オンライングリース鉄粉濃度計による設備管理 | コンディションモニタリングBOX | ジュンツウネット21

オンライングリース鉄粉濃度計による設備管理 では,JFEアドバンテックの「グリース鉄粉濃度計MK-90」の構成,特長について紹介する。また,合わせて高度な振動解析機能を備えたオンライン設備診断システム「Super CMS-10000」についても紹介する。

JFEアドバンテック株式会社 櫛田 靖夫  2011/11

はじめに

高速回転機械の軸受診断方法としては従来より振動法が用いられてきた。しかし数rpm以下のような超低速回転機械では有効な診断が困難な場合もあり,これを補うものとして潤滑剤中の鉄粉濃度から軸受の摩耗状況を把握するフェログラフ法が用いられることがある。ただ,従来の手法はサンプル分析のため鉄粉濃度の連続的な変化状態を把握することは困難であり,また分析に時間がかかるといった問題点があった。

分析の手間を少なくするために,持ち運びが可能なポータブル鉄粉濃度計を用いて,現場で鉄粉濃度を計測することも良く行われているが,こちらも人手による計測となるため,手間の問題,あるいは間欠測定といった問題については解消することはできなかった。

これらを改善すべく,JFEアドバンテック(株)では,グリース中の鉄粉濃度をオンラインで連続的に計測する装置である「グリース鉄粉濃度計MK-90」を開発,製品化した。本報では,本装置の構成,特長について紹介する。また,合わせて高度な振動解析機能を備えたオンライン設備診断システム「Super CMS-10000」についても紹介する。これらを組み合わせることにより様々な回転数の設備を統括的に常時監視するシステムを構築することも可能である。

1. グリース鉄粉濃度計の概要と特長

1.1 測定原理

本装置は,差動トランス技術を応用して開発したものである。センサ部の構成を図1に示す。

測定回路構成
図1 測定回路構成

本装置における測定の仕組みを図1を用いて説明する。図1のコイルA,Cはそれぞれ励磁コイルであり,あらかじめ両者の励磁力が同じとなるよう調整しておく。コイルB,Dは検出コイルであり,両者の起電力が同じになるように調整し,かつ接続は逆向きとしておく。このような構成でコイルC,Dは空芯コイルとしてコイル内には何も通さない。

一方,コイルA,Bには鉄粉などの金属体を含有するグリース配管を通す。するとコイルBは鉄粉などの影響により透磁率が変化し,コイルBとコイルDの起電力に差が生じる。本装置はこの原理を用いて両者の起電力差を計測することにより,鉄粉の量を求めるものである。

1.2 製品の特長

本装置はポータブル鉄粉濃度計と同等の計測精度をオンライン装置で実現しつつ,以下
のような特長を有している。

(1)グリース配管を本体に通すだけで測定可能
 配管の着脱を容易に行える構造を採用しており,配管を入れ替えて測定個所を変更したり,バッチ的な測定や装置調整も簡単にできる。

(2)1ユニットで最大5点の測定が可能
 1台の装置で最大5点まで計測可能であるが,各chごとに計測する,しないを選択することもできる。また測定結果は本体の液晶パネルに表示されるとともにDC4-20mAのアナログ信号として外部出力できる。

(3)容易な操作
 本装置は基本的には電源を投入すれば即座に計測状態となり,装置起動,停止にかかわる操作は特にない。また必要に応じて各種の設定変更も可能であり,例えば使用chの選択,測定周期,入力一次遅れフィルタ時定数,入出力のゼロスパン値などの変更が可能である。

変更は本体付属の操作キーにより行うが,誤って設定値などを変更してしまわないよう誤操作防止を考慮したものとなっている。

(4)容易な調整
 ユーザーにて従来から他の鉄粉濃度計にて鉄粉濃度を計測して管理を行っている場合,管理値を統一するため従来の計測器とのレベル合わせが必要となる場合がある。このような場合,既知の鉄粉濃度のグリースを本装置にセットし,その鉄粉濃度値をパネルから設定するだけで簡単にレベル調整が可能である。

本装置の概略仕様を表1に,本装置の概観を写真1に示す。写真1において,透明なチューブはグリース配管であり,チューブが通っている装置上部のケースが検出部である。また,装置右側には表示パネル,操作キー,信号出力端子が配置されている。

表1 装置仕様
Detected particlesFerrous wear debris
Measurement Range(mass%)0.000 to 2.000
Accuracy(%)±1 F.S.
Number of measurement point1 to 5
Measurement interval5seconds/point
Analog OutputDC4-20mA
Power Supply100 to 220 V AC
Ambient Temperature0 to 50℃
External Dimensions(mm)312W×250H×102D 
MK-90外観
写真1 MK-90外観

1.3 測定装置構成例

本装置を用いた測定システムの一例を図2に示す。図2に示すように,本装置を利用するためには対象設備にグリースが自動給脂され,排脂が配管を通して排出されている必要がある。なお,排脂配管はMK-90近傍においては樹脂管である必要がある。

計測システム例
図2 計測システム例

本装置を活用する場合においては,鉄粉濃度を監視し,設備異常の恐れがある場合に警報を出力するようなシステムを別途構築する必要がある。

JFEアドバンテック(株)では,このようなニーズに応えるため,専用の簡易監視システムを準備している。これは計測値の入力,しきい値判定,データ保存,トレンド表示といった機能をパッケージしたものである。また,設備の振動診断や,温度など各種アナログデータも含め,ライン全体の設備診断が可能なシステムも準備している。このようなシステムを構築することでよりきめ細やかな設備監視,診断も可能となる。このシステムについては2項にて改めて紹介する。

1.4 実設備での測定例

MK-90を用いて超低速回転設備軸受グリース中の鉄粉濃度値をオンラインで計測した例を図3に示す。図3において横軸は経過時間,縦軸は鉄粉濃度を示しているが,いずれも相対値で表記しているので注意が必要である。

実設備での測定結果例
図3 実設備での測定結果例

この例でわかるように,本装置の計測値(実線)は従来の手分析定値(△)とよく一致しているだけでなく,鉄粉濃度の急変を的確に捉えることができている。なお,図3で鉄粉濃度が上昇した後,急激に低下しているのは鉄粉濃度が上昇したため軸受設備のメンテナンスを行ったためである。

2. オンライン設備診断システム「Super CMS-10000」

2.1 システムの概要

次に,グリース鉄粉濃度に加え振動診断など種々の設備監視,診断を行ううえで最適なシステムであるオンライン設備診断システム「Super CMS-10000」について,その概要を紹介する(図4)。

「Super CMS-10000」システム構成
図4 「Super CMS-10000」システム構成

本システムは,回転機械設備の振動診断を基本機能としたシステムではあるが,それに加え各種アナログデータなどを自動的に収集するロギング機能,収集されたデータを用いて設備状態の変化や異常有無を自動判定する状態監視機能,異常判定時にデータの解析を行い異常原因を自動で診断する精密診断機能を有する。

2.2 ロギング機能

本システムでは,振動や各種アナログデータのリアルタイム収集を行い,そのデータを数ヵ月間記憶することが可能である(図5)。重要設備を対象に運転中の挙動を逐次把握し突発故障の未然防止を行うことは元より,万が一突発故障を発生させてしまった場合においても,過去に遡りリアルタイムデータを確認することにより,発生原因の究明を迅速にかつ確実に実施することができる。

振動リアルタイムデータ表示例
図5 振動リアルタイムデータ表示例

2.3 状態監視機能

短期的あるいは長期的な時間単位での測定値の上昇変化を自動判定する傾向判定,同一グループ機器同士間で計測値が突出して高いポイントの自動判定を行う相互比較判定など高度な異常判定ロジックの導入によって,警報レベルに未到達ではあるが上昇傾向にあるような異常初期状態をより早期にかつ確実に検出することが可能である。

2.4 精密診断機能

最高51200ラインの高いFFT(Fast Fourier transform)解析能力を用いた減速機のサイドバンド解析,あるいは複数測定ポイントの振動位相特性解析など必要十分な振動解析性能の実現と,異常検出時に自動で精密診断までを行う自動診断機能を有している。

高性能な解析装置に匹敵するこれらの機能を,ネットワークに接続されたパソコン端末上から自由に実行できるオンライン解析機能を有しており(図6),異常発生時には,より効率的かつ確実に即時診断を行うことが可能である。

オンライン解析機能
図6 オンライン解析機能

おわりに

オンライングリース鉄粉濃度計MK-90を用いてグリース中の鉄粉濃度を連続的かつ全量計測することにより,軸受などの異常摩耗,損傷を早期に検知することが可能となり,以下のような効果が期待できる。

(1)設備トラブル防止
 異常状態早期検知により重大トラブルの発生を防止できる。また全量計測であることから,突発的な大きな摩耗粉の発生も的確に捉えることが可能である。これにより,従来の間欠的な計測では不可能であった,きめ細やかな設備管理が可能となる。

さらにオンライン設備診断システムを組み合わせることにより,超低速回転設備から高速回転設備まで,より高度の設備診断が可能となる。

(2)省力化,安全化
 従来,潤滑剤の分析を人手で行っていた場合は,自動測定により潤滑剤分析などの人手作業が不要となる。さらに機械設備近傍など悪環境下での潤滑剤採取,分析作業を中止できることから作業の安全性向上を図ることができる。


○旭化成エンジニアリング
http://www.asahikasei-eng.com


○インテクノス・ジャパン
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○三洋貿易
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○JFEアドバンテック
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○JFEプラントエンジ
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○日鉄ケミカル&マテリアル
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○テクノサポート
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