油圧装置の事故はほとんど作動油の汚れが原因だと聞きました。いろいろとフィルターをつけて対策をとったのですが,フィルターのつまりが激しかったり,サクションフィルターが壊れてしまったりして安定しません。作動油を常にきれいにして,安定して運転する方法を教えてください。
解説します。
油圧作動油の汚れ防止対策について
まず,汚れない対策をとってください。その上で,もし万が一汚れたときのことを考えてフィルターを設置することになります。
汚れの侵入が予想されるところは
(1)タンクへの補給の際の不注意
(2)タンクのふたが不完全
(3)タンクの空気抜き口のすきま
(4)ポンプグランド部のすきま
(5)配管・ホース継手
(6)シリンダーピストンロッド
(7)シリンダーグランド
(8)補修工事の際の不注意
(9)ポンプ,シリンダー各部の摩耗粉
(10)作動油の劣化物
などいろいろ考えられます。
対策としては,常に油圧装置の周辺を清掃してきれいにすること,工事などで設備を分解する時は,環境を良くし,丁寧に仕事をし,ごみが入らないよう細心の注意を払うことです。
次にフィルターで汚れをとる方法を説明します。
油圧装置には始めから,基本的なフィルターは設置されております。
(1)サクションフィルター
ポンプサクション側に取り付けるものですが,詰まった場合はポンプおよびサクション配管の継手から空気を吸い込んだり,フィルターが壊れて,その破片がポンプに入り込んだりしてポンプを破壊する恐れがあります。
これを防ぐ方法はタンク全体をフィルターにして,汚れたものはサクションパイプに送らないようにする。サクションフィルターの網目は粗いものにして,間違って大きなものをタンク内に落とした場合,これを防ぐ程度にとどめることです。
(2)圧力ラインフィルター
ポンプ出側の圧力ラインに取り付けられているものです。これについてもフィルターの目詰まりは油圧回路に大きな影響を与えます。フィルターの差圧チェックは,メンテナンスの重要項目であります。
警報を出したり,一時避難を考えてバイパス回路を取り付けたり,構造的対策をとってください。
(3)リターンラインフィルター・ブリードオフラインフィルター
システム中で発生したコンタミナントをタンクに戻さないためのものですが,これも目詰まりすると戻りラインに逆圧がかかる恐れがあり,メンテナンスが大切です。
以上,主なものを挙げましたが,その他にもいろいろとフィルターを設置してライン中に発生する汚染物質を,取り除く工夫がしてあります。これらを基本ルールにしたがってメンテナンスしてゆくことが大切です。
しかし,いずれのケースも,ごみを取るということにのみに目を向けた対策は危険です。それにより別のトラブルが発生することがあります。
そこで考え方を変えた方法を紹介します。この考え方では汚染物質はポンプには送らない,したがって,ライン中では細かいごみをとるためのフィルターは設置しないというものです。
ひとつには戻りタンクとサクションタンクを別にして,サクションタンクはタンク全体をフィルターにするという方法です。
次に図1に示す部分循環によるオフラインフィルターの設置です。これは簡単で,非常に有効です。フィルターにはいろいろなものがありますので,メーカーに相談してください。
図1 部分循環による浄化方法 |