重油添加剤について | ジュンツウネット21

重油のスラッジ分散剤とか助燃剤などの売り込みがありますが,それは近年,重油が粗悪化して安定性に問題が出てきているからだそうです。そこで,重油添加剤の効用と種類,特徴を分かりやすく解説して下さい。

解説します。

燃料油添加剤は一般に液体燃料,とくに重油などを対象にボイラ,加熱炉や,焼却炉などでの燃料に起因する障害を抑制するために用いられます。近年,燃料価格の高騰や良質原油の入手難による重油の低質化が進み,これまで以上に燃料油による問題が増えています。ここでは,ボイラを対象に低質重油による障害と添加剤について述べます。

1. スラッジ分散剤

重油に含まれるアスファルテン,レジンなどの高分子量のものが,重油中で溶解,分散せず貯蔵中に分離し,タンク底部にドライスラッジとして堆積します。このスラッジが燃料配管へ入ると,ストレーナを詰まらせたり,重油ヒーターに付着したり,バーナーの噴霧を不均一にしてバーナーチップの汚れ,不完全燃焼などを起こします。そのため,ドライスラッジを重油中に均一に分散させ,析出を防止する分散剤(界面活性剤)が使用されます。

2. ばいじん防止剤

重油中のスラッジ成分(残留炭素)が増加すると,噴霧燃焼時にセノスファと呼ばれる未燃カーボンを生じやすくなり,ボイラ排ガス中のばいじん量が増加します。これを防止するために前に述べた分散剤や,金属化合物を主成分とする燃焼促進剤が使用されます。一般にはアルカリ土類金属の化合物が用いられ,重油の熱分解促進作用および燃焼の触媒作用によって未燃カーボンを抑制します。

最近は未燃カーボンの発生量を増加させずに低酸素運転を行うために,この種の添加剤が使用される傾向にあります。

3. 灰分改質剤と腐食防止剤

重油に含まれる灰分(V,Na,Ni,Ca,Feなど)が,炉内の高温伝熱面に厚く付着して伝熱障害による熱効率の低下を招きます。その上,このスラッグは硬くしかも配管に密着して除去に手間と時間がかかり,定時検査時のクリーニングコストが増加する原因となります。また,VとNaを主成分とする低融点の化合物は高温部材質を酸化腐食し,チューブの寿命を短くし,激しい場合にはチューブの破損事故の原因となります。

もう一つの問題は低温腐食と言われているもので,ボイラの低温部(ガス/エアーヒーター,煙道,煙突)が燃料油中の硫黄化合物の燃焼の結果生じた硫酸により腐食を生じるものです。この硫酸の生成量は燃料の硫黄含有量,過剰空気量,ボイラ負荷,排ガス温度,ボイラの構造などによって影響されます。さらに,前述の炉内灰分もこの硫酸生成率に関与しています。それは,炉内灰分がSO2→SO3の酸化触媒作用を持っているためです。とくに問題となるのは,加熱,冷却の繰り返しを受けるガス/エヤーヒーターのエレメントで,減肉の問題だけでなく,エレメントの詰まりが発生して一年間の連続運転ができない場合もあります。

炉内灰分に起因する上記の障害を抑制する添加剤として,Mg(マグネシウム)化合物が有効であることは多くの文献で示されており,またボイラでの実績で明らかです。Mg系添加剤としては,Mg(OH)2の微細粒子(数μ~数10μ)を水スラリーやオイルスラリーにした無機系のものと,Mgスルホネートに代表される有機系のものが市販されています。

無機,有機マグネシウムとも炉内でMgOとなります。このMgOはV,Naを主成分とする腐食性の低融点物質を腐食性のない高融点の物質へと改質します。この高融点の物質は嵩のある粉状で高温部(過熱器,再熱器)への付着が少なく,その結果,灰分によるSO2→SO3の酸化触媒作用も抑制され,硫酸による低温腐食が減少します。

無機マグネシウム系添加剤は微細粒子ですが,重油中のV/Na化合物と反応するのはその粒子表面だけで添加効率が良くありません。そのため添加量が多くなり,また微細粒子がバーナーチップや噴射ポンプの摩耗を起したり,配管系統内で沈積するなどの問題を生じる可能性があり,その取り扱いには十分な注意が必要です。

有機マグネシウム系は油溶性で,重油中では1分子ごとに完全に溶解した状態であるので,前記の無機マグネシウムに見られる問題はありません。

表1に,ボイラに用いられる低質燃料油の一般性状を示します。

表1 最近の低質燃料油の性状
 
油種
C重油
高粘度C重油
アスファルト
性状  
粘度,cSt @50℃
~100
100~300
500~1,000
-
S(硫黄),wt%
1.0~2.0
2.0~3.0
3.0~4.0
4.0~
V(バナジウム),ppm
~40
30~50
70~150
150~
Na(ナトリウム),ppm
~40
7~15
40~70
60~
残留炭素,wt%
5~10
7~15
15~20
20~

4. 水分離剤

重油中に水分が懸濁もしくは乳化状態で含まれていると,燃焼が不均一になったり,重油のヒーター中で分離した水が失火(火の消えること)の原因になったりします。この水分を重油貯蔵タンクなどで分離し排出するために水分離剤が使用されます。これは解乳化剤(エマルション・ブレーカー)とも言われるもので,W/Oエマルションを破壊して水分を凝集させることにより,重油中から水分離を容易にするものです。重油中の界面活性物質や重油の組成によって解乳化剤の効果が異なるので,その使用に際しては事前の解乳化試験が必要です。

5. その他

重油添加剤を広義に考えると,次の添加剤もその中に含まれます。

(1)流動性向上剤
 重油の低温流動性を向上させることによって,重油の予熱や移送に必要なコストを下げます。

(2)乳化剤
 ボイラから排出されるNOxやばいじんを抑制するために,水エマルション燃焼を行う場合に乳化剤が用いられます。

(3)殺菌剤
 重油中で繁殖する細菌,かび,酵母菌などの微生物による障害を防止するための殺菌剤,抗菌剤です。

6. おわりに

以上に述べた通り重油の低質化に伴い,また最近注目を集めているアスファルトおよび石油コークスのボイラ燃料としての実用化に際して,さまざまな障害の発生が予想されます。かつては,助燃剤と称して使用目的の明らかでないものもありましたが,最近はコスト低減などの合理化の推進に伴い,その使用目的や効果の評価方法が明確にされつつあります。また一つの添加剤で二つ以上の機能を持つ製品も開発されています。

添加剤の選択を誤ると,その効果は発揮されないばかりか,新たな障害が生じる場合もあるので,添加剤メーカーと十分協議のうえで,その種類,添加量,使用方法を決定することが,望ましいと言えます。

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最終更新日:2021年11月5日