新東科学で製造販売する荷重変動型摩耗試験機「HHS2000」の概要やデータ例を紹介する。
はじめに
材料の摩擦摩耗特性の研究は,現在幅広く工業分野で行われているが,この特性の評価を各荷重条件(圧力条件)で行うためには,たとえば,固体潤滑膜を例に取ると,一定の荷重で被膜材料が剥離破壊を起こすまでは摺動実験を行い,この実験を各荷重で行うという膨大な手間がかかってしまう。この荷重変動型摩耗試験機は,実験を効率よく行い,短時間で被膜・固体材料の耐久性を測定するための装置である。
この試験機は従来の1方向1回の摩擦で被膜材が剥離を起こす臨界加重を求めることはもとより,各種材料の各荷重における耐摩耗性実験が1回の摺動実験で可能になる。
1. 従来型摩耗実験
従来の被膜材料の耐摩耗性実験は固定荷重において材料表面を相手材料で摩耗させ,材料表面が摩耗破壊を起こし,摩擦係数が急激に上昇するまでの摺動回数を実験的に求める方法が一般的である。
また,このような実験を荷重を変えて行うことにより,初めて繰り返し回数と荷重の増加に伴う摩耗形態の遷移の把握が可能になる。
今回紹介する摩耗試験機は,1方向に1回摩擦実験を行う際,直線的に荷重を0g~数百gまで増加させ,また逆方向に1回摩擦実験を行いながら荷重を数百g~0gまで減少させる。この運動を繰り返すことによって,往復摺動実験を行いながら荷重の影響を測定し,摩耗形態を簡便にパソコン上でまとめることができる。
写真1 荷重変動型摩耗試験機「HHS2000」 |
2. 荷重変動型摩耗試験機の概要
この装置は,往復摺動可能な移動テーブルと,テーブルの移動と連動して圧子側に垂直荷重をかけるための加重変動機構により構成される。測定検出部としては,摩擦力測定用の荷重変換器と摩耗量算出のための変位計が取り付けられており,摩擦,摩耗実験中に連続的に摩擦力と摩耗痕の深さを測定することができる。
さらに被膜材料の摩耗形態を視覚的に捉えるためにCCDカメラで実験中連続的に接触部を観察することが可能である。この荷重変動型摩耗試験機の概略図を図1に示す。図中b,c,dに速度,荷重,摩擦力の経時変化の模式図が示されている。
(a)試験装置の概略図 |
(b)速度の経時変化の模式図 |
(c)荷重の経時変化の模式図 |
(d)摩擦力の経時変化の模式図 |
図1 荷重変動型摩耗試験機の概略図
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3. 荷重変動型摩耗試験機の主な仕様
荷重変動型摩耗試験機の主な仕様は下記のとおりである。
【駆動部】
- テーブル移動距離:最大50mm
- テーブル移動速度:1~600mm/min
- 荷重加減範囲:0~1000g
【検出部】
- 荷重変換器:2000gf
- 変位計:0~2mm
- CCDカメラによる表面観察機能
【圧子部】
- ダイアモンド針
- 各種材料ピン
- 各種材質ボール
測定で得られた繰り返し摩耗回数,摩耗痕深さなど,これらの荷重依存性を専用解析ソフトで処理し,摺動距離,荷重,摩耗量の関係を3次元的に表示することが可能である。
4. データ例
実際のデータ例を金属表面の固体潤滑膜を硬質金属ボールで摩耗させたテストデータを図2(1)~(4)のグラフに示す
■摩擦力・摩耗回数・垂直荷重 測定結果
図2 HHS2000型 データ例【トライボウエア】(1) |
図2 HHS2000 型 データ例【トライボウエア】(2) |
※単位荷重あたり単位距離における摩耗体積(g/N・m2)の大小でアブレッシブとマイルド摩耗領域に分ける
図2 HHS2000 型 データ例【トライボウエア】(3) |
■摩擦力・摩耗回数・垂直荷重 測定結果
図2 HHS2000 型 データ例【トライボウエア】(4) |
おわりに
荷重変動型摩耗試験機は,固定荷重式の摩耗試験機で行えば仮に1週間以上の時間を要する実験を,1回の摺動試験で完結させることができる。また,今回は紹介をしていないが,摩擦,スクラッチ,一定荷重摩耗などの試験がこの1台で行えるというのも大きな特徴の1つである。摩耗試験の効率化だけでなく,表面試験を幅広くカバーできる装置であることも付け加えておく。
最後に,従来型の一定荷重型摩擦試験機と荷重変動型摩耗試験機の比較を表1にまとめる。
表1 一定荷重型摩擦試験機と荷重変動型摩耗試験機の比較
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本製品は,東北大学大学院工学研究科 堀切川研究室と新東科学株式会社の共同開発により製品化された。
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