグリースの酸化安定性を向上させるためには酸化防止剤が添加されます。

6. 銅板腐食

この試験は,研磨した規定の銅片にグリースを塗布して,銅片やグリースの腐食や変色の程度を評価するものです。室温,24時間で行うA法と,100℃,規定時間で行うB法の2つの方法があります。

グリースによる腐食は,グリース中の酸性物質や酸化劣化による酸化生成物,あるいは腐食性イオウなどによってひきおこされます。

7. 混和安定度

混和安定度は,規定の混和器(ちょう度測定時に用いる試料容器)にグリースを充てんし,有孔板を用いて10万回混和する。その後25℃に保持したのち,さらに60回混和して,ちょう度を測定するものです。この試験は,試験前のちょう度測定結果と対比させて,グリースの軟化(硬化)傾向を評価するものですが,実際には,グリースが非常に複雑な状態で使用されていることが多く,実機との相関はあまりないといわれています。

8. その他の試験

そのほか,グリース中に含まれるきょう雑物の測定,水により洗い流されることに対する抵抗性を評価する水洗耐水度,ベアリングからの漏えい量等を評価する漏えい試験,さらに耐荷重能を評価するチムケン試験や防錆試験など数多くの試験があります。

また,上記のような物理,化学的試験だけでは,グリースの潤滑性能は十分評価できません。そこで実際の軸受を用いた軸受性能試験が行われています。軸受性能試験についてはASTM性能試験などが一般によく使用されていますが,グリースの使用条件が複雑であるため,各種の試験機を用いて需要家独自の試験方法で行っていることが多いようです。

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最終更新日:2021年11月5日