水と油はどうすれば混ざり合うか | ジュンツウネット21

油と水との混合であるエマルション形潤滑油剤について解説します。鉱油の潤滑性に,水の冷却性や不燃性を加えようとを考えたのが,水の中に油を細かく粒子にして分散させる,あるいは油の中に水の粒子を分散させる方法で,O/W型エマルションとかW/O型エマルションとかよばれるものです。

水と油はどうすれば混ざり合うか

HWBF,W/O,O/W型の水系作動液が使われていますが,ほとんどが油と水との混合でエマルション形になっています。このように,なぜ水や油を単体で用いずエマルションにしているのですか。その理由とエマルションにする利点,油と水を混合させる方法について解説してください。
解説します。

エマルション

熱間圧延装置に使う潤滑油や高速切削に使用する切削油のように,本来の潤滑性と同時に火災防止の立場から不燃性や冷却性が要求される場合があります。このようなときに,従来の鉱油系に替わって使われだしたのが,水系の潤滑油剤です。

水はまず燃える心配がなく,比熱が鉱油に比べ約2倍以上あり冷却性にすぐれています。(表1表2

表1 鉱油の特性
 
温度(℃)
20
40
60
80
100
項目  
比重
0.876
0.863
0.850
0.837
0.824
動粘度ν(cSt)
82.0
29.5
14.5
8.0
5.0
比熱 0.45(kcal/kgf・℃)
熱伝導率 0.11(kcal/m・h・℃)
表2 水の特性
 
温度(℃)
20
40
60
80
100
項目  
比重
0.998
0.992
0.983
0.972
0.958
動粘度ν(cSt)
1.004
0.658
0.475
0.365
0.295
比熱 1.0(kcal/kgf・℃)
熱伝導率 0.53(kcal/m・h・℃)

加えて,なにより水は入手しやすく価格が安いという経済性のメリットをもっている点が魅力です。しかし,実際は,水は鉱油に比べ潤滑性が劣り,使用時に十分な膜厚さが得られないため,金属接触を起こしやすく,水単体で使用するには無理があります。鉱油の潤滑性を生かしながらなんとか水のもつ冷却性や不燃性を加えることができないものかということで考えられたのが,水の中に油を細かく粒子にして分散させる,あるいはこの逆に油の中に水の粒子を分散させる方法です。これが,O/W型(Oil in Water:水中油滴型)エマルションとかW/O型(Water in Oil:油中水滴型)エマルションとかよばれるものです(図1)。

O/W型,W/O型エマルション
図1 O/W型,W/O型エマルション

W/Oエマルションは水30~45%を含み,他は鉱油および油溶性の各種添加剤を含む油分です。HWBF(High Water Base Fluid)は90~95%が水分で,それ以外が油分あるいは他の物質からできている作動液ですので,どちらかというとO/W型エマルションもこれに含めてという場合があります。よく仲の悪いことを「あの二人は水と油だ」というように,本来水と油とは溶合いません。しかし,このようにどちらかを粒子にして分散しておけば,互いに溶け合わなくともうまく共存させることで,それぞれの欠点を補い長所を生かすことができるわけです。

さてここで,水中に油の粒子(あるいは油中に水の粒子)を均一に分散させておくにはどのような方法がとられているのでしょうか。水と油を混合し強く振とうするだけで白濁しますが,直ちに水と油の2相に分離してしまいます(図2)。そこで,粒子を安定な状態でエマルションにしておくために,添加剤の助けを借ります。これが乳化剤です。

水と油の関係
図2 水と油の関係

乳化剤は一種の界面活性剤で,HLB価によって界面活性剤の使用上の一つの目安が与えられています(図3)。HLB価とはアメリカのアトラスケミカルカンパニーのグリフィン氏が発表した方法で,Hydrophilic(親水性),Lipophylic(親油性),Balanceの略です。分子内の親水性部分と親油性部分との釣り合いを意味し,油の種類に応じて適したHLB価の界面活性剤が使われます。図4に界面活性剤の分子モデル,表3表4に代表的な界面活性剤のHLB価と所要HLB価を示します。

界面活性剤のHLB価と作用
図3 界面活性剤のHLB価と作用
界面活性剤の分子モデル
図4 界面活性剤の分子モデル
表3 代表的な界面活性剤のHLB価
品名
HLB価
ソルビタントリオレート
1.8
ソルビタンモノステアレート
3.8
ソルビタンモノラウレート
8.6
トリエタノールアミンオレート
12
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート
15
オレイン酸ナトリウム
18
セチル-エチル-モルホリニウムエトサルフェート
25-30
表4 所要HLB価
油相
所要HLB価
乳化
可溶化
W/O
O/W
 
ベンジン
-
13
-
ナフサ
-
13
-
ケロシン
6~9
12~14
-
60スピンドル油
-
12~14
-
マシン油
-
10~13
-
鉱油(軽質)
4
10
15.5
鉱油(重質)
4
10~12
-
ペトロラタム
4
10.5
-
流動パラフィン
6~9
12~14
-
固形パラフィン
-
11~13
-
ワセリン
-
10~13
-
アスファルト
-
12~14
-
動植物油脂
-
7~9
-
ラノリン
8
15
-

このように,たとえばO/W型エマルションの原液を水に入れて撹拌すると,あたかも油が水に溶解していくような感じで溶け込んでいきますが,実際は油が水に溶け込んでいるのではなく,乳化剤の働きにより水中に油が細かい粒子に分散して均一な相,連続相を形成しているのです(図1)。一般にエマルションとよばれるものは,粒子が投射光を反射するのに十分な大きさをもつために光の乱反射により乳白色に見えます。これに対し,マイクロエマルションやソリューブル形がわずか濁った半透明になっているのは,その粒子が非常に小さく,投射光をほとんど通過させてしまうからです。

ところで,潤滑性と冷却性を同時に与える方法としては,以上のエマルション形やHWBFのほか,とくに難燃性作動油として利用されている水-グリコール系やりん酸エステル系などがあります。この中でエマルション形やHWBFが好んで使われる第一の理由は,水-グリコール系やりん酸エステル系に比べ価格が安いという点でしょう。とくに,最近話題になっているHWBFはアメリカ自動車メーカーを中心にすでに採用されています。これも9割以上が水で構成されていることから,不燃性でかつ低価格という点で注目されているためです。

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最終更新日:2019年8月8日