自動摩擦摩耗解析装置 TS-501 | 摩擦摩耗試験分析BOX | ジュンツウネット21

協和界面科学で製造販売する自動摩擦摩耗解析装置「TS-501」の特長や測定事例を紹介する。

協和界面科学株式会社 2010/5

はじめに

歩く,食べる,字を書く,服を着る……普段あまり意識しない動作には,摩擦・摩耗が存在しなければ成り立たないことが少なくない。産業分野においても様々な工程で摩擦・摩耗が関係していると同時に,それらをいかに制御できるかが省エネルギー(CO2削減)の観点からも重要な課題である。また,摩擦・摩耗の大小は材質だけではなく,圧力荷重,摺動速度などその要因は様々である。ゆえに,摩擦・摩耗を制御する場合,条件依存性を把握することが重要となる。

当社は,接触角計・表面張力計の専門メーカーとして,「界面科学」の視点で摩擦現象を捉えようとする点が特徴といえる。具体的には,接触角に代表される「ぬれ性」や「接着」,「表面自由エネルギー」との関連である。以下に,当社で製造販売する自動摩擦摩耗解析装置『TS-501』(図1)の特長や測定事例を紹介する。

『TS-501』の外観
図1 『TS-501』の外観

1. 特長

主な特長として,以下の点が挙げられる。

○豊富な測定モード(標準繰返,試料依存,回数依存,荷重依存,速度依存の5種類)
○対話形式で操作できるソフトウェア
○統計量やグラフ表示のエクスポート機能
○本体とノートパソコンだけの簡単接続

この中で,測定開始時の操作を対話形式で促すソフトウェアの画面例を図2に示す。

対話形式のソフトウェア
図2 対話形式のソフトウェア

表示内容に沿って操作することにより,誰にでも簡単に測定作業を進めることができる。また,測定結果は数値とグラフに随時表示される。数値の表示例を図3に示す。数値には,平均,標準偏差,最大,最小,範囲が表示される。数値,グラフのどちらもエクスポートが可能なため,表計算ソフトによる詳細な処理や簡易報告書などの作成には非常に便利な機能である。

標準繰返測定の測定結果表示
図3 標準繰返測定の測定結果表示

2. ハード仕様

ハード仕様を表1に示す。JIS K7125(ISO 8295),ASTM D1894に準拠した測定が可能である。

表1 ハードウェアの主な仕様
項目
仕様
測定方式 水平直線往復摺動(バウデン)式
摩擦力範囲 0~500gf(4.9N)
荷重範囲 50~500g(50g間隔)
ステージ速度 0.2~100.0mm/s
測定距離 1~80mm(1mm間隔)
往復摺動回数 最大 1000回 ※1
接触子形状 点(φ3mm鋼球),点,面,R,ASTM ※2
表示分解能 0.001(摩擦係数)
試料寸法 178(W)×60(D)×50(H)mm以下
本体外形寸法 380(W)×270(D)×236(H)mm
本体重量 約11kg
電源 AV 100-240V,50/60Hz
ステージ温度 ※3 約10~60℃:ジャケット式ステージシステム
常温~190℃:ヒータ式ステージシステム

※1 回数依存測定の場合
※2 オプション,JIS,ISO,ASTM条件に対応
※3 オプション

3. 測定事例

3.1 条件依存測定

標準的な測定事例を図4図5に示す(グラフはいずれもソフトウェアからエクスポートしたもの,但し測定条件等の表記は除く)。表示測定条件の範囲ではあるが,コピー紙間の動摩擦係数における荷重依存は小さく,速度の上昇に対して動摩擦係数はやや減少傾向を示す結果であった。

動摩擦係数(コピー紙間)の荷重依存測定
図4 動摩擦係数(コピー紙間)の荷重依存測定
動摩擦係数(コピー紙間) の速度依存測定
図5 動摩擦係数(コピー紙間) の速度依存測定

3.2 回数依存測定(膜耐久性評価)

摩耗に関しては,「摩耗量(重量や厚みの減少)」ではなく,「動摩擦係数の変化」から摩耗の様子を把握することを提案している。実測例を以下に紹介する。

当社製LB(Langmuir-Blodjett)膜作製装置で成膜したステアリン酸の単分子膜を,清浄なスライドガラス(水接触角<5゜,動摩擦係数0.2~0.4)に採取・乾燥し,この膜に対して同一箇所を50g荷重のφ3mm鋼球で往復摺動させた。ステアリン酸単分子膜上は水接触角>100゜,動摩擦係数<0.1,つまりスライドガラス側に親水基,外側に疎水基(炭化水素)を配置して並んだ低エネルギー表面であることが,水接触角,動摩擦係数の両方から確認できる。

この膜に対して,回数依存測定モードで測定した結果を図6に示す(ソフトウェアグラフ)。この条件では約450回を過ぎたあたりから膜物質が破壊され,さらに基板であるスライドガラスをも破壊始めていることがわかる。

ステアリン酸単分子膜1層の摺動耐久性
図6 ステアリン酸単分子膜1層の摺動耐久性

3.3 回数依存測定(機能耐久性評価)

自動車のフロントガラス用撥水剤をスライドガラスにコーティングした撥水表面の機能耐久性を,回数依存測定モードで測定した結果を図7に示す(グラフは表計算ソフトによる)。スマートフォンなど指で画面操作するディスプレイには,反射防止や耐指紋などの様々な表面処理が施されている。それら機能性表面の耐久評価は,今後ますます重要になってくると考える。

撥水処理劣化の関係
図7 撥水処理劣化の関係

4. 今後の展望

これまでは測定試料の形状(ロール材や感光体など)に合わせた特注や,試料温度範囲の拡張に関する特注が多かった。今後は湿度なども含めた測定環境や摺動箇所の観察など,これまでとは違った角度の提案をしていきたいと考えている。


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    最終更新日:2024年2月29日