減速機をたくさん使っておりますが,給油量や油浴式の場合の貯油量に関して,それぞれ担当者の経験でまちまちです。正しい量を教えてください。
解説します。
それぞれ運転されている環境が違いますので,これで十分だと決まったものはないと思いますが,次の事例を参考にしてください。
(1)給油量の簡易指針よく使われる歯車周速10~20m/secの場合,歯車と軸受けに供給すべき油量は,次式と表1からおおよその値を求めることができます。
Qt=Qg・W+Qb・Nb
ここで,
Qt:供給油量(L/min)
Qg:歯面への供給油量(L/min)
Qb:軸受への供給油量(L/min)
W:歯幅の総和(cm)
Nb:軸受の数(個所)
表1 歯車,軸受への給油量
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(2)油浴式および封入式の必要油量油浴方式においては,取扱説明書の指示に従ってください。一般には油面計がついておりますので,指示目盛まで潤滑油を入れます。しかし,一度運転して油面が守られていることを確認してください。
封入方式の場合は必要量を取扱説明書に従ってください。
ギヤカップリングでグリースを採用しているものは,両側のフランジボルトを閉じ合わせる前に,内歯,外歯の両方の歯面へグリースを十分塗りつけておくことが大切です。
(3)循環給油方式の必要油量循環給油に必要な貯油量は,潤滑油の劣化防止の意味もあって多いほど良いとされております。通常は(1)の簡易指針で示した給油量の30~50倍位を目安にしてください。
ギヤ油には消泡剤が添加されておりますが,貯油槽へ戻される潤滑油はどうしても流動攪拌による泡が発生しています。したがって,貯油時間を長くして,泡を消すことも大切なことです。また,歯車の運転発熱を冷却する作用も必要です。したがって,発熱量と冷却という点から潤滑油量を計算することもできます。
Q=H2/P・C(t2-t1)
ここで,
Q:循環油量
H2:潤滑油によって冷却すべき熱量(kcal/m3)
P:油の比重=900(kg/m3)
C:油の比熱=0.45(kcal/m3kg℃)
t2:排油温度(℃)
t1:給油温度(℃)
なお,一般にはt2-t1は10~20℃とします。