潤滑油系統にオイルクーラーが使われております。大切なものだと思いますが,メンテナンス方法が分からず放置してあります。どのように管理したらよいか教えてください。
解説します。
潤滑油は計画された粘度により,その力を発揮します。しかし,潤滑油の粘度は温度により敏感に変化します。
さらに油膜厚さも温度により変化するという計算例が日本プラントメンテナンス協会の研究報告書「メンテナンス技術者のための潤滑技術」にあります。(図1) したがって,潤滑油の温度管理は大切です。
図1 某製紙会社の設備における潤滑油温度と油膜厚さの関係(計算事例) |
一般に潤滑油は摩擦面で潤滑の仕事をすると温度が上昇します。この温度上昇をオイルクーラーによって一定の温度に下げて,再び摩擦面に供給するわけです。この重要な働きを頭においてメンテナンスを実施してください。クーラーには図2にあるように,潤滑油側の温度計,冷却水側の温度計,圧力計など計器類がついておりますので,これを見て管理するのが一番です。簡単には冷却水のパイプを触ってみることです。
図2 オイルクーラー取り付け図 |
クーラーは冷却水の入り側,出側の温度差が大切で,この温度差がなくなってしまうとクーラーの働きをしていないことになります。この場合冷却水の圧力計は正常値を示すことがありますので,勘違いしないで下さい。点検バルブを開いて冷却水が流れていないことを確認し,ただちに,冷却水のつまりを清掃してください。
冷却水は何らかの形で水処理されておりますので,温度が上昇するとその温度に対して析出してくる物質を含有しております。したがって,必ず冷却水パイプの熱交換部分は内壁に析出物がへばりつきます。
これが冷却能力を低下させることになります。さらに冷却水の入り側,出側の温度差の経時的変化を調査して,冷却能力の変化を確認してください。もしあまりにも早く能力が落ちる場合は,冷却水を検討してください。最悪の場合はクーラー設備を交換することになります。
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