オイルミスト潤滑とグリース潤滑はどのように使い分けるのですか。
解説します。
オイルミスト潤滑とグリース潤滑について
オイルミスト潤滑とグリース潤滑にはそれぞれ長所と短所がありますので,状況判断で現場にとって有利な方を採用してください。
オイルミスト給油法は潤滑油を圧縮空気で霧状にして配管で潤滑部に近くまで圧送し,潤滑部に設けられたノズル,フィッティングで液状に戻し,潤滑する方法で,一種の全損式潤滑法であります。この方法の主な特徴を挙げておきます。
(1)少量の潤滑油で多数の潤滑部を潤滑できる。
(2)理論的には消費される量と同量のオイルが供給されるので,余分な油の消費がなく,潤滑剤費を低減できる。
(3)適油量を常時供給し,しかも常に新しいオイルを軸受などに供給し,油膜形成することと,空気による軸受部の冷却効果も期待できるので,軸受の寿命が延びる。
(4)配管により任意の場所に供給できる。
(5)圧縮空気により,ある程度加圧されているので軸受けのシール効果を補うことができる。
(6)エアー温度とオイル温度を常に一定に保っているので,外気温度の影響を受けずに一定の条件でオイルを供給できる。
一方でオイルミスト潤滑には,他の潤滑方法にないストレーミストに関する問題があります。すなわち,潤滑部で凝縮しないで排出されたミスト分(ストレーミスト)があり,装置周りの環境を汚染するばかりでなく,製造中の製品を汚したり,作業員に悪い影響を与えたりすることがあります。
この対策としてミストコレクターを設置する場合もありますが,ミストオイルによってストレーミストの出方は変わりますので,油種の選定にも十分注意してください。
さらに,オイルミスト装置は構成要素に回転部,摺動部,振動がないために発生装置そのもののメンテナンスはほとんどいらないといわれておりますが,全体としてはメンテナンスフリーというわけには行きません。保守管理のポイントとして次のようなものがあります。
a.ミストの発生量は,油温や供給エアの温度(通常加熱される)に大きく影響されるので,ヒーターや温度計の管理に留意する。
b.エアは清浄な乾燥空気を使用する。そのため発生器に入る前にエアフィルターやドレントラップを設置し,これを管理する。
c.ミスト配管は,たわみやU字管部があると,液状になった潤滑油が溜まり,流量が減少したり,配管が詰まったりするので,設計や施工時の注意はもちろんであるが,稼働中の変化にも注意する。
d.潤滑部に設けられたノズル,フィッティングは,先端が細い孔となっているので,摩耗粉や油劣化によるスラッジ等が付着して詰まると潤滑不良を起こして大きなトラブルになる恐れがあるので,点検清掃が必要。
グリース潤滑については,極めて一般的ですので詳しくは述べませんが,オイルミスト潤滑に対応する部分について少し触れておきます。
(1)転がり軸受などにはグリースを貯めるところがあるので,潤滑可能であるが潤滑に必要な適量のみを供給することは困難である。したがって,余分なグリースは外部に漏れて機械の周辺を汚す恐れがある。
ただし,ミストオイルのように,遠くへ飛んでいろいろなところに付着することはない。すべり軸受は貯めるところが少ないので,安定した供給は不可能である。
(2)グリース給脂で外部漏れを防止するには,長寿命グリースを封入し,グリース密封ベアリングとし途中のグリース補給をやめる方法がある。
(3)荷重制限,速度制限に関しては,グリース潤滑は不利である。しかし,荷重条件を下げたり,それなりの性質を持つグリースを採用するなりして,使用可能とすることもできる。
(4)軸受への粉塵の侵入はグリース自体に密封作用があるので,環境の悪いところでは,オイルミスト給油より,有利である。
(5)配管により集中給脂ができるところはオイルミスト給油と同じであるが,ギヤーの歯面のように貯めることができない箇所への安定供給は不可能である。
(6)グリース給脂は目で見て,供給されていることが明瞭であるので,安心できる。
(7)グリース供給装置の保守は簡単である。
以上,気が付いたことを挙げておきましたが,いずれにしても潤滑油メーカーによく相談してください。