摩擦摩耗試験サービス | 摩擦摩耗試験分析BOX | ジュンツウネット21

日立パワーソリューションズの摩擦摩耗試験受託サービスについて紹介する。

株式会社日立パワーソリューションズ(旧 日立協和エンジニアリング株式会社) 2012/6

1. はじめに

摩擦摩耗試験は摩擦力などの設計仕様の確認や摩耗耐久性などの信頼性評価に必須である。摩擦部が性能に大きく寄与する自動車などの機械設計・製造部門は自社専用の摩擦摩耗試験機を導入し,多くの評価試験を継続的に実施している。一方でしゅう動部品はあるが見直す必要性の低い製品を扱っている部署では,特別に摩擦評価設備を維持することは負担が大きくなるため,委託評価のニーズが多くある。

弊社では化学分析や機器分析,強度試験など分析・計測事業を展開しており,さらに,1990年頃より各種摩擦摩耗試験機を揃え摩擦摩耗評価も積極的に受託してきている。ここでは摩擦摩耗試験作業の現場から,実際の試験ノウハウや課題解決のための理想的アプローチについてご紹介させていただく。

2. 受託試験サービスの概要

弊社ではピンオンディスクの回転式や往復動,円筒端面の回転摩擦,軸受,転がりや微動摩擦などの試験機を用いてトライボロジー専属のオペレータにより試験受託している。主な試験機を表1に示す。ご要望に応じて試験機の試作もお手伝いさせていただいている。材料は主に金属系で高荷重が多い。樹脂材の試験も行っており,より軽荷重での評価が可能な装置なども順次導入計画中である。

表1 主要摩耗試験機
名称
形式
動作組み合わせ
往復摺動摩耗試験機往復摺動
往復摺動
フレッチング摩耗試験機フレッチング
フレッチング
高周速摩耗試験機(松原式)リングオンディスク
リングオンディスク
ピンオンディスク摩耗試験機ピンオンディスク
ピンオンディスク
ころがり摩耗試験機(西原式)  ころがり
ころがり
ファレックス摩耗試験機ジャーナルピン
ジャーナルピン

特に摩擦摩耗試験は装置の特性(癖)やオペレータの熟練度,手順によって試験結果の再現性が左右されるため,人材育成に力を注いでいる。摩擦力や摩耗量などの数値データは設計上必須だが,摩擦試験中の音や振動をはじめ現象解明に有効でも数値には反映しにくい情報もご報告できるように努めている。

試験片の形状は標準的なもの以外でも冶具作成で対応でき,複数の試験方式から適宜法案を選定いただける。さらに材料強度や疲労強度,材質分析,付着物分析,強度解析から損傷面観察(フラクトグラフィー)など設備を準備して対応している。それぞれの分析・観察作業では熟練したオペレータが迅速に処理し実績経験からのアドバイスも行っている。

お客様にとっては使用頻度の少ない多くの設備をご自身で保守管理することなく必要なメニュー構成で常時対応できる点でご好評いただいている。

3. 試験法案選定の考え方

どのような試験を行うべきかは,設計者の視点,不具合対策,材料開発,材料メーカなど立場によって異なる。

しゅう動部の設計に際しては,摩擦力や摩耗速度を把握するために,試験条件は希望する動き,速度や荷重,特にこれらの定格条件が採用されることが多い。動きは実機の要素を抽出し,回転もしくは往復動を適用する。一方でしゅう動材料の開発における評価内容は材料の摩耗のしゅう動条件依存性を広く把握することが求められる。材料のパフォーマンスを最大限発揮できる雰囲気および速度や荷重の範囲あるいは弱点範囲を把握するための相当量の実験が必要になる。

機械の設計段階の試験法案は想定する雰囲気および動きと速度・荷重の条件範囲に合った試験機を選定すればよいが,材料開発では使用部位を推定して戦略的に試験法案を考えておかなければ,せっかく取得した大量のデータが無駄になる可能性がある。

不具合対策では,設計コンセプトと材料のしゅう動条件依存性の両方を熟知しておく必要がある。不具合は設計者にも材料屋にも想定外であることが多く,両者十分に連携して必要であれば次項の手順に述べるように改めて法案を計画実行することになる。

試験法案の検討の1つに接触の問題がある。実機に近い接触を得るのは簡単ではなく,接触を安定させる様々なノウハウがある。さらに,時折混同されるのは,可動試験片と固定試験片である。例えばモータのシャフトは回転し軸受は固定されているため,プーリーや歯車を駆動している場合は軸受の接触部は一定である。しかし,モータでクランクを駆動する場合には逆にシャフトの特定の部分しか接触していないことがある。可動側と固定側の決定は,どちらが動いているかではなく,接触部の移動を再現することを優先する。

4. 摩耗の課題解決の手順

図1に摩耗課題の解決手順を示す。不具合対策では実機の摩耗損傷形態を詳細に観察することから始まる。不具合の起きた環境,雰囲気および速度や荷重等のしゅう動条件を特定していく。次に要素試験での再現を試みると同時に,摩擦摩耗の仮説現象モデルを構築し,検証を積み重ねつつ対策材料や設計変更を検討する。ここで重要なのは何故摩耗するのかを常に念頭におくことである。モデルの検証により複雑と思われる現象が一気に紐解かれることもある。さらに,その検証実験の動きは実機の動きを模擬していないこともあり得る。

摩耗課題の解決
図1 摩耗課題の解決

図2にモデル化による摩耗加速評価の例を示す。潤滑油中で往復しゅう動する部品で速度が変動する場合,摩耗量はストライベック曲線などでもよく知られているように速度が速い方が良好な潤滑が得られるため少なくなる。低速ほど潤滑膜が形成されにくくなり固体同士の接触が増加するため,摩耗量は高速域に対して低速域の方がけた違いに多くなる場合が多い。この例では摩耗量の速度依存性を検討し,高速域では摩耗せず低速域のみで摩耗するというモデルを採用した。したがって,要素試験は摩耗量の多い低速域のみの一定加重,一定速度の一方向(回転)試験を採用した。結果として摩耗しない高速域を省略することで短時間に摩耗を評価でき,加速評価できた。

実機の往復動作

実機の往復動作/モデル化による摩耗の加速
要素試験では一方向一定速

要素試験では一方向一定速/モデル化による摩耗の加速

図2 モデル化による摩耗の加速

この例のように,実機のしゅう動が往復動であっても,要素試験に回転しゅう動を適用することで迅速な対応ができることがある。もちろん十分な仮説モデルの検証の積み重ねが必要かつ重要である。

モデルの検証においては,摩耗量の条件依存性や摩擦係数の再現性の他にも,摩擦面や摩耗粉等の形態の類似性が論点となる。

摩擦面の観察は,表面移着物の機器分析(EDX,XPS,IRなど)やフラクトグラフィー(微細な表面観察<SEM>や摩耗粉の形状)を駆使したい。これらは弊社でも受託している。多くの情報から摩耗メカニズムを検討し,凝着摩耗なのかアブレシブか,疲労かなど詳細な仮説モデルを考えることが課題解決に有効である。さらに,事後の表面観察のみでなく,試験中に発生する音や摩耗粉の採取にも配慮する。

5. 計測の留意事項

試験中の基本的な計測・測定項目は,摩擦力および荷重で,補助的に試験片温度や雰囲気の温度と合成摩耗量が代表的である。合成摩耗量は対になる試験片のそれぞれの摩耗深さの和である。

合成摩耗量の測定は,回転試験で摩耗量の推移を監視する場合に有効だが,サブミクロンの推移を観察するには摩擦面が精度よく同一平面内で回転させる必要がある。往復動でも合成摩耗量の測定は不可能ではないが,サンプリング周期を往復周波数に対して充分小さくし,周期変動を検知できる計測システムが必要である。

摩擦力の測定でも,回転周期あるいは往復周期とサンプリング周期の関係に注意すべきである(図3)。特に往復動では,摩擦力がしゅう動速度の変化に伴って変動するため,サンプリング周期は少なくとも往復周期の1/10程度にすべきである。往復動の平均摩擦力は,導出手順を明記する必要がある。一方,往復動における簡便的な摩擦力の捉え方として,サンプリング周波数を往復周波数の整数倍以外になるようにし,任意の区間の最大摩擦力のみをモニタする方法もある。

実機の往復摩擦力

実機の往復摩擦力/往復摩擦での摩擦力計測
時間軸を長時間にした場合

時間軸を長時間にした場合/往復摩擦での摩擦力計測
サンプリング周期を長くした場合

サンプリング周期を長くした場合/往復摩擦での摩擦力計測

図3 往復摩擦での摩擦力計測

材料の特性に影響する温度測定の課題は,摩擦面温度の把握である。発熱部は摩擦界面の真実接触部の微少量域であり,熱電対を挿入して計測できる部分は摩擦界面に近づける努力はしても1/4ミリ以上にはなってしまう。伝熱計算シミュレーションを適用したとしても,真実接触部の発熱が試験片だけでなく雰囲気や試験片ホルダ等も含めて伝熱拡散するようなモデルの正当性を検証しなければならないため,実際に測定できる試験片の温度は目安と考えた方が良い。ご要望があれば弊社でも伝熱計算シミュレーションを行っている。

6. 荷重か面圧か

試験条件を決定する上で荷重を優先させるか面圧で考えるべきかが問題になる。機械部品の摩耗限界は深さが規準となる。一方,摩耗の教科書では摩耗体積の測定が一般的である。ここでは,設計で重宝される比摩耗量とは何かから荷重と面圧について考察してみる。

摩耗の基本は真実接触部(接触点)である。荷重が大きいまたは面圧が高いということは,真実接触点の個々の面積が広くなるとともに,数が増えることになる。マクロな接触が均一であれば,接触点の単位面積当たりの密度は面圧で決まる。面圧一定でみかけの接触面積を変化させても,接触点の単位面積当たりの密度は一定であるということになる。1つの接触点に起因する摩耗量が一定とすると,一定面積毎の摩耗は面圧で決まる。一定面積ごとの摩耗とは,摩耗深さである。したがって,面圧と摩耗深さには強い相関があることになる。

ここで,比摩耗量に面圧を採用して;

  k=(摩耗深さ)/(面圧)/(摩擦距離) ………式(1)

としてみる。ディメンション(次元)で表すと

  k=[m] / [N / m2] / [m]=[m2 / N] ………式(2)

一般的に比摩耗量は;

  k=(摩耗体積)/(荷重)/(摩擦距離) ………式(3)

なので,同じく次元で考えて

  k=[m3] / [N] / [m]=[m2 / N] ………式(4)

式(2)と(4)の次元が同じになり,荷重でも面圧でも同じ意味になる。以上から,設計の高精度化で摩耗量が微小になり,摩耗体積の測定が難しくなってきているため,面圧と摩耗深さを用いて検討する方が考えやすいと思われる。

しかし,実際には摩耗深さが面圧と距離に比例するのか疑問が残る。摩耗の理論がまだまだ確立していない状況では,摩耗速度(摩耗率)や比摩耗量,摩耗係数を使う際には,細心の注意をすべきである。

7. 今後の課題や展望など

摩擦摩耗と潤滑は昨今,トライボロジーと呼ばれる学術分野の主たる範囲だが,摩擦力の発生と摩耗のメカニズムは今世紀に入っても解明されるに至っていない。相変わらず実用的しゅう動部では「擦ってみなければ分からない」ことが多い。基礎的な摩耗メカニズムの研究と実用材の開発の間には,定性的に共通の考え方はあるにせよ,定量的な相関が得られていないためである。

実用材では樹脂材のフィラーや金属析出物あるいは組織が複合材のように相互に補完しあい耐摩耗効果を発揮している。複合材として様々な耐摩耗性向上コンセプトが発表されており,それらを公正な立場で検証していくことも我々の課題である。受託評価を行いながら,摩擦と摩耗の基礎技術に関する研究や摩擦摩耗評価法の開発を積極的に推進したい。

8. おわりに

私たちは実用材で「こすってなんぼ」ではなくメカニズムが窺える評価をし,皆様の課題解決のお役にたてる摩耗の検視官を目指して精進していきたいと考えている。

また,試験法案のニーズを予測して設備増強を鋭意検討しているが,不具合などは予測できない。受託に際して,装置利用の順番待ちなどでご要望の実施および報告納期にお答えできないことも増えていることを,この場をお借りして陳謝させていただく。


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