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潤滑油の試験項目

潤滑油は使用時間とともに,酸化や熱的劣化,機械的せん断,ごみ,水分,金属粉などの異物の混入による汚損などで劣化が進行し,この劣化があるレベル以上に達すると異常摩耗,焼付き,作動不良など種々のトラブルを誘発する。このため潤滑管理では使用油の劣化状況をJIS法など種々の測定法で把握している。

色相(ASTM 色) JIS K2580

試料量:50mL
単位・表示:0.5~8.0

測定

ASTM色試験器で行う。人工昼光色光源部を点灯させ,ASTM色標準ガラス(0.5~8,0,0.5刻み)と試料の色を測定し,両者の色が一致した標準ガラスの数値を試料油のASTM色とする。また,試料の色が標準色の中間にある場合は濃い方の標準ガラスの数値の前にLをつけて表示する。

適用

各種潤滑油など

意義

潤滑油は使用時間とともに酸化などの劣化が進み色相が低下(濃色化)する傾向があることから,潤滑油劣化の簡便な目安として用いられている。

潤滑油の一般性状における色相に関する試験機器

動粘度 JIS K2283

試料量:50mL
単位・表示:mm2/s

測定

一定容量の液体(例えば潤滑油)が,厳密に管理された温度条件下で粘度計(例えばキャノン-フェンスケ型)の毛細管を自然流下するに要した時間(秒:絶対粘度)を測定する。絶対粘度を試料密度で割った値が動粘度で,一般に測定流出時間(秒)と粘度計の構成係数の積で算出する。

適用

石油製品全般

意義

潤滑油で最も重要な特性の一つで,適油選定では潤滑油の油膜厚さが適正に保持できるか否かを判断する重要な項目である。例えば,油圧油の場合,動粘度が高いと油温度の異常な上昇,始動不良などの原因となり,低すぎると油膜強度不足による異常摩耗が発生するなど,動粘度は使用油の使用の可否判断の重要な指針になっている。

潤滑油の一般性状における動粘度に関する試験機器

粘度指数 JIS K2283

算出

40℃と100℃の動粘度より計算(JIS法やASTMDS39B)で算出する。

適用

石油製品全般

意義

一般に石油製品の粘度は温度が高くなると小さくなるが,粘度指数は温度により粘度がどの程度変化するかの指標で,数値が大きいほど温度による粘度変化が少ないことを示している。

潤滑油の一般性状における動粘度・粘度指数に関する試験機器

中和価 酸価・塩基価 JIS K2501

試料量:50mL
単位・表示:mgKOH/g

測定

中和価には酸価,強酸価,塩基価および強塩基価があり,試料1gに含まれる酸性および塩基性成分の量に相当する水酸化カリウムのmg数で表され,酸価と塩基価が多用されている。測定は試料を所定のガラス容器に採取し,溶剤(トルエン/2-プロパノール/水(5/5/0.05Vol 比))に溶かして中和滴定して算出する。中和方法はP-ナフトールベンゼイン指示薬法(酸価の測定:ビューレットによる滴定)と電位差滴定法(ガラス電極と比較電極を備えた中和価試験器)による酸価および塩基価の測定があり,いずれも酸価は水酸化カリウム,塩基価は塩酸のそれぞれ2-プロパノール標準液で中和して算出する。

適用

潤滑油全般

意義

中和価は潤滑油の劣化の程度を知るための重要な値で,酸価は潤滑油などが酸化劣化して生成した酸性物質の量を示している。また,塩基価は油中に混入する酸性物質を中和するために添加されている塩基成分の現在(残存)量を示す値であり,いずれも潤滑油の劣化状況を把握し,継続使用の可否を決める重要な数値である。

潤滑油の一般性状における酸価に関する試験機器

潤滑油の一般性状における塩基価に関する試験機器

引火点 JIS K2265

試料量:200mL
単位・表示:℃

測定

規定条件で試料を加熱して小さな炎を近づけたとき,油蒸気と空気の混合気体が閃光を発して瞬間的に燃焼する試料の最低の温度が引火点で,燃料油はタグ密閉式(タグ密閉式は引火点90℃以下の試料に適用),潤滑油の測定には密閉式(ペンスキーマルテンス(PM)と開放式(クリーブランド〈COC〉)が用いられている。

適用

石油製品全般

意義

消防法上で危険物の分類に用いられており,石油製品全般の安全管理面で最も重視される性状の一つである。使用油,例えばエンジン油などでは燃料油など軽質油の混入の目安になっている。

潤滑油の一般性状における引火点に関する試験機器

流動点 JIS K2269

試料量:100mL
単位・表示:℃

測定

試料が流動する最低の温度で,0℃を基点とし2.5℃の整数倍で表す。所定のガラス試験管に試料45mLを採取し,所定の位置に温度計を設置した後,冷却浴(例えば-34.5℃)で冷却し,試料温度が2.5℃下がるごとに冷却浴から試験管を取り出し,試料が5秒間全く動かなくなったときの温度を読み取り,この温度に2.5℃を加えて流動点とする。

適用

石油製品全般

意義

製品の流動性の目安(低温流動性)となり,寒冷地,あるいは冷凍関係用の潤滑油では特に重要な性質である。

その他(流動点,ペンタン不溶解分など)の潤滑油の一般性状に関する試験機器

水分 JIS K2275

試料量:蒸留法 250mL,KF法 20mL
単位・表示:Vol%,mass%

測定

測定法に蒸留法とカールフィッシャー式法(KF法,電量および容量滴定法)があり,含有水分量により使い分けている。蒸留法は所定の蒸留フラスコに試料と水に不溶な溶剤(例えば,キシレン・トルエン混合液)を入れ,加熱,還流し,留出した水を検水管に集め計量して試料中の水分を求める。KF法は外気と遮断した滴定フラスコに試料を採取し,混合溶剤(例えばメタノール/クロロフォルム(1/4容量比)で溶解させた後,カールフィッシャー試薬で滴定し水分を求める。KF法は,水分以外に測定試薬と反応する成分を含んだ試料では測定値がプラスに大きく偏るので注意が必要である。

適用

石油製品全般(蒸留法:0.05% 以上,KF法:石油製品:20ppm以上)

意義

水分は使用油(グリースや乳化油など特殊な油種を除く)を乳化(懸濁)させ,発錆の原因となり,低温では濾過器を詰まらせる。また,潤滑油の酸化を促進させ,油膜切れによる潤滑不良を起こすことから,水分はトラブルを予知し,未然に防ぐための重要な項目である。

潤滑油の汚染・劣化における水分に関する試験機器

ペンタン不溶解分 ASTM D 893

試料量:50mL
単位・表示:mass%

測定

遠心分離管に潤滑油(10±0.1g)を採取し,溶剤を加えて100mLにして均一に溶解する。その後,遠心分離処理(相対遠心力600~700G×20min)し上澄み液を除去し不溶分を分離する。この脱油操作を数回繰り返し,不溶分を乾燥させ重量を計測する。A法は,使用溶剤がペンタンやトルエンで,それぞれ使用溶剤の不溶分として表示する。B法は,A法で補足した不溶分に加え,A法で捕捉できない添加剤で分散されたすすや高分子量の酸化生成物などを沈降させるため,ペンタン-凝集剤溶液(n-ブチルジエタノールアミン,イソプロピルアルコール各5%/ペンタン溶液)で処理して清浄分散性能(すすなどの不溶分を油中に分散せせる力)排除したときの不溶分である。

適用

使用潤滑油全般

意義

燃焼生成物やスラッジ,金属摩耗粉などは油中に不溶分として存在する。この不溶分が増加すると粘度の上昇,潤滑系統の清浄性の悪化,フィルター目詰まり,リング膠着など種々のトラブルを誘発する。また,A法は清浄分散剤の働きによりスラッジが油中に分散された状態にあり,清浄分散剤の働きを排除したB 法より数値は小さめで,A法とB法の差は残存する分散性能の目安として用いられる。

その他(流動点,ペンタン不溶解分など)の潤滑油の一般性状に関する試験機器

汚染度:質量法 JIS B 9931 汚染度:計数法 JIS B 9930

試料量:250mL
単位・表示:mg/100mL,NAS等級 00,0,1~12

質量法の測定

ガラス製の吸引ろ過装置に測定用薄膜フィルター(直径47mm,孔径0.8μm)を装着し,秤量した試料(通常100mL)を大量の石油エーテルを加えながらろ過し,不溶分を捕捉する。石油エーテルで完全に脱油した後,イソプロピルアルコールで脱水し,乾燥後,捕集物を計量する。

計数法(目視,自動)の測定

一辺に3.1mmの格子が印刷されたフィルターを用いる以外,基本的な操作は質量法と同じである。捕捉した不溶分(粒子)の粒径を顕微鏡で観察し,粒径5以上15未満,15以上25未満,25以上50未満,50以上100未満,または100以上および長さ100以上の繊維状粒子(以上,単位μm)に区分しそれぞれの個数を計測する。

適用

質量法;鉱油系作動油,各種液体
計数法;油圧作動油(粒径5μm以上の粒子計測)

意義

油圧油で不溶分(コンタミナント;粒子,夾雑物の総称)が増加すると,各種摺動部でのカジリ,作動不良,フィルタ目詰まり,給油不足による各種トラブルが頻発するようになる。このため,油圧油では汚損管理が最も重要な管理項目の一つになっている。

潤滑油の汚染・劣化における汚染粒子に関する試験機器

灰分および硫酸灰分 JIS K2272,JIS K2220

試料量:150mL
単位・表示:mass%

測定

磁製坩堝に精秤した試料(100g以下)を加熱し一定の状態で燃焼させる。坩堝の内容物を炭素質物質とした後,電気炉(775±25℃)で炭素質物質が完全になくなるまで加熱する。次いでデシケーター内で室温まで放冷し質量を計測する。この操作を繰り返し,恒量とした残留物が灰分である。硫酸灰分は試料を燃焼させて灰と炭素質物質とし硫酸で処理し775℃で加熱した後,放冷,恒量とした時の残留物(主として金属硫酸塩)である。潤滑油では簡便法として元素分析(ICP)より計算で算出する方法も使われている。

適用

燃料,潤滑油など

意義

潤滑油の灰分(硫酸灰分)は無機物質で主に金属酸化物(金属硫酸塩)として計測されることから金属系添加剤の概略の量や金属摩耗粉など無機異物の混入量の目安として用いられ,一般にエンジン油では硫酸灰分が用いられている。

油分析,油中金属分析における各種クロマトグラフィー(添加剤分析など)に関する試験機器

泡立ち(潤滑油) JIS K2518

単位・表示:mL

測定

試料(S I :190mL,S II :180mL)を所定のシリンダー(L480,φ65mm,目盛0~1,000mL,目量10mL)に入れ規定温度(24および93.5℃)に加温する。次いでディヒューザストーン(結晶アルミナ粒子を溶融した多孔質吹き込み口)付き空気導入管をシリンダー底面に接するように取り付け,空気を吹き込む(流量94mL/min×5min)。通気を止めた直後の泡の量を10mL単位で読み取り(泡立ち度),10分間放置後の泡の量を泡安定度とする。試験温度によりシーケンスI (24℃),II (93.5℃)とIII (II 試験油が完全に消泡後24℃で試験)がある。

 表示例(シーケンスI ):泡立ち度/泡安定度=450/30mL

適用

潤滑油全般

意義

潤滑油は泡立ちが多くなると酸化劣化が促進される。また,泡の量が多くなると油がタンクから溢れたり,潤滑部では油膜切れ,気泡の破壊による局所的な高い衝撃圧力による表面損傷などのトラブルが発生する。このため潤滑油では消泡性を高めるために種々の添加剤が用いられており,使用油ではこの消泡性能がどの程度維持されているかを知るための重要な指標になっている。

潤滑油の汚染・劣化におけるあわ立ち性能に関する試験機器

金属分析(ICP) JPI-5S-38-92(溶剤希釈法など)

単位・表示:mass ppm

測定

高温のアルゴンプラズマを励起源とする発光分光分析法で,試料に電気的(高周波),熱的エネルギー(プラズマ)を与えることにより発光させ,放射された光を分光して元素特有の光(スペクトル線)の有無と強度を測定することにより定性,定量分析を行う。この方法は5分程度で多元素(~20程度)を同時に測定できるが,分析対象は溶液で,固体試料の場合は酸などで処理し溶液にする必要がある。

適用

石油製品全般,スラッジなど固形物

意義

潤滑油中の金属含有量(添加剤,金属摩耗粉,さび,塵埃など)を把握し,また,鉄,クロムなどの種類と濃度より機械の摩耗部位(摺動面)の推定や摩耗の程度を予測することができる。

油分析,油中金属分析における各種分光分析(金属分)に関する試験機器

グリースの金属含有量(鉄,銅など)に関する試験機器

エネルギー分散型蛍光X線分析(Energy Dispersive X-ray Spectrometry:EDS)

試料量:液体 10mL,固体 0.3g
単位・表示:定性,定量

測定

試料(物質)にX線を照射すると光電子が放出され,その際に生じる電子の状態変化(励起-基底)に伴い電磁波(蛍光X線)を放出する。この電磁波の持つ波長とエネルギーは元素固有のもので,EDSは放出された電磁波を半導体検出器でエネルギー別に分けて各元素を分析する方法で,固体や液体など試料形態を問わず,短時間で任意の多元素を同時に定性,定量できる非破壊分析法の代表的な方法である。

適用

石油製品全般,スラッジなど固形物

意義

簡単な操作で液体,固体を問わず金属,塩素,硫黄などの分析ができ,溶液化し難いスラッジなど固体の由来を明らかにする上で欠かせない分析で,試料を損なうことなく他の分析に供することができる。

油分析,油中金属分析における各種分光分析(金属分)に関する試験機器

グリースの金属含有量(鉄,銅など)に関する試験機器

摩耗粉分析(フェログラフィー)

単位・表示:異常摩耗係数(Is)など

測定

フェログラフィーは磁石上に試料を流し磁力と重力の作用で摩耗粉などを捕集し,溶剤で油分などを除去した後,捕集粒子を識別する方法である。潤滑油中の摩耗粉や混入異物をスライドガラス上に配列させ,それらの粒子の形,大きさ,色などを顕微鏡で観察する分析フェログラフィーとチューブ(プリシビテータチューブ)に使用油を流し油中に含まれる大きな粒子(5μm以上)と小さな粒子(2μm以下)の濃度を透過光で調べる定量フェログラフィーがある。

適用

潤滑油(油中の金属摩耗粉,塵埃など固形物の形態的特徴把握)

意義

潤滑油中の金属摩耗粉がどんなタイプの粒子でどのくらい存在するかを調べることにより,その機械の摩耗状態を診断することができる。本法の最大の強みは異常摩耗分をいち早く検出することで,機械の故障を予知できることである。また,磁性を持たない粒子についてもマスキング処理などで分析することができる。

その他(N・S分析など)の油分析,油中金属分析に関する試験機器

赤外吸収スペクトル分析(IR)

単位・表示:化合物の同定

測定

物質(分子)はそれぞれ固有の振動をしており,赤外線を照射すると分子の固有振動と同じ波長の赤外線が吸収され物質特有のスペクトルを得ることができる。IRはこのスペクトルより成分を特定する分析法で,すべての有機物と多くの無機物を分析できる。一般に気体,液体はNaCl 結晶セルで,固体はKBr粉末で錠剤として測定する。また,定量分析は対象となる成分特有のスペクトルの強度と濃度の関係から含有量を求める。

適用

気体,液体,固体(赤外線吸収スペクトルを有する物質)

意義

試料の成分を同定(特定)し,定量することができる。データの採取は簡単で,グリースを含めた潤滑油剤のタイプ分析,添加剤分析(定性,定量),異物の分析など,試料がどのような化合物であるかを知るための最も有用な分析である。

その他(N・S分析など)の油分析,油中金属分析に関する試験機器

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