協和界面科学の自動摩擦摩耗解析装置「TSf-503」を紹介します。各種接触子表面と試料との摩擦係数を測定し,“滑り性”として数値化することで客観的評価が行え,同一箇所を繰り返し摺動することで,摩擦係数の変化や摺動回数から“耐久性”の評価などが可能な装置です。
1.自動摩擦摩耗解析装置TSf-503
固体と固体が擦れ合うときに生じる抵抗を摩擦,摩擦が生じることによって固体の表面部分の損傷,および粉末脱落による表面部分の逐次減量を摩耗と呼んでいる.摩擦・摩耗が存在しなければ,歩くことも,食べることも,字を書くこともできず,日常生活が成り立たない.摩擦・摩耗の大小は摩擦面の材質,形状,表面粗さ,接触面積,接触荷重,摺動速度,摺動回数,温湿度など様々な要因に左右され,「ぬれ」・「表面自由エネルギー」・「接着」・「剥離」などの表面・界面現象と深く関連している.産業においては様々な分野で摩擦・摩耗が活用されると同時に,摩擦をいかに制御し,摩耗を極力抑制できるかが課題となっており,摩擦・摩耗の特性を正確に評価することは極めて重要となっている.
当社が開発した“自動摩擦摩耗解析装置TSf-503”(以下,TSf-503)を図1に示す.TSf-503は各種接触子(R接触子,線接触子,面接触子,点接触子など)表面と試料との摩擦係数を測定することで,“摩擦摩耗性”の評価や官能評価で行われていた化粧品の『伸び』や靴底の『滑りやすさ』などを摩擦係数から“滑り性”として数値化することで客観的評価が行え,同一箇所を繰り返し摺動することで,摩擦係数の変化や摺動回数からコーティング膜などの“耐久性”の評価などが可能な装置である.2.TSf-503の特長
2.1 クランク形状2軸天秤(特許第5912941号)による摩擦力検出機構
従来の天秤による摩擦力検出機構を図2に,その参考データを図3に示す.天秤支点の右辺側にあるバランス分銅を調整し水平をとり,試料に接触子を触れさせた状態で荷重をかけ,ステージを摺動させることで摩擦力をロードセルにて検出している.この機構だと天秤支点と摩擦面の高さが異なるため,ステージ移動時に支点から摩擦面に対してトルクが発生(図2内の往路側矢印:試料側に力がかかり,接触子が試料に食い込み摩擦力は大きめに検出と復路側矢印:荷重側に力がかかり,浮くような挙動をとり摩擦力は小さめに検出)する.その結果,力の垂直成分が垂直荷重に増減され,図3に示すように往路と復路で摩擦力に差異が生じてしまう問題があった.
当社の独自技術であるクランク形状2軸天秤による摩擦力検出機構を図4に,その参考データを図5に示す.2軸天秤機構のメリットとして,図2で示した機構では一体化されていた荷重と検出アームを分離し,各々独立させることで検出器であるロードセルにかかる不要な力が排除できた.荷重の慣性や外力の影響を受けにくくすることで,正確な摩擦波形を得やすくなっている.
また図4より,天秤支点と試料面が同じ高さになるように設計しており,往路と復路で力の垂直成分が垂直荷重に増減されることなく,ロードセルに伝わっている.図5に示す通り,摺動方向に関係なく測定値はほぼ同等の値が得られる.
1軸天秤と2軸天秤の検出感度の違いを図6に示す.これは各々の機構の天秤に100gと1000gの荷重をかけ,一定の衝撃を与えたときの電圧値の変化を示したものである.両者の違いがわかりやすいよう,+側を1軸天秤,-側を2軸天秤とし,振動の振れ方を表した.
これを見ると,+側の1軸天秤は同軸上に荷重と検出アームがあるため,100gでは反応が良いが,1000gだと反応が鈍く,荷重の大小で固有振動が変化しているのが確認できる.逆に2軸天秤では荷重の大小で大きな変化は見られず,同等の結果が得られた.1軸天秤と2軸天秤を比較すると,2軸天秤のほうが慣性の影響が少なく,検出感度も良好であることがわかる.
2.2 新発想の動作機能
TSf-503では独自の動作機能を採用している.片道のみの摺動データが測定できる“自動天秤ピックアップ機能”,停止時間を変化させながら測定を行う“停止時間依存測定”,同一方向で摺動/停止を繰り返す“連続静摩擦測定”がある.これらの機能や測定手法により,より実使用環境下に近い状態で試験を行うことで,試料が持つ固有の特性を引き出し,解析の幅を広げることができる.
3.おわりに
当社は摩擦・摩耗の測定装置だけでなく,ぬれ・表面自由エネルギー・接着・剥離の状態を把握するための装置を提供している.これからも「界面科学の視点から問題解決の支援を行う」をテーマに新しい視点での提案および市場のニーズに応えていく所存である.
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