チムケン試験 のOK荷重とは | ジュンツウネット21

潤滑油の極圧性能および耐摩耗性を評価するために使用されているチムケン試験は,JIS規格をはじめASTM規格,Federal規格,IP規格(Institute of Petroleum)に採用されています。ここではチムケン試験の試験方法,信頼性,OK荷重と実用性能,チムケン試験とその他の摩耗試験との関係などについて概説します。

チムケン試験のOK荷重とは ※

ギヤ油などの実験室評価の一つとして,チムケン試験によるOK荷重が40Lbなどと表示されますが,チムケン試験によるOK荷重とは何を意味するものか,その試験方法やOK荷重と実用性能,測定値の信頼性などについて説明して下さい。なお,チムケン試験機の他への応用試験などについても触れていただければ幸いです。
解説します。

潤滑油の極圧性能および耐摩耗性を評価するために使用されている耐荷重能試験には,接触圧力の高い(20,000~60,000kgfcm2)点接触の四球試験,接触圧力が四球試験の10分の1と低い(1,000~6,000kgf/cm2)線接触のチムケン試験やファレックス試験,接触圧力がさらに低い(1,000kgf/cm2以下)面接触のアルメン試験など数多くの試験が実施されています。

なかでも,チムケン試験はJIS規格をはじめASTM規格,Federal規格(Federal Specifications and Standards),IP規格(Institute of Petroleum)に採用されており,四球試験と同様に広く利用されています。

一方,工業用ギヤー油のチムケンOK荷重(以下OK荷重とする)としては,AGMA(American Gear Manufacturers Assosiation)規格の45lb(60lbの改訂案を提示中),U.S.Steel社規格の60lbなどがあり,わが国では,JIS規格(JIS K 2219)の工業用2種(一般機械,圧延機などの中重荷重の密閉ギヤー用)に採用されていますが,OK荷重は特に規定していません。自動車用ギヤー油では,厳しい潤滑条件下にある後車軸受の潤滑性を評価する実車試験が,米国のMIL規格(Military Specification)に採用されていますが,OK荷重の採用はほとんどありません。

ここではチムケン試験の試験方法,信頼性,OK荷重と実用性能,チムケン試験とその他の摩耗試験との関係などについて概説します。

1. 試験方法

JIS K 2519の耐荷重能試験のなかに標準化されているチムケン試験は,図1に示すようなカップ(幅13.1,直径49.1mmのリング)とブロック(幅12.3,長さ19.1mmの面をもつ直方体)を線接触させ,転がりを含まない単純すべり機構を評価する方法であり,その試験方法の概要は試料2.8L(耐荷重能試験のなかでは試料が多い)を試験槽に入れ,40℃まで加熱し,試料を試験片に2.3L/minの割合で供給し,循環使用します。

試験片形状
図1 試験片形状

荷重は,レバーの一端に重錘をのせ,ブロック面下部より上方向に荷重をかけ,30秒間無負荷運転した後,負荷速度が2~3lb/secになるように自動負荷装置を始動させ,一定荷重にし,回転軸に取り付けたカップを800rpmで10分間回転させます。その後,ブロックを取りはずし,ブロック面にスコーリング(焼付き)が生じていないか観察し,スコーリングが発生しない最大荷重をもってOK荷重とします。

JIS規格では,OK値と表示しますがここでは一般に広く使用されているOK荷重を使用します。JIS規格のOK荷重は30lb以上では5lbの倍数で,30lb未満では3lbの倍数で表示します。なお,試験片はカップおよびブロックともロックウェル硬度が58~62の浸炭焼入鋼で,表面粗さを0.5~0.8ミクロンに精密仕上げしています。JIS規格の試験方法は,ASTM規格およびその他の規格のものとほぼ同様で,試料油温度が異なるだけです。上記以外の試験方法に,カップの回転数を800rpmから3,600rpmに変更した高速チムケン試験がFord社で採用されています。

2. 試験の信頼性

一般に,耐荷重能試験は試料油の温度,試験機の組み立て時の摩擦面状態での変動,試料油への気泡の混入さらには湿度などの雰囲気の影響などがあり,試験精度については明確な規格は少なく,JIS規格でもOK荷重の精度を規定していません。しかし,ASTM規格では繰り返し性は2回の平均値の22%以内であること,再現性は平均値の55%以内であることと規定しているものの,信頼性の幅はかなり広く見積もっています。

しかしながら,同一試験機による一連の耐摩耗性に関する研究や潤滑油の品質管理などに使用する場合には,おおむねJIS規格のOK荷重が1ランク上または下にずれる程度で,信頼性はかなり向上します。

3. OK荷重で実用性能を予測できるか

ギヤー油の要求性能としては,耐荷重能,酸化安定性,水分散性,腐食防止性,消泡性,低温流動性などがあり,なかでも耐荷重能に関するトラブルは機械の損傷につながるため最も重要な性能の一つです。ただし,ギヤー油の要求性能を耐荷重能で評価することは,はなはだむずかしく,図2に示すように,自動車ギヤー油の品質レベルおよび添加剤タイプを変更するとOK荷重に値にかなりの差が生じ,同一添加剤の増量による品質レベルの向上では品質レベル間でOK荷重の値にほとんど差が生じません。

ギヤー油品質レベルとOK荷重との関係
図2 ギヤー油品質レベルとOK荷重との関係

また,OK荷重とOK荷重における平均接触圧力(以下,接触圧力とする)との関係は,表1に示すように,ギヤー油に使用する添加剤タイプにより,OK荷重と接触圧力とはかならずしも比例しなく,一例としてOK荷重が低く,接触圧力が高いS-P系,OK荷重が高く,接触圧力が低いPb-S系,OK荷重と接触圧力の両方とも高いBのホウ素系があり,実機使用においては,接触圧力もかなり広範囲に渡っており,単純にOK荷重が高いからといって実用性能も良いと推定することはむずかしいことです。すなわち,OK荷重を高くすることにより,逆に,ギヤー油の他の要求性能を低下させることもあるからです。

表1 OK荷重と接触圧力との関係
ギヤー油
OK荷重(1b)
接触圧力(kgf/cm2
S-P系
55
1400
Pb-S系
70
1100
B系
100以上
3000

しかしながら,使用油の耐荷重能の変動をOK荷重で,品質管理することは可能であり,一般に広く行われています。また,Ford社で開発した高速チムケン試験とギヤー歯面のスコーリング割合とは図3に示すように,同一添加剤でCRC(Coodinating Reserch Council)添加剤濃度を上げていくと,OK荷重とギヤ歯面のスコーリング割合とは良い相関関係にあります。

高速チムケン試験と実車試験のスコーリング割合との関係
図3 高速チムケン試験と実車試験のスコーリング割合との関係

しかし,チムケン試験を800rpmで実施した場合には,CRC添加剤濃度が2.5%以上になってもOK荷重は40lbのままであり,OK荷重とギヤー歯面のスコーリング割合との相関は全く認められませんでした。このように,チムケン試験の試験条件を変更することにより,OK荷重と実用性能との相関関係を見出すことも可能です。

4. チムケン試験で他の摩耗試験を代用できるか

耐荷重能試験には,点接触のように境界潤滑領域,線接触のように混合潤滑領域,面接触のように流体潤滑領域を評価する3つの方法があり,線接触のチムケン試験により,他の摩耗試験を代用することは不可能です。すなわち,チムケン試験で効果のある添加剤は他の摩耗試験では逆に効果のないこともあり,実機の耐荷重能レベルがどのレベルに入るかを充分検討して,摩耗試験を選択する必要があり,複数の摩耗試験により実機の耐荷重能を評価する必要があります。

 

※本稿はQ&A第1集発刊時点の情報に基づいて作成されています。

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