非塩素系添加剤の実力 | ジュンツウネット21

極圧添加剤には,塩素が含有されていると聞きますが,地球環境・現場作業者の保護を目的に脱塩素化の動きが見られます。非塩素系潤滑油には,塩素に代わる物質としてどのようなものが添加剤として使用されているのですか。また,性能的に塩素入りのものと塩素が入っていないものでは違いが生じないのでしょうか。金属加工油を例に教えて下さい。

解説します。

歴史的に見ますと,アメリカでは1977年にEPA(環境保護局)が塩化パラフィンの毒性について審査を始めています。一方,ドイツでも塩素化合物に対して同様の懸念を表明し,今では多量の塩素を含む潤滑油の使用を禁止しています。(例えば,ギヤーオイルには200ppmまでと規定されています。)

アメリカでは,塩化パラフィン生産量の約50%が極圧潤滑油の添加剤に使用され,その大部分が金属加工油です。後は,ギヤー潤滑油,グリース,それと一般消費者向け自動車用エンジンオイル,ギヤーオイル,トランスミッションオイル等にも使用されています。

40年近くにわたり,ギヤーオイルやグリースから塩化パラフィンを除く努力が続けられている訳ですが,当初は,現在問題としている毒性よりはむしろ,コスト面や酸化防止効果の向上を主眼としておりました。

一般に,「塩素含有添加剤の代替」という命題への答えとしては,硫黄リンシステムがあります。オイルに1.7-7w%の割合で添加しますと,ほとんどのMilスペック(例えばMil L-2105D)やUS Steel 224をパスしますし,チムケンOKロードの減少も認められます。研究でも,このタイプの添加剤は酸化防止や防錆効果に顕著な改善があると評価されています。

最適なグリース添加剤システムの研究開発が,硫黄,リン,アンチモン,亜鉛等の元素を中心として進められてきました。亜鉛コンポーネントは,熱に対して問題があるため,主としてジチオリン酸亜鉛(ZDDP)の形で使用され,特にグリースには硫黄,リン系が有力な解決策として開発されました。濃度4.0~6.0w%の添加が最適でユーザーのほとんどの要求を満たすと評価されています。

塩化パラフィンを最も大量に使用するのが,金属加工油です。今までにも,色々な代替品が紹介されていました。しかし,金属加工油用として塩化パラフィンに代わる決定的なアプローチ方法が未だ開発されていないというのが現状です。

最近の傾向としては,硫化物原料(活性・非活性),リン酸エステル,長鎖有機エステルが増えてきています。摩耗防止剤や極圧剤として過塩基性金属スルフォネートがあります。硫黄系コンポーネントは一般的に脂肪族系炭化水素を原料としています。その長所は,高温時で優れたEP効果を出す点とその固有の潤滑性です。しかし,短所としては,臭い,着色すること,またベースオイルによっては溶解度が落ちることがある点です。

非塩素系添加剤としてのリン化合物は一般的に部分リン酸エステルまたはアルキルリン酸塩があります。これはアミンまたは金属酸化物を原料とし,防錆効果は優れていますが水との安定性に問題があります。

phosphateエステルで通常またはかなり難度の高い作業にも良好なパフォーマンスを得ることができます。しかし,リン含有潤滑油の使用と廃棄には環境問題があります。

そのほかに,有機エステルや過塩基性スルフォネートが摩耗防止効果があると同時に種々のベースオイルと比較的溶解性に優れています。金属加工油に使用されるエステルや過塩基性添加剤は効果を上げるためには,通常,粘度向上剤やその他の添加剤を加えます。ところが,過塩基性スルフォネートは多くの添加剤と相性が悪いため,配合が非常に難しくなります。さらに,多くの一般的コンタミ,例えば水との接触でも問題となります。

前述の化合物はすべて塩化パラフィン代替品として効果は上げられますが,問題はコストです。ほとんど全てがコスト高となり,その多くはパフォーマンスに限度があり,そして全てが塩化パラフィンと同様の応用性のあるものは一つもありません。

結論としていえますのは,今まで紹介されています代替品では,塩化パラフィンほどの性能を期待することはできないうえに,価格が高くなってしまうということです。唯一の利点は塩素を含んでいない点です。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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最終更新日:2021年11月5日