各種潤滑油剤は,ベースオイル(基油)と添加剤のブレンドによって製造されていると聞きましたが,全く同じ添加剤を同じ量だけ,違う種類のベースオイル(一般鉱物油,高度精製基油,エステル,PAO)に添加した場合,性能的にどのような違いが現れるのですか。
解説します。
潤滑油は,ベースオイル,添加剤(分散剤,清浄剤,摩耗防止剤など),粘度指数向上剤,流動点降下剤などで構成されています。機械・自動車技術の急速な発展により,酸化安定性能や摩耗防止性能など潤滑油に求められる性能が大きく変化し,添加剤の技術も進歩しています。添加剤は,ベースオイルの潤滑油としての性能を補い向上させ,必要性能を満たすために添加されています。したがって,添加剤によって潤滑油の性能は大きく左右されますが,ベースオイルもそれぞれ特有の性質を持っているため,ベースオイルの種類が異なる場合,全く同じ添加剤を同じ量だけ添加しても,ベースオイルの性能に依存した異なる性能の潤滑油が作られます。したがって,要求性能に応じて,それぞれのベースオイルにあった添加剤を選ぶことが必要です。
表1に一般的な鉱物油(溶剤精製),高度精製基油,エステル,PAOの特徴を示します。
表1 基油の特徴
◎:優れている ◯:良好 △:普通 ✕:やや劣る |
例えばガソリン自動車エンジン油のケースで,飽和成分が多く粘度指数の大きい高度水素化精製基油で設計した添加剤を用いた場合,ベースオイルを従来の溶剤精製の鉱物油に変更すれば,熱・酸化安定性能を維持することは難しくなります。エステルやPAOを使用した場合は,シール材との適合性を考慮することが必要ですが,低温流動性や熱・酸化安定性が向上します。一般に省燃費には低粘度化が有利であり,そのためには蒸発損失が少なく,高温酸化安定性に優れたベースオイルが求められています。このように潤滑油設計には経済性の考慮と同時に,要求性能に合ったベースオイルの選択とベースオイルにあった添加剤の選定が重要なポイントとなります。